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【三階層四区画】藺牟田池ダンジョン その三

今月は毎週日・水曜日の12時(正午)に投稿をいたします。

【三階層四区画】藺牟田池ダンジョン その三


「ということです。あっ、錬治さんカツサンドの追加をお願いします。マスタードは少々多いことを希望します」

「判った」


 佐江が語り終えたのは、三個目のカツサンドを平らげた後であった。


「どうかされましたか、ぼたんさん?」

「いや、佐江ちゃんて細いのに凄く食べるよね…美穂ちゃんもだけど」


 ちらりと横目で、大量の食事を頬張る美穂を見つめる。ちなみに食事をとってはいるが、美穂は幼さと色気がまじりあった妙な艶やかさがにじみ出ていた。


「ところで崇高君は、なんでダウンしたの?」

「《ライブラ》の長時間使用が原因です。かなりの情報量が入るので負荷が大きかったみたい」

「一芽ちゃんがなんか小動物みたいになってるのは…」

「乙女の秘密です…その…いろいろと、マズイことになってしまっているので…さすがに、替えの下着は用意してませんでしたし…美穂さんは食欲が勝っている状態ですけど…」

「二人ともナイスバディーだもんね…うん。それで源治君は?」

「最後の大技のブレストキャノンを接射したので、胸骨にヒビが入ってますし、全員戦闘能力が半減しています。私はまだ余力がありますが戦闘向けではありませんから」

「嘘つきだね。佐江ちゃん」

「否定はしませんよ。ぼたんさん」

 

 微笑ましい二人の会話が終わるころ第二班の面々もなんとか動けるレベルまで回復し引き返すことにするのだった。


「大丈夫すかね?」

「佐江ちゃんがいれば大丈夫でしょ」

「だろうな。なにが戦闘向きじゃないだ…」

「えっ、そうなの錬治君にぼたんさん?」

「うん、佐江ちゃんはね。本当に強いんだよ。美千代ちゃん」

「へー知らなかった」


 そんな会話をしながら引き返した二班を見送り三班は奥へと歩を進めるのであった。

 

 六階層から、は非常に厄介なモンスターとして「徹甲蟲」という、モンスターが登場する。このモンスターはスズメ程度の大きさの青い色をしたカブトムシといった風体なのだが、高速で飛翔し対象に突撃するだけモンスターではあるのだが、その突進の威力は甲冑すらも貫いてしまう危険極まりない。その飛来する徹甲蟲を錬治は、こともなげに切り払っいながら突き進んでいる。


「錬治君て本当にでたらめだね」


 美千代の言葉に全員がうなずいてしまう。

 なにせ徹甲蟲の速度は時速300㎞で飛翔してくるのである。それを的確に羽を狙って切り落としている錬治を『でたらめ』という表現では収まらないレベルではある。


 だが…


「あっ、そこに『フラワーマンティス』が擬態しているすよ」


 高い擬態能力をもつフラワーマンティスをあっさりと看破する次郎。


「この薬草はレアですね」


 判り辛い場所にある薬草を目ざとく見つける美千代。


「あっ、そこ落とし穴があるから気をつけて」


 なにげなく罠を見つける調


「ふんふふふんふんふん」


 鼻歌交じりに正確な地図を描いていくぼたん。


 全員が全員異常性を発揮しながらピクニック感覚で六階層を走破していく錬治達第三班であった。



 一方そのころ引き返した第二班は転送部屋を利用して一階層へと帰還したのだが…


「おいおい、特化クラスの面々がそうそうにズタボロとか笑えるな」


 運悪く、一般クラスのチームに絡まれ、ニヤニヤと嫌な笑みで見下されていた。


「はぁ…面倒ですね…みなさんはお疲れですし」


 無視して通り過ぎようとすると


「おい、待てよ!」


 肩を掴み引き留めようとする。


「邪魔しないいただけますか?」

「はっん、こんなところでボロボロになっている連中が、なに粋がってんだよ! それともなにかオレをどうにかできるってのか? 俺のレベルは18はあるんだよ!」

「はぁ…面倒ですね。弱い犬程よく吠えるといいますか…自分が上だと勘違いしているかたは、非常に滑稽ではありますが関わると煩わしいですね」


 佐江は能面のように無表情な顔になる。正直、二班の面々もこんな佐江をみるのは初めてであった。


「てめぇ、女だからって容赦してもらえるとか思ってんじゃねぇぞ!」

「あなた如きのレベルくらいし、か誇れるものがない。低俗な方には、興味はありませんの。わかりますか? わたくし、路傍の石ころに興味はもてませんの」

「このクソ女が!」


 佐江の言葉に逆上して思わず殴りかかるが…


「【フェイト(因果)セレクション(選択)】」


 佐江が誰にも聞こえない小さな声で囁いた。次の瞬間、男はダンジョンの天井を見ていた。誰も何が起きたのか理解できない。


「不快にされたのは否定いたしませんが、それに対しては申し訳ありません。それと人を見下して身を乗り出していますとやがては落ちるだけですよ」


 倒れた男を起こして呆然とする男たちに目をくれることもなく、佐江たちは出口へと向かった。


(あの程度のやからに使うアーツでありませんでしたね。バリアブルビルバグでも、使ってもよかったのですがこれは私の切札。みなさんはこれからもっと過酷な戦いになるのですから…私が積極的に参戦しては皆さんの成長を否定してしまいます)


 佐江は内心そう思いながら歩を進めた。


 スキル《ネガティブ》の深奥…アーツ【フェイトセレクション】は因果律への干渉。すなわち運命の書き換えであり、否定である。距離を否定し立ち位置を否定し力を否定し時間を否定し結果のみを選択するでたらめなアーツ。理不尽の極み。


 彼女の本来の姿はまだ知られていない。

次回投稿は2月12日 水曜日・正午になります


ネガティブ…強すぎねぇ?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 存在を否定したら即死させられるってこと?チートとかいうレベル超えてね?間違いなく世界最強だろ。
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