【最終階層五区画】ラグナロク
ズタボロになった肉体を脱皮するかのように、再構築していくフィロン。
『いけませんね。それは愚策でございます』
『今度は何者だ!』
髭を貯え、扇をもった壮年の男性が姿を現す。
『性は諸葛、名は亮、字は孔明。天下泰平の為に推参いたしました』
「お力お借りします。では、瀬戸ぼたん。いかせてもらいます。名もなき万夫不当の英傑よ! 悪神を討つために集え! 急急如律令【招兵八陣】」
八卦陣が浮かび上がると、そこには時代も場所を超えた様々な兵士が現す。古代ローマの重装歩兵、ナポレオンの砲兵隊、アメリカの騎兵隊、スイチ傭兵団。古代中国の呂、孫、劉、曹の旗、日本の伊達、徳川、武田、上杉、織田、明智、豊臣、浅井、北条、毛利、今川、長曾我部、島津の旗印が掲げられている。
世界大連合軍。歴史に残った兵団、歴史に名は残らなかった英傑たちは、恐れることなくフィロンへと突撃をしていく。
『虫けらどもが!』
「そうはさせないよ」
払いのけようとする腕の前に調が立ちふさがり骨の仮面をかぶる。
「【ボーン・グレートウォール】」
骨の壁で動きを止めようとするが止めきれない。
「自分も手伝うっスよ。心友。【デッドコピー】」
骨の壁を次郎も作り出し威力をかなりそぎ、一瞬動きを止める。
「ケケケケ、虫けらをなめんなよ!」
『クックックッ、そうだそうだ。力を貸してやるからぶちかましな」
「あぁ、力を借りるぜ! 【須佐之男命】」
光太郎が振るった斧が右の24の腕を切り落とす。
『この程度!』
「既に積んでいるでありますよ。自分、新田崇高が裁くでありますよ【ユースティティア】」
そういい、崇高が矢を天へと放つと天秤が顕現し、両方にフィロンが乗っていた。
『なんだこれは!?』
天秤を持っているのは目隠しをした女神。そして片手にもった剣で片方のフィロンを切り払った。
『ガハッ……ち、力が抜ける』
「これで力は半減でありますよ」
体の大きさが半分になるフィロン。
「ハハハハ、みんなすごいな。それであなたがボクに力を貸してもらえるのかな」
『フフフ、そうだね。自由が身上の僕でも、流石にあれはやり過ぎたからね』
「じゃ、ボク、小鳥遊充希のお願いをよろしく【ヘルメス】」
『女の子の頼みは断れないな」
銀色の風が駆け抜けるとフィロンの目を次々に潰していく。
『がぁぁぁ、なぜだぁぁぁぁ、上位神がなぜ人に手にいいように使われる!?』
「それは否定します。シンプルにあなたのやり方が気に入らないから、使役を大義名分にしているだけですよ。自分の大切なものを傷つけられてムカつないなんてことあるはずがないですから」
『ニンゲン!!!』
「あなたの動きを封じされてもらいましょう【グレイプニル】」
佐江が一指し舞うと革紐が現れフィロンを拘束していく。
「世界を滅ぼす神喰らいの獣を封じる拘束具で拘束しましたよ。源治さんいけますよね?」
「……任せろ……【ドラガルド・カスタマイズ・ヘスティアバスターライフル】」
鋼鉄の巨人は竜の翼を羽ばたかせ上昇し女神が象られ巨砲をフィロンへと向け、絶える事のない炎が浴びせ続け、フィロンの肉体を焼き尽くし、全てを炭化させ、フィロンは崩れ落ち、零れ落ちた心臓が地面に落ち砕け散ると、そこには甲冑を纏った女が立っていた。
「はぁはぁ……こんな馬鹿なことが……馬鹿げている」
「バカなっていわれもぉなぁ」
そういってフィロンの目の前にたったのは錬治であった。
「貴様か! 貴様が吾の計画を狂わせた! 一体どんな力があれば古代神を!」
「知らねぇよ。ただ、なんとなくやったら出来ちまったんだからよ」
「ふ! ざ! け! る! な!」
フィロンは剣を抜き錬治に斬りかかる。
「オレの名は尾張錬治。推してまいる!」
文字通りの神速で繰り出されるフィロンの斬撃を錬治は見切り、躱す。それはあくまでも人間の技術。
「この! この! 死ぬ! 死ぬ! 死ぬ!」
技術もなにもない、ただただ肉体のポテンシャルだけで、繰り出されだけで神業となるフィロンの剣。
「いくぜ、神様【瞬閃・一式】隼斗!」
錬治が繰り出したのは、今まで身に着けたものの集大成が詰まった最初の自分の剣。正々堂々、正面から相手を斬る。最速最強の抜刀。その一撃は神をも超え。フィロンの首が宙に舞うという結果だけが刻まれ。
「覚えてろ人間! いや、尾張錬治! 次は必ず!」
「あっ、すまんが次はあらへんよ。ウチが、そんなこと、させへんからな」
宙を舞いながらフィロンは声のした方向に視線を向ける。
「【バンドラ・ボックス】」
小箱が出現するとフィロンの首を吸い込み、蓋が閉じると、布で包まれ、鎖で幾重にも縛られる。
こうして邪神フィロンとの戦いは終結を迎えるのであった。
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