【最終階層二区画】理不尽を打ち砕くモノ
時は少し戻り、結果から言えば、全員がそれぞれに邪神を倒すのに、かかった時間は変わらなかった。
フィーセロト城が揺れて崩れると、その中心に美しいと思わせる女神がたっていた。ただ、サイズがおかしい。あまりにも巨大だったのである。
「でけぇな」
それを見下ろしながら錬治は呟く。
「そうだな」
その隣に城一が立つと、並び立つ。
「じゃ、錬治とりあえず頼むぞ」
「あぁ、真っすぐいってぶった切ってくる」
そういって翔けだす。錬治。
「全員! 傾注! 錬治が突っ込んでいる間の牽制を開始する」
速戦即応。全員が即座に最適の動きを開始する。
『ふむ、目覚めたての供物を用意しあるというのは、良き心がけではあるが、供物は供物らしく地べたに這いつくばり、その時を待つべきであろうに……
まぁよいよい。少し戯れるのも是であろう』
女は、女神は嗤うと、両腕を掻きむしると、血は鰐の頭を持つ天使に、肉片からは人の頭とリザードマンの体を持つ化け物が次々に生まれてきた。
『さぁ、晩餐会を始めようではないか』
女神は高笑いを揚げると世界が揺れ、ガラス玉が砕けるように、空が割れていき、大地に亀裂が入る。その先には地球とシルフィディアの各地が映し出される。
「なんだありゃ?」
疑問に思いつつも迫ってきた鰐頭の天使を切り捨てていく。
「少し鬱陶しいな」
次々に迫ってくる鰐頭の天使を切り払いながら進んでいく。
「【竹林大海】」
迫る天使の群れを遮るように竹林が出現する。
「こいつは……助かる」
仲間の援護。それがわかれば、自分の仕事に専念できるとばかりに、もはや鰐天使を無視しながらかける。
そして、錬治の信頼に応えるように次々に矢によって射抜かれる。
『我が名はフィロン。絶望の創造神。さぁ、供物を捧げよ』
悦に入りながら二つの世界に告げるように高らかに宣言するフィロン。
「グダクダうるせぇ! この腐れ神が!」
畏怖すべき美貌を張著なく切り裂き、地面に降り立つ。そして見上げたフィロンは5mは優に超える巨人であったが錬治は気にしない。降り立つと同時に迫ってきた人間鰐を五匹葬りながら、翔ける。
『ゴミムシが!』
フィロンが叩き潰そうと左腕を振り下ろすも、軽くかわしながら小指に、一閃。
『この!』
その見た目の淑女のような清楚さには似つかわしくない。乱暴に右拳を放つが、その腕に錬治は飛び乗った。
「ハハハハハハハ、【斬閃走破】」
そのまま刀を腕に這わせながら疾走し、腕を切り裂き駆け上がる。
『このぉぉぉ』
振り払おうとするが、それよりも早く飛びのくと、刀を振るい血を払う。
『ぐぅぅぅぉぉ』
振り払った血はフィロンの目に入り、淑女らからぬ苦痛の声を上げもだえる。
「その鼻っ柱叩き切ってやるぜぇ! 【刃雷剛閃・三式】千秋烙!」
その言葉通りに、力一杯振り下ろされた刃がフィロンの鼻を切り落とした。
「こいつも喰らいなぁ! 【刃雷剛閃・弐式】迦禽穿孔」
雷を纏った突き放ちながら、地面に降り立つ。
「どうだぁ!」
見上げると、命中はしていなかった。否、正確にいうなら、肩から生えた新たな腕がその一撃を受け止めていた。
「ちっ」
『人間風情が!』
再び叩き潰さんと、傷が消えた右腕を振り回す。
「そうはいくかよぉ!」
飛び退き、躱そうとした錬治であったが、足に違和感を感じた。
地面に落ちたフィロンの血がスライムのようになり錬治を捉えていたのである。
「しまった」
迦禽穿孔直後の硬直から生じた隙。錬治へと拳が迫るのであった。
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