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【二階層一区画】襲撃者

少し飯テロです。

【二階層一区画】襲撃者


 錬治は鹿児島市からほど近い、黒神自顕流宗家の敷地へと続く竹林を通り抜ける細道を歩いていた。


「なぁ、爺ちゃんよ。なんでこんな無駄に広いんだよココ」

「ふむ、なんぞ最近は儲かっておるらしいからな。整備したらしいからの」

「それは景気のいいことで」


 黒神家は薬丸自顕流の流れをくむ派生した流派でダンジョン誕生からの古武術ブームによりここ数年で大きく発展した一派ではある。


「ところで爺ちゃん…」

「ふむ、お前さんへのお客さんじゃな」

「あっ、やっぱり? というわけでそろそろ出て来いよ忠常(ただつね)


 竹藪から木刀を手にした胴着姿の男が十数名が姿を現し一人、一際際立った格好の男が一人


「よう、錬治。久しぶりだな。まぁ、遠路はるばるご苦労様。なんで次期当主が歓迎してやろうと思ってよ。まぁ、ちぃとばかし手荒い歓迎だがな」

「そいつは、ありがたいね。ちょうど移動やなんやと退屈してたんだよ。遊んでやるからかかって来いよ。そこらへんに潜んでいるお友達も一緒にな」


 忠常と錬治は因縁というか、なんというか過去にいざこざがある。と、いっても数年前に来た時に因縁をつけてきた忠常を錬治が完膚なきまでに返り討ちにしただけなのだが…完全な逆恨みである。


「うぉぉぉぉぉぉ」

「不意打ちするなら声出すなよ!」


 業を煮やした一人が、突っ込んでくる。折角の不意打ちも声をだせば意味もなく錬治に振り下ろされた木刀を躱して()()を顎に叩き込む。


「錬治、儂は先に行っておるから程々にの」

「あいよ。というわけで稽古といこうか?」


 自顕流という流派は、先の先をとる剣術ではあることが、特徴の一つであるが、もう一つの特徴として「カエルの目」と呼ぶ広域の視界をとることも教えの一つにある。すなわち集団戦も元々想定された流派であり、相手の挙動をとらえる起こりを見逃さず相手に一撃を撃ち込む剣術なのである。そして、錬治の≪チェンジリング≫との相性も恐ろしくいい。


「な、なんなんだよ。コレ」


 誰かがもらしたそんな言葉は、まさにこの錬治の遊戯場に相応しい状況になっている。≪チェンジリング≫は対象と対象の位置を入れ替える。それだけでも反則級の効果だがもう一つの反則効果は取り換えた対象の向きをも変えられることもできるのである。


 つまり…


「名づけるのならリバースビローてところだなもっともアーツにすらならないスキルの応用ではあるけど」


 ある者は、錬治の身代わりに木刀で撃たれ。ある者は飛び跳ねた錬治と場所を入れ替えられて頭から落下し、前に駆けだした者は、気が付けば地面に勢いよく衝突する。錬治が投げた石ころを避けたと思ったら、背後から重い蹴りを側頭部に叩き込まれる。


 まさに、縦横無尽。非常識ででたらめで理不尽。単対多という状況において場所の変更という恐ろしいまでのアドバンテージがある以上この場はまさに錬治の独壇場である。


「さてと、お友達は()()お眠みたいだけどどうする?」

「いいぜ、俺の実力しっかりとその体で味わいやがれ!」


 二人の刃が交差する…



 その夜、黒神自顕流の本道場の縁側にて七輪を挟み二人の老人が酒を酌み交わしていた。


「哲一、どうだ久しぶりの鹿児島は」

「まぁ、悪くないな。こうしてキビナゴも食えるしの」


 軽く七輪で炙り、酢味噌に着けて頬張り、焼酎をあおる。


「ふむ、兄よ.さすがに森伊蔵は気張りすぎじゃないか?」

「なぁに、伝手はあるからな。それにしてもお前がそんな気づかいするとは少々驚くぞ」


 珍しいものを見たと黒神自顕流先代当主、黒神義哲(よしてつ)は笑みを浮かべる。


「そいにしても、錬治はよかニセ(若者)になったの」

「まだまだだな。忠常もまぁちいとばかし性格に難はあるがアレはアレで面白かな」

「オイに言わせれば未熟も未熟。錬治に手も足もでんかたっしの」

「才はあるが競える相手がおらんかったんだろう。同い年に競う相手が身近におらんというのも不憫じゃの」

「しばらくは錬治がおるから相手してもらかの宿代代わりに」

「ちゃっかりしてるの」

「ほれ、今日〆た鳥の刺身じゃ」

「……こいもこっちでないと食べれないからのいただこう」


 春風に桜舞う月夜に老人二人。のんびりと酒を酌み交わすのであった。

キビナゴを七輪で軽く炙って食べ方は漁師さんがそういう食べ方をする方がいるそうです。

なお、酒の肴は

・キビナゴの刺身

・マグロの刺身

・鶏の刺身

・さつま揚げ

・焼き豚

 となっております。

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