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【三階層八区画】藺牟田池ダンジョン その七

来月のストックが無事にできたので29日12時(正午)に投稿いたします。

【三階層八区画】藺牟田池ダンジョン その七


 十五階層のボス部屋にたどり着いた城一たちはその重い扉を開き奥へと歩を進めそこで待ち構えていたのは…六つ首があるムカデ。ユニークボス『ヒドラセンチピード』


「ほう、やはり運がいいと言うべきなのか?」

「ケケケ、まさか本当に出るとはねぇ。これはフェアだなぁ」

「アハハハハ、ヤバイのがきたね」

「皆様冷静ですね」


 その姿をみた全員は冷静に見つめ武器を構える。


「では、光太郎さんお願いしますね」

「ケケケ、俺だよりは何とも《アンフェア》だねぇ」

「申し訳ありません。では《アテンション》」


 ヒドラセンチピードの注目は光太郎に集中しその首全てがむくと口から緑色の霧を噴き出した。


「ゲゲゲ、こいつはやべぇ<プロテクト>」


 <プロテクト>は状態異常を起こす攻撃から身を守る魔法であり色合いからも危険と判断し即座に防御魔法を使う光太郎。意外というか実は防御系の魔法を中心にそろえているのは光太郎なのである。


「【スラッシュカード】」


 充希がカードを投げ突き刺さるがヒドラセンチピードの血に触れたカードが溶けさらに傷もみるみる再生していく。


「なるほどな。見た目だけでなく伝説のヒドラと同じようなに再生し毒の血をもつムカデか……」


 城一は思案する。


「【ヒートアクセル】」


 光太郎が斧に炎を纏わせ斬りつけるもその傷も再生されていく。


「くそっ、炎で焼けば再生しねぇと思ったんだが。やっぱ頭を潰すかあぁん?」

「手持ちのカードが少なくなってきたよ。城一くんどうする?」


 攻撃は確かに通じるが、再生してしまい攻略の糸口は二人にはわからないでいた。


「安心しろ既に我が策を思いついている」

「さすがです城一…さん」


 気配を完全に消していた岬も姿を現す。


「で、どうするんだよ?」

「少数での大軍との戦い方は知っているか?」

「あん? 頭潰せばいいんじゃねぇのか?」

「確かに有効だがそれは中規模で練度の低い軍隊の場合だ。こいつは高い練度と統率の取れた軍隊ととらえて戦うのが的確だろう」


 確かに、ある程度の規模の場合でなら相手のリーダー格を倒せば有利になることは否定できない。だが、大軍の場合は指揮系統の破壊は難しい。ヒドラセンチピードは近代の軍隊に指揮系統に近いネットワークの構築をしているといってもいいだろう。


「ならどうするんだよ!」

「削るのよ。じっくりとな。そもそも頭を潰せばなどというのは、戦後処理を考えない阿呆の策。上がいなくなったら戦後交渉もできんのに…まぁ相手が交渉不可能な獣の軍勢程度なら有効とは思うがな。故に我は、提唱するのは削る。末端は替えがきくなど阿呆の考え、末端こそが重要そこを少しずつ削る。下を少しずつ削っていく組織潰しを考えるのなら、我は頭を潰さず下から削り潰す」


 つまるところは、消耗戦。相手を近代軍隊ととらえた城一は、近代戦術の消耗ドクトリンで対応する策にでた。


 その策の為に城一たちは、削りに出た。攻撃速度をあげて再生を早める。時折、光太郎の大技を放ちながら充希が遊撃し、その陰からさらに岬が追い撃つ。


 この策が成り立つのは《ドミニオン》があればこそである。領域の支配とはすなわち情報も支配すること。すなわちヒドラセンチピードの情報も手に入れることができる。《ドミニオン》の力の本質は把握・掌握・創造・管理・統率にある。支配者としての力こそが真骨頂なのである。このスキルに対抗できるのは《アンチェイン》と《ネガティブ》が()()()での対抗できる存在である。


 そして、《アンチェイン》このスキルも、まだまだ深淵には、届いていない。法則の書き換えも重力操作も確かに凄い。だが、それですら本質ではない。と、充希は感じている。このスキルはもっと何かあるそう思えて仕方がない。


 そしてでたらめな力のあり方は恐ろしい使い方もできる。今も回復力の暴走をさせている。どんなものでも限界はある。それは生物が生きるという生存本能のために存在するリミッターだ。それを今は、解き放ち過剰に回復させる再生能力となっている。1の傷を治すのに10の力を使えば9のロスが生まれる。非常にシンプルな消耗戦。その要となるのは間違いなく《アンチェイン》のスキルだろう。


 ヒドラセンチピードは、戸惑いを隠せない。自分の中にある何かが戦い方を教えてくれる。教えてくれるが、こんな戦い方をする相手は、今までいなかった。と何かは戸惑う。死につながる毒をまき散らす魔物に長期戦を挑むなどありえない。再生力を高めるなどという発想をなぜするのか理解できない。何かは戸惑う。戸惑いは、焦りにかわる。有利に戦っているはずなのに、謎の焦燥感。本能が危険の信号を発する。だが、その危険の正体を理解できない。理解できないままその時を迎えた。


 パキーンと枯れ枝が折れるような音共に、ヒドラセンチピードの体に亀裂が入り始める。過剰再生と破壊の繰り返しによる消耗はついに限界点を超えた。


「虫型の魔物は痛覚を持たないそうだが…やはり、貴様も痛みを感じなかったのだろう。当然だ急速な再生をするのだから、痛みは感じるという機能も必要あるまい。だが、だからこその貴様の敗北だ。無尽蔵に再生などは不可能だ。どんな生物でも…そう例えダンジョンの魔物ですら一般的な生物の知識は当てはまる。どんなにでたらめに見えても必ず生物的な特徴などが存在する。まぁ一部モンスターには例外はあるが…貴様は当てはまらなかったようだな」


 城一は一呼吸を置き構える。


「強敵たる貴様を敬意を表して我の全力の技を送ろう【百剣】」


 城一の周りにその名の通り100本の剣が舞い踊りその一つ一つが臣下の如く整然と並ぶ。


「今はこの数が我の限界…だがしかと受け取るがいい【百剣葬送】」


 百の刃に切り刻まれながらも、ヒドラセンチピードは暴れようとするがその肉体はどんどんと白くなり亀裂が走り零れ落ちていく。


「この技でも止めに至らないとは…」


 思わず感嘆の声が漏れてしまう。


「ケケケ、なら俺が決めてやるよ【ヒートアクセル】」


 光太郎が斧を担ぎ構える。


「城一が切札見せたのなら俺が見せねぇのは《アンフェア》だからな…いくぜムカデ! 【ライジング・サンシャイン】」


 斧から迸る熱量が解き放たれ、ヒドラセンチピードの全身を駆け昇り、完全に焼き尽くしヒドラセンチピードの死骸は崩れ落ちるのであった。

今月は何とか目標達成できました。読んでいただきありがとうございました。


励みになりますので感想・ご意見と評価もお願いいたします。

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