【三階層三区画】藺牟田池ダンジョン その二
今月は毎週日・水曜日の12時(正午)に投稿をいたします。
【三階層三区画】藺牟田池ダンジョン その二
藺牟田池ダンジョン五階層を突破した。錬治達第三班は疲弊した第二班に遭遇した。
「なにがあったの佐江ちゃん!?」
ぼたんは慌てて全員の介抱をしている佐江に声をかけた。
「まぁ、ぼたんさんにみなさん。お早いおつきで…」
いつも優雅な佐江ですら少し着崩れ髪も乱れている。
「いやいや、どうしたんすか? アイアンビルバグにここまでやられるなんて」
「ぼたん、次郎とりあえず休憩にしよう。ついでに話を聞いてくれ」
「わかった。話は私が聞くから次郎君と調君は介抱の手伝いを美千代ちゃんと錬治君とで軽食とかの準備をおねがい」
とりあえずほだんは班長としての指示をだして佐江と対面に座り話を聞くことにした。
「なにがあったの?」
「ユニークボスです」
その言葉だけでぼたんは事態がどれだけ大きかったのか把握した。
ユニークボス。この存在こそがダンジョン攻略を困難にしている要因の一つである。
出会う確率は非常に極希ながらその能力は通常の階層ボスと大きく一線をかく。その理由はまずボスのレベルがパーティーの平均レベルよりも5近く高くさらにユニークボス特有のスキルをもっていることや通常スキルのレベルも高くなっている。力押しでは決して倒せない難敵である。
「では、なにがあったのかを詳しく話しましょう」
新田達第二班が入った時、待ち構えていたのは本来は赤いはずのアイアンビルバグが紫色であった。
「【ステータススキャン】…全員気をつけろ…こいつはアイアンビルバグじゃない。こいつはユニークボス『バリアブルビルバグ』だ」
ユニークスキル《ライブラ》はありとあらゆるモノを計れる。初見だろうとなんであろうと相手の強さを計れるというだけでもアドバンテージを取ることが可能なのである。
「理解した。《カスタマイズ》【シールドナックル】」
忠告は聞きつつも上位種にあたるユニークボスであっても基本的な弱点までは変化しないと判断した源治は転がりだすまにと巨大な盾がついた小手を装着すると全力で殴りつけたが
ガイーン
そんな音共に中空で硬いものがぶつかる音が響く。
「そいつの体表から30cmのところに障壁をはっている! 物理・魔法関係なく防ぐ強固な鎧を身に纏っているとおもってくれ!」
「対処はないん? 崇高っち?」
「攻撃を当て続ければ維持できなくなる。その証拠に今の攻撃でMPが僅かに減少している」
「なら、まかせて《ビースト》【ゴリラアーム】」
前衛に一芽も加わり攻撃を当ててバリアを削る。しかし、それだけでは強固すぎる膜が邪魔をする。
「崇高さん、美穂さん。私が全力で解除を試みます。その時に攻撃をお願いいたします」
「判った」
「了解…」
「行きます…《ネガティブ》わたしはあなたの防壁を否定する…」
スキル《ネガティブ》その効果は事象の否定。端的に言えばスキル・魔法の無効化。代償としてMPを大量に消費する必要があるが…だが、代償を支払へば効果を消失させることも可能である。
「【ウィークポイント・ショット】」
「【束縛セシ血鎖】」
崇高の矢は僅かに薄い場所に刺さり、美穂の作り出した赤黒い鎖はバリアブルビルバグを雁字搦めに縛り付けた。
「拘束可能な時間は15秒だ! しかし、飛び道具はあまり効果がないようだな」
「それは否定できませんね。私も近接戦闘などはあまり得手ではありません。あの防御を否定するとかなりの代償がいりますし…」
「全員聞いてくれ。ユニークボス相手に余力を残せるとは思えない。ここは全力で打破をして引き返すしかない」
新田崇高が班長へと選ばれた理由は冷静な判断力。現状を計りにかけてもっとも適切な策を打ち出せるからこその抜擢である。
「とっておきで行く…【血気集鎧】」
美穂の体に血が集約してその姿は大鎌をもった戦乙女といった風体であった。
「いくヨ! 【断罪ノ大鎌】」
普通の大鎌は本来はその印象とは裏腹に武器としては使いづらい武器ではある。だが、美穂の大鎌は細やかな刃が高速で表面を移動している。つまり、削りつぶす武器なのである。そして障壁の再生があるとはいえバリアブルビルバグにとっては天敵にも近い武器。
「オラオラ、覚悟を決めな! 削りツブス」
大鎌の猛攻をうけて上手く転がれず動きをバリアブルビルバグが止めている間に一芽も覚悟をきめ最大の大技を繰り出す。
「もう…ちょっと限界かも…」
ハイスピードの連続攻撃は美穂の体力を消耗していき動きを止められていられなくなる。
「はぁ、美穂っちがそれやったんなら…私もやるきゃないでしょ【ヘッドバッファロー】【ゴリラアーム】【レッグエレファント】融合【キメラスタイル:重神剛鬼】」
三種以上の動物の力を同時使用することにより解放されるキメラスタイルは異質の能力を発揮するアーツである。
「時間かけらないんだよねぇ…【重鬼】」
動きが鈍くなった美穂を押しつぶそうとするバリアブルビルバグを受け止める。
「うぅぅ、乙女としてはこれなんかダメージが…」
「……そのまま抑えていてくれ…」
バリアブルビルバグと一芽の間に源治は滑り込むとしゃがみ同じように抑える。
「バリアは30cmほど離れた位置だったな…なら、この距離からなら防げまい《カスタマイズ》【ブレスト・キャノン】」
胸部に現れた砲身を接触するギリギリの位置で固定すると砲身から純粋なエネルギーが放出されバリアブルビルバグを吹き飛ばす。
「バリアが消えた! 今だ一撃必中【ペネトレイトアロー】」
「これが…最後の一撃…【血殺ノ月】」
「これで決まって【重振碎】」
崇高の矢がバリアブルビルバグの体表を貫き、美穂の作り出した巨大な赤い三日月が押しつぶし、一芽の放った重力の衝撃波がバリアブルビルバグを粉砕し辛くも倒すことができたのであった。
次回投稿は2月9日日曜日(正午)になります。
バリアを張った敵に対してのゼロ距離射撃はやはり男のロマンだと思います。
一芽「…重神剛鬼てサ〇ーゾ」
作「リスペクトとオマージュです。あとイメージ的には某STGの星の熊な姉御のイメージをプラスしております」
一芽「重振碎て…まさか後々に激とか超とかつく?」
作「禁則事項です」
一芽「【キメラスタイル】のバリエーションてまさか…」
作「…禁則事項です」
一芽「爆死すればいいのに」
作「やめて、心が折れるから」
 




