表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
255/293

【十九階層六区画】料理対決・扶桑の料理・前菜~スープ

 デザートまで終えて、審査員一同が軽く水を一口つけて、いよいよ扶桑…城一たちサイドの料理がサーブされる。


「それでは、いよいよフソウ側の料理です。まずは一品目ですが……料理名をうかがっても?」

「うぅんそうね。細かい説明は食べてもらってからでいいかしら? わたーくし達の料理が早く食べられたがってるの」

「解りました。では、前菜からどうぞ」


 ようやくサーブされたのはタルトに琥珀色の塊がのったパイがだされた。


「これはなんじゃ?」

「もしかして…肝ですか? 私はあまり好きなものでは……」

「まさか……!?」


 ギムリとエンディミオンは首をかしげるが、サンロードだけは慌てて口にする。


「な、なんじゃコレは、チーズのような濃厚さと滑らかさ、今まで食べたことがないわい」

「確かにこのような不思議な触感は、いままでありませんがこれは何なのでしょうか?」

「間違いあらへん……あんた、これはオヴィスリーバードのレバーやろ。せやろ! けど、なんでや! この舌ざわりは極上のチーズのような滑らかさは……どう火を通せばこんな…」


 今まで味わったこともない、濃厚な風味と、触感に全員が驚きをかくせないでいると、メインとして調理を担当したアンジェリカ北城が前にでて解説をはじめた。


「この料理はオヴィスリーバードのレバーパイ。焼き上げたパイ生地に半日ほど塩漬けにしたオヴィスリーバードのレバーを低温調理で仕上げた一品よ」


 低温調理という、この世界では知られていない調理法に全員が小首をかしげる。それは、現実世界からこちらにきた面々もほとんど知らない単語である。


「ねぇねぇー錬治ッチ。ていおん調理てなんだし?」

「低温調理てのは、簡単にいうと、ジップロックにいれて可能な限り空気を抜いて、だいたい55℃から67℃の温度で熱を食材にいれる技法だよ。最近だとローストビーフの作り方としては有名だとおもうぜ?」


 低温調理は、たんぱく質が変化しない温度で熱を通すことで生に近い食感を残す技法として広まっている。


「まさか、オヴィスリーバードのレバーをだしてくとは予想外やった。オヴィスリーバードは卵が珍重されて身は見向きもされへんが、実はそのレバーや脂は極上に旨いねん。もっとも保存のために内蔵すぐに捨てられるから食べたことある人は少ないやろうけどな」

「えぇ、わたーくしも食べてびっくりしたは、ファグラよりも濃厚な味わいがあって驚いたの。では次はこちらよ」


 そういって運ばれてきたのは、カクテルグラスに、まるで小さな粒が盛られたスライムのようにプルプルと揺れるものが入ったものだった。


「こいつはゼリーみたいじゃが…これがサラダなのか?」

「奇抜というか……なんというべきなのでしょうね?」

「確かに珍妙ではあるが…こない透明なもので味はするんかい?」


 そういってカクテルの中を口に流し込むと、口の中でプチプチっと何かがはじけ、酸味と爽やかな風味が一気にひろがる。


「こいつは野菜か?」

「しかし、こんな野菜は見たことが」

「それだけやない。この粒はなんや!? この粒からあふれたもんがゼリーにかかる。なによりも、なんや食欲がましてくるやと」


 興奮しながら腹をなでるサンロード。


「ふふふ、このサラダは野菜水のジュレのサラダ。野菜のデトックスウォーターをジュレで固めて、さらに人工いくらの方法で醤油と梅酢を混ぜた特性ドレッシングをお口のなかで完成させるの。面白いでしょ?」


 そう説明されてもやはり理解できるのはごくわずかな人ばかり、錬治に再び視線があつまる。


「デトックスウォーターてのは野菜を水につけて風味や栄養分だけを取り出したものなんだよ。透明な水に近いから何の食材かわからないから驚きもあるし、人工イクラは化学反応をりようしていくらに見えるように液体を加工したもんだ」


 そう説明されても分からずやはり首をかしげる。もっともデトックスウォーターに関しては美容関係でも知られているので女性陣はすんなりと納得した。


 驚きを堪能しているところに次の料理が運ばれてくる。


「ふーむ、シンプルじゃの。王国のほうは随分豪勢であったが」

「確かにそうですが……程よい暖かさですね」

「ほうほう、わかってるやないか。しかし、なんや底の方にはいっておるようやけど?」


 スプーンで、やわらかい感触が伝わり白と薄ピンクの固形物がスプーンの上にはのっていた。


「どれ一口」

「薄味であるが、この塊は……」

「絹ごし豆腐と鶏むね肉フランのコンソメスープ仕立てよ」

「トウフなんやそれ? この白くて柔らかいもんか?」

「そうよー。それは大豆からつくるのだけど…作り方はあとでね」


 今まで食べたことのない食材に、サンロードは興味津々である。


「ケケケケ、錬治。フランてなんだ?」

「洋風茶わん蒸しのことだな。生クリームと牛乳が使われていることも特徴だな。それにコンソメスープをかけたものだな」

「ふむ? けど余り熱くないでありますよ?」

「ここからでも計れるのですね。崇高さん」

「あぁ、コンソメスープはあまり熱くしないんだよ。というかフランス料理て熱々を食べるてわけじゃないんだよ。フランス人て猫舌がおおいらしくて日本人が温いと思えるくらいの温度が適温なんだとさ」

「国が変わればというやつでありますな」

「ふふふふ、それにしても……なるほどですわね」

「……佐江ちゃん?」


 いやいや、メインへと続く料理が用意されていくのであった。

評価や感想、ご意見など時間がありましたらどうかお願いいたします。


調「ところで低温調理したレバーて本当にあるのか?」

「アルよ。家庭でも作れるし」

調「へー」

「普通のレバニラ炒めが苦手な人でも低温調理すると食べれると思うよ。カマンベールチーズの食感に近くなる。レバー苦手な私も食べれるようになったし」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 相手側には全く理解できないだろうね、 料理の技術からして進み方が違うのだから。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ