【最終階層四区画】神の軍勢
『何の真似だ』
フィロンは錬治の奇行ともいえる動きに、苛立ちを覚えながらも、肉体はその間も膨張し、今はフィーセロト城を呑み込むほどまでに、全容は巨大化していた。
「《アテンション》プリーズ」
よく通るその声に導かれてフィロンは上を見ると、そこには踊り子の姿をした天女がいた。
『フフフフ、まさかこういう展開になるとはおもってなかったわね』
そして、その奥には神々しいまでの女神・天照大神が鏡を構えていた。
『ま、まさか、そんなバカな! ここは吾の神域ぞ! なのになぜ他の神が!』
『だって、祈りが届いたんですもの、貴方を倒してほしいという思いが……それに顕現しているのはわたしだけじゃないわよ?」
その言葉でフィロンは自分の神域を侵す存在に気が付く。
『貴様か! 貴様がやったのか!』
再び錬治に視線だけを向ける。
『そうね。彼がやってくれたの。ユニークスキルを理解したことで、たどり着いた極致。彼の得たスキル《チェンジリング》は取り換えっ子。それを発展、到達したのが【神成】。めちゃくちゃやってくれるわよね。人の信仰と真理の断片を対価に神を降臨させるなんて、さぁ、神罰のお時間よ。やるわよ城一くん』
傍らに立っていた城一に声をかけると城一は十柄の剣を構える。
「我は、新藤城一が、天照大神と併せて放つは、断罪の刃、【八百万】」
剣を振るうと光の刃が肥大化したフィロンの体を斬り刻む。
『ぐぁぁ、だが、我が血肉からは眷属が生まれるぞ!』
その血を飲み干さんと蝙蝠の群れがあらわ纏わりつき、やがて男と女の姿へと変わる。
『拙い血ね』
『まったくだ』
「力……借りる……」
その二人の間に美穂が立つ。
『えぇ、いいわ。わたくし「カーミラ」と』
『われ「ドラキュラ」が力を貸そう』
「わたしは秋葉美穂。カーミラとドラキュラが力を併せていくぜぇぇぇ【ブラッドストーカー】」
血から生まれた軍勢と血から生まれた眷属が互いを呑み込むように争いを始める。
『おい、お前、如意棒をかしやがれぇ』
そんな美穂に声をかけたのは、雲にのった猿。
「美穂ッチ、この、お猿さんに貸してあげて」
「大切に使えよ。サル」
そういって神珍棍を投げて渡す。
『バカ野郎! 俺は「斉天大聖・孫悟空」様だ!』
「お猿さん。あいつらーぶとっぱすの手伝ってほしーし」
『あぁ、もう、最近のガキは……だが、俺様のかっこいいところをみせてやるぜ!』
「じゃーいくよー。諏訪一芽と斉天大聖・孫悟空が力を併せて放つ【五行山・八卦炉】」
大山が降ってくるとフィロンの眷属を押しつぶし、さらに、火の雨が焼き尽くしていく。
『まだだ! 我には多くの恐れが集まっているのだ!』
荒れ狂うフィロンは49の腕と、36の翼、64の瞳をもつ巨大な化け物へとなっていた。
「こっちにもいるンゴ」
「わたくしも」
「そうですわね」
ヴァルキリーガーデンの玄間真白、大塚輝美、二階堂鈴蘭が金色の王氏に跨り姿をあらわす。
『狩猟と淑女の女神・アルテミスがあなたに力を貸しましょう真白』
「ンゴ! 玄間真白とアルテミスが力を併せて放つは【プレアデス・シュート】」
光の矢が放ち、腕を打ち抜いていく。
『これでもくらえ!』
火球を放ち焼き払おうとする。
『そうはさせませんよ【火鼠の衣】』
優雅な所作で衣で全員を守る。
『吾はなよ竹のかぐや姫、さぁいきましょうか? 輝美』
「畏まりました。【竹林創造】」
竹林がフィロンの動きを阻害していく。
『さてと、我らも征こうぞ』
「はい、フレイヤ様。【ワルキューレの騎行】」
戦乙女の軍勢が召喚され突撃を開始する。
『鬱陶しい、鬱陶しい』
『こちらにもおりますよ』
狩衣姿の男が札を投げる。
『小っちゃき存在ですね。では羽柴真誠いけますね』
「はい、安倍晴明さま、【五行相克陰陽天神】」
霊札がばら撒かれ触れた部分が爆発を起こす。
「突貫です」
『ワハハハハ、いいぞ。このタヂカラオも力を貸そう』
「では、三河聖、いっきます。【剛腕星砕】」
力任せに打ち付けながら、フィロンを追い詰めていく、そして神々の軍団は次々に降臨してくるのであった。
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