【二階層三区画】異常という名の普通
常識は投げ捨てるモノ
【二階層三区画】異常という名の普通
歓喜。
それが尾張錬治と藤堂光太郎の二人の感想だった。
目の前に強者がいる。ただそれだけで十分。
どちらが、ではなく。どちらともが拳を交えようとした瞬間
「止めろ……スキルなしでもここで暴れられたら周りがもたん」
二人間に如月源治が割って入り
「ちょっ、ストップストップ」
「いやいやマジでお二人さん止めて」
二人の背後に矢車調と赤城次郎が止めに入っていた。
「くっくっくっなんだ面白い奴らが多いじゃねぇか」
「そのようだな。俺は錬治だ」
「ワイは光太郎だ。止めに入ったお前らもナイスな連中だ」
「ふん…暴れたいのなら外でやれ」
「あぁ、止まってよかったなやぐっち」
「もう、やぐっちでもいいけど…マジで出会って5秒でバトルて…どこの戦闘民族」
思わず始まりそうだった戦いを止めた三人とは、対照的にそれを止めずに眺めていたものが数名。一筋縄ではいかない連中ばかりである。
「あぁ…そのお前ら席につけぇ。これから説明会するから、席についてください」
いつの間にか入り口に立っていたスーツ姿の青年が声をかけて教室に入ってきた。
「とりあえず入学式までまだあるから入学おめでとうは早いが、これから3年間お前らの担任になる。大島右近だ」
少し着崩れたスーツ姿で親しみやすい笑顔を浮かべる。
「…大島…右近…えっと『人形劇』の大島右近さんですか?」
「まぁ、二つ名持ちの方が担任なんて否定できませんね」
二つ名…それはいつの間にか当たり前のように一級探索者や話題性の高い探索者に着けられる称号である。ちなみに、付けられる際には功績や命名理由などわりとしっかりとした審査がされるので侮蔑などは表向きでは禁止である。ただし隠語として使われたりする場合はあるのだが。
「ぐっ…あぁその間違ってはいないのだが…おっさんもう30代後半なんだよ。だから頼むから二つ名は勘弁してくれ」
ただし一部探索者にとっては、恥ずかしいという意見があるが世間的に面白そうという理由から二つ名制度が廃止される見込みはない。
「とりあえず、自己紹介から始めるか。3年間一緒のクラスだし。そうだな名前と特級スキル、簡単な説明と特技や戦闘スタイルを簡潔に紹介してくれ。ちなみにこいつは野良でパーティー組む時なんかには必須のスキルだから身に着けておくと便利だぞ」
探検者には、固定のパーティー者の他に探検者センターで人を募って臨時でパーティーを組む探検者を野良と呼ぶ。
「そうだな…では…」
教室の全体にプレッシャーと存在感が一点に集中する。
「≪アテンション≫プリーズ。皆様、ご注目ください」
その言葉に全員が強制的に注目させられる。
「ふむ、やはりここは普通に我が場を支配すべきであろう。我は新藤城一、クラスはキャプテン。部隊指揮には自信がある。そしてスキルだがでは体験してもらおう平伏せ」
強制的に抑え込まれるようにクラスの半数が思わず平伏してしまった。
「ほう、耐えるのもいるか。我のスキル≪ドミニオン≫は支配の能力我がスキルの領域において強制的に命令を実行させる程度の能力だ」
「では、続きまして私は志藤岬。クラスはバトラー、サポートを得意としております。スキルは先ほど皆様の注目を集めました≪アテンション≫意識を集めるスキルとご認識ください」
傲慢不遜な自己紹介。この時点で担任の大島は胃がいたくなっていた。ちなみに平伏してはいなかったが脂汗をうっすらとうかべてはいた。
「ふふふふ、面白くて自由な自己紹介だね。なら、もう皆には自己紹介ほとんど終えてるけど改めて僕は小鳥遊充希、クラスはピエロ。攪乱とかは得意だと思うよ。そしてスキル≪アンチェイン≫僕に対してあらゆる拘束力は発揮しない。物理的にもだから、新藤君のスキルは僕に対する拘束力はない。まぁ王様のとなりには道化師はつきものだよね」
「ほう、面白いことをいうな。プカプカと浮いての上から目線、実に面白い」
険悪な空気になりそうであったが、小鳥遊の自己紹介で場の空気は一転した。
「お次は…」
「わたくしがしましょう。琴吹佐江。クラスはヒーラー。スキルは≪ネガティブ≫否定するスキルですね。まぁ王様なら下のモノ苦言を受け止める度量が欲しいですね」
小鳥遊の言葉に乗っかり新藤を王様と呼称する。こうするのが一番扱いやすいと
「いいねぇ、いいよ。お前。ワイを屈服させようなんて面白過ぎて滾るねぇ。ワイは藤堂光太郎。戦う事が好きで好きでたまらない。武器は斧、クラスは狂戦士。スキル≪アンフェア≫理不尽なまでの身体強化。相手が強いほど俺も強くなるなんて本当に理不尽だろ?」
「自己紹介は静かにしてほいものだが…自分は如月源治。クラスは重騎士、前衛を務めていた。スキルは≪カスタマイズ≫鉱物を取り込み自身の武装に変換するスキルと考えてほしい」
「ほう、我のスキルをスキルで防いだかと思ったが」
「あいにく鍛えているのでな」
「ふん、面白いな。さてと最後に平伏さなかった」
「尾張錬治だ。クラスは侍、まぁ敵を斬るくらいしかできないが」
そういって城一の背後に硬貨を弾いて飛ばしスキルを発動させる。
「スキルの≪チェンジリング≫はこういう手品ができるスキルだ」
背後に立つ。
「ふっふっふっ、なるほど大した手品だ。我が領域にやすやす入るとはなかなかの胆力だな」
「そりゃどうも。ちなみにお前さんのスキルは気合さえ入れれば結構防げるぜ」
ちなみに精神がSの錬治だから防げたのだが…
「さてと、俺が始めたのだから最後まで仕切られせてもらうぞ次は」
その言葉に手を挙げたのが
「あたし、六角美千代。クラスはマーチャント。物資の調達とかは得意。スキルは≪ボックス≫箱を作れる。あと中にしまったものは私の【インベントリー】に収納できる。ちなみに収納量は10万リットルが今の限界かな」
それを聞いて大島は頭が痛くなってきた。
「あーしは諏訪一芽。クラスはスカウト。スキル《ビースト》は」
ぴょこんとネコ耳があらわれピコピコと動きだす。
「動物の力を使うことだよニャハハハハハ」
「…秋葉美穂…クラスは黒騎士…スキル《ブラッド》血を操れる…増やしたりもできる」
「えっと、矢車調といいます。クラスは格闘家。スキルは《マスカレイド》仮面をつけるとイロイロとできます」
「うっス、自分は赤城次郎ス。クラスは冒険者。スキルは《デッドコピー》ユニークスキル以外なら9割くらいの性能で再現できる便利スキルっス」
「わたしは渡瀬ぼたん。クラスは軍師。スキルは《ホワイトブック》情報収集したものを解析及び予想を算出するスキルです」
そして、最後の一人
「新田崇高だ。クラスは弓術師。スキルは《ライブラ》あらゆる存在を計ることができる。そうだな…例えば新藤城一。君の器はかなり浅い」
「ほう…いってくれるな」
「が、海原の如く広く上を見上げてもきりがない。というかこの場にいる連中は一人として計り切れないというがオレの解答だ」
そんな情報はいらなかったと、ちょっと絶望した大島である。
「さてと自己紹介を終えたわけだが今日はこの後1学期終了までのカリキュラムを説明する。まずは1学期で全員に三級ダンジョンを攻略してもらう。それに向けて4月は基本能力の確認と模擬戦をしてもらうことになる」
クラス全体にえっという反応に大島は少し安心したが…
「先生殿、我と岬は既に三級ダンジョンを制覇しているのだが」
ぐっ、しかしまだ二人と、なんとかこらえたが…
「なんだよ。ワイだけじゃなかったのかよ。あぁ先生さんよ、オレもクリアーしてるぜ」
「まて…えっと、ちょっと確認を取ろう。三級ダンジョンを制覇している人は手を挙げてくれ」
その言葉を発したことに、大島は一縷の望みに欠けたが、結果は絶望。
非常識のような事態が、目の前に繰り広げられた。なにせクラス全員が既に三級ダンジョンを攻略済みという事態。半年かけて準備を進めていたカリキュラムが崩壊した瞬間であった。
担任は犠牲になったのだ、作者のネタの…
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12月30日と1月3日までは毎日12時に投稿をいたします。




