【三階層二区画】藺牟田池ダンジョン その一
今月は毎週日・水曜日の12時(正午)に投稿をいたします。
【三階層二区画】藺牟田池ダンジョン その一
ダンジョンへの遠足といっても日帰りではなく泊りがけで行われるレクレーションだ。昔は行楽の面が強かったが、現代日本ではダンジョンへと関わらない一般的な生活は不可能に近い。なので、こういった行事は長くとり将来へと繋げるように学校行事として年3回執り行われている。
さてと場所は探検者センターの会議室にて最終確認が行われていた。
「とりあえず、入場は10分毎に入場となる。一般クラスの連中はお前たちが入場してから30分してから入場となっているから鉢合わせ事はないだろ」
ダンジョンはあまり大人数で入ると遭遇するモンスターの数や強さが比例して多くなったり強くなる傾向がありダンジョンに潜る際はまとめて入らずに別れて入るのが普通である。
「あとは緊急の時と定時の掲示板書き込みは忘れないようにな」
ダンジョン運営神議会に攻略問い合わせはできないが探検者カードを利用した通信は可能というのは攻略の助けと探検者の生存率向上に大きく影響している。
ミーティング終えて装備を整えた一団は、黒の色合いが多いために悪の軍団のようであった。
「では、まずは我らがいくとしよう」
城一たちが降り立った先は大森林が広がっていた。
「ほう、これは征服しがいがある場所ではないかあぁん」
「こいつは何とも不利だねぇ。足場も悪いし…不意打ちとか本当にケケケ、楽しみだ」
城一たちはとりあえず五階層を目指すことにしていた。道中にでてくるのは大きなトンボにゲンゴロウ、芋虫に毛虫に蛙とたいして確かにやっかいではあるが二級ダンジョンとはいえ低階層前半のモンスターでは相手にもならない。3時間程度で5階層のボスへとたどり着いた。
「このボスの扉前にくると僕もワクワクしてしまうね」
「そうですね。ここのボスはアイアンピルバグです。城一さまどうされますか?」
「ふっ、英雄たるもの堂々と入場すべきであろう」
「ならあけるぞ」
光太郎が扉を開けるとそこには巨大なダンゴムシが確かに待ち構えており光太郎を確認すると丸まり転がりながら突進をしてきた。
「ケケケケ、よっしゃこいやー」
質量差という圧倒的な不利な状況…だが、《アンフェア》藤堂光太郎においては望むところ
「【フルスイング】だ! おりゃぁぁぁぁあああ」
光太郎は力任せに斧でダンゴムシを高く打ち上げるとまるまった姿を維持できずに腹を上にして浮かび上がりいつの間にか空中には既に充希が待ち換えていた。
「いくよ。【スラッシュカード】」
充希から放たれたトランプがダンゴムシの足を切り落としながら体に食い込む。
「いったよ」
「ふむ、【ペネトレイトピラー】」
城一の作り出した『塔』がダンゴムシの背中を貫通しまさに昆虫採集の虫のようにピンで固定されもはやモガクこともできずに巨大なダンゴムシはあっさりと倒された。時間にしてほんの数分で城一たちは五階層を突破したのだった…
城一たちから遅れること一時間程して錬治たちの第三班が到達した。
「時間的には悪くはないと思うけど…」
「そうっスね。まぁ本番はこれからッスから」
「じゃぁ準備するけど今回はパワータイプの仮面でいいんだよな?」
「はい、アイアンビルバクは硬い外骨格に覆われていますから打撃などが有効です」
「なら【鉄鬼】の面か…よかったアレはまだ大人しくてすむ」
調の仮面は【ナイトバロン】【スカル】【フェイスレス】【鉄鬼】【フォックス】の五種類が使用できる。基本的にすべての仮面は身体能力をあげる効果と特殊能力をもっており【ナイトバロン】が影を武器変換する能力といった具合に状況に応じた戦闘スタイルを選択できるのが強みである。ただ、仮面の特性に合わせて人格が引っ張られるのか普段とは異なる性格になるのが玉に瑕である。
アイアンビルバクというモンスターはシンプルな強さというか質量と外骨格の硬さを武器にした転がるながらの突進しか芸はない。だが、この単純さ故に技術主体の探検者とは相性が最悪なモンスターともいえる。そういう点でも錬治たち全員がイレギュラーといえる。多彩な引出しもさることながら純粋な身体能力も軒並み高いのである。ユニークスキルをなしにしても今の段階でも日本国内のトップ探検者クラウンや大手企業の探索者チームからもスカウトされるレベルである。
「任せて。【ボックス】」
が、転がりながらの突進というのは美千代の【ボックス】とは相性がいい。
そもそも六角美千代の箱は別に正立方体とは限らない。長方形でも構わないし大きさも2立法メートルを上限、下限は1立方センチメートルまで可能。数は現在は18個までが最大個数として出現させられるというもの…
「形成・ジャンプ台!」
勢いよく転がったボールが下に落ちていた石にあたって高く飛び跳ねるががごとくアイアンビルバグも飛び跳ねる。
「【双鉄棍】刻むぜビート!」
砂塵が舞うと黒い鬼の仮面を身に着けた調の手には二本の黒い短い棍が握られており跳ねたアイアンビルバグの高さまで跳躍すると
「【双棍波紋連撃】オラァッ!」
ただ転がり突進するアイアンビルバグでは空中でなにができるわけもなく乱打を浴びせられ続けやがてたまらずに球体を解除され柔らかい腹部があらわになれば…
「<ウォーロード>【瞬閃・一式】隼斗」
それを逃す錬治ではなく。足ごと一刀両断に切り裂き一撃のもとにアイアンビルバグを仕留めるのであった。
「やっぱりおかしいっスよね。うちらのメンバー」
「うん、レベル25前後の攻撃力はあるかな。わたしが取材してとりまとめてる人たちでも攻撃力Sなんて見たこと無かったし…というか錬治くんてトリプルSてスキルよりもステータスがチートだよね」
「そうっスね。けどうちのクラスほぼ全員がステータスにSが1つはあるてのは驚きっス」
「ほんとうだよ…Sがないからって岬ちゃんとかはおかしいステータスしてたけど…」
「さてと、美千代ちゃんおねがいできる」
「お任せ。ボス個体はうまうまなんだよね。【ストレージ】」
透明な箱がアイアンビルバグの死骸をつつみこむと圧縮してフッと消える。これは美千代だけのユニーク魔法《収納魔法》と【ボックス】の複合アーツである。
回収を終えて進むとそこには信じられない光景があった。
「えっ、みんな、どうしたんすか!?」
先頭を歩いていた次郎は驚愕した。そこにはボロボロになっていた二班のメンバーが座り込んでいたのだから…
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次回投稿は2月5日 12時(正午)に投稿をいたします
 




