【二十階層十三区画】呪剣
暗雲立ち込める空の下、城壁の上にて二つの人影が交わっては離れ、そして再び交わる。
「ハハハハハ、いいねぇ。久しぶりに戦いがいのある相手だぜぇ!」
錬治は姿勢を低くして、接近して横薙ぎ三閃。だが、呪剣・ダインは吹き飛びながらも大剣で受け止める。
「いいぜ。いいぜ。今までの相手は再生するからって、防御がなっちゃいなかったが、てめぇはその点だけでも、いいな」
再び距離を詰める錬治、こんどはダインが剣を振り下ろす。少しだけで横に体を捻りかわし、その勢いのまま刀を振りぬく。それに対してダインは剣を振り回し、遠心力で前に進むことで錬治の剣を回避して見せる。
「まじで惜しいな。生きてるうちのあんたと剣を交えたらどんなにたのしかったのかねぇ…【雷身】」
錬治の体から稲妻が走り、残像を置き去りにしながら、轟音を響かせ雷雨のごとき連撃を浴びせる。ダインも対抗して剣で薙ぎ払うが鎧に罅が入る。
「銀以外だぜ。こんなにワクワクさせてくれた奴は……本当に凄い剣士だったんだな……操られていてもわかるぜ。真っすぐで融通の利かない、そして誰かを守るために剣を振るってたんだなぁ」
ダインも負けじと猛攻を放つも錬治は受け流すもいくつかの攻撃が薄く傷をつける。
「傷をつけられるってのも久しぶりだな」
剣士としての才能なら錬治と互角だったであろう。そう思うと錬治は腹立たしくて仕方がない。そして、敵でありながらも剣士として最高の男に対する礼儀を尽くすと決めた。
「【刃雷剛閃・五式】瞬迦千刀」
最大の技による礼儀。ダインは大剣で受け止めるも刃が欠け、刀身に亀裂が入る。
「あんたは、凄い奴だぁ。そんなになっても心が残ってる! あんたの剣から感じた悲しみ悔しさ、そして守りたい思い。全部、俺がくそったれな邪神どものにぶちかましてやる! だから安心してしな。これはあんたへの手向けだ! いくぜ【刃雷剛閃・終の三番】稲光狩」
刃雷剛閃・終の三番――稲光狩――突き詰めれば単純な袈裟斬り。ただし、その威力は天が裂け雲が消え、陽光が降り注ぎ、ダインの鎧が砕け、傷だらけの青年の姿がそこにはあった。
――ありがとう――
幻聴だったのか、錬治の耳には確かに届くのであった。
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