【最終層・一区画】天地鳴動
その日、2つ世界の空が揺れ、空と大地が裂けた。
『我が名はフィロン。絶望の創造神。さぁ、供物を捧げよ』
裂け目から見えた姿は畏怖すべき美ともいえる存在。ただし大きさは解らない。だが、それを気にする暇はなかった。
空の裂け目から、天使のような姿の鰐頭の化け物が大地に降り立つと、人を貪り始めた。
泣き叫ぶ母親、絶叫する子供、助けようと飛び掛かる父親を踏みつけながら笑いながら、子供を貪ろうとする天使。
世界の終わりに、人々が絶望に呑まれようとしたとき、空から声が響く。
「グダクダうるせぇ! この腐れ神が!」
その声に人々を天を仰ぐ。そして、人々は目にする。邪神を斬りつけた一人の少年の姿を……
「生きてた……生きてた……錬治」
その姿に一人の女性が涙を流す。だが、それは悲しみでも絶望でもなく歓喜の涙。その涙を拭うと。閉まっていた置いた包を押し入れから取り出すと、外に駆け出す。
「あの子が生きてたのなら……必ず帰ってくる。なら母としてやることは一つ! 尾張蘭。推してまいる!」
地面、塀、屋根を蹴り、天使もどきへと迫る。
「乱閃【艶桜】」
包から取り出された刀が煌めき、天使の体を斬り刻む。
「歩法【縮天乱歩】」
地獄と化した現世を闊歩し、天使もどきを切り捨てながら駆け巡る蘭。
「ぐおおおぉぉぉぉ」
天使もどきは口を大きく開き噛み殺さんと迫るが、それを遮るように岩がいな、夫である巌が受け止める。
「人妻に手を出そうとはいいどきょうだな」
そのまま力任せに顎を開き引き裂く。
「あなた……錬治が……錬治が」
「俺も聞いた。あのバカ息子め……」
背中合わせにたち天使もどきに睨みを利かす。
「帰ってきたらお説教してあげなきゃ」
「そうだな。その為にも、こいつらを仕留めないとな」
「そうね」
創造神を名乗る邪悪な存在に斬りつける一人の少年。それによって、人は奮い立ち始める。
それは何も錬治の地元だけではなかった。
鹿児島某所
「鷹治!」
「まかせろ! 《念動力》!」
一人の少年が天使もどきの動きを止めると、それに合わせて二人の少年が駆け出す。
「おりゃぁぁぁぁ」
一人の少年が鉄棍で殴り飛ばすと、肉が潰れ、骨が砕ける音が響き、もう一人の少年は手にした短刀で、天使もどきの首を掻っ切る。
かつて、錬治に鍛えられた三人組、鷹治、功史朗、兵助の三人を中心に仲間を集めながら天使もどきを倒し、避難を手伝っていた。
「あの、空から聞こえた声てあの人だよな」
「聞き間違うはずねぇYO」
「ですね」
自分たちの師匠が戦っているという事実。それだけで三人組が戦う理由としては十分だった。自分たちに戦うことを教えてくれた師匠。その師匠に恥ずかしくない事を心にそれぞれ誓うと、少年たちは駆け出していく。
戦いは何も地球だけで起きているわけでなかった。
王都『レーヴェリス』
地面の亀裂からはリザードマンの体に人の頭がのったリザードマンもどきが湧き出ていた。
だが、それをドワーフの一団がハンマーで叩きのめし、エルフの弓隊が射殺し、人の騎士が蹴散らしていく。
理不尽な神からの宣戦布告。侵略。
それを是として、人は諦めるのか?
答えは否。
たとえ、神であろうとも、意思をもって戦う。
それがヒトなのだから
二つの世界を呑み込まんとする神との戦いが今、始まるのであった。
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