【十八階層十区画】暴牛氾濫
キャンサーシップ商会のリッツと光太郎が出会ってから二ヵ月が経過していた。
「くそ……」
「ケケケケ、わりーな。俺の勝ちだ」
闘技場にて、今、光太郎が金級一位『天弓』ケイローンが倒れ伏していた。
「ワイのダチの崇高の矢はもっとえげつねぇんだよ」
そう言って、闘技場を立ち去る光太郎だった。
静かな青い小鳥亭は、賑わっていた。
その中には『金牛』のアトラスや他にも光太郎が、ここ二ヵ月にの間戦った、闘技者たちが集まっており、店は料理の匂いで充満するほどであった。
「きもち……わるい」
「大丈夫であるか? この処、体調が悪そうである」
そんな中で守里は少し気分悪そうに腹部をなでながら、少し外の空気を吸おうと思い、剛と共に外に出ると兵士が一人、息を切らせながら走ってくるのをみた。
「ふむ? おぉ、トニー殿ご苦労様である}
「はぁはぁ……ご、ゴウさん……大変なんです。ブレイジングバッファローの群れが……街に向かってきていて……」
「なんと!? 光太郎!」
店内の光太郎に声をかけると何事かと思い店外に顔をだし、説明されるやいなや。
「ケケケケ、あっちであってるんだな」
「は、はい」
指を刺された方向をむくと、光太郎は地面に手を当てる。
「【アース・カタパルト】」
アーツを発動させ、自らを弾丸の如く、地面から射出すると空高くへと跳ね上がり眼下に広がる光景を確認する。
「ケケケケ、なんか一際大きいのが先頭を走ってやがるな。それにつられてるて所か【インパクト・ブースト】」
衝撃波を生み出し、軌道を修正と加速を行う荒業を使いながら、ぐんぐんと、大気を蹴るように加速して、猛牛の群れ50m程手前にたどり着く。
「地面を引くっり返すなんて普通はできねぇけどよ。ワイならできる! 《トレイター》」
力技を超えた力技。本来なら不可能すぎる出鱈目なことを可能にしてみせる超絶スキル。
光太郎は文字通り、猛牛の群れごと地面をひっくり返したのでった。
「ケケケケ、いっちょ上がりといいてぇが、でけぇの……てめぇは元気ハツラツみたいじゃねぇか」
一際、大きなブレイジングバッファローは、戦闘態勢をとるように後ろを蹴り始める。
「ケケケケ、こいよ」
その言葉が、合図になったのか、光太郎へと突進をするが、光太郎は意に介さず、飛び上がり、両膝を揃えてブレイジングバッファローの後頭部へと落とすと、そのまま頭部が地面にめり込む。
「デカくても牛は牛だな」
そういって、その首をあっさりと巨人の手斧で切り落とし、吹き飛ばしていたブレイジングバッファローの群れに目を向けると怯えながら逃げていく様をみることができた。
「ケケケケ、それで、てめぇ何者だ? その中にいるんだろ?」
斧を肩に担ぎながら、切り落とした首に話しかける。
「フフフフ、素晴らしいね。まさかまさか、こうもあっさりとカイザー・バッファローを仕留めるとは……用意してもらうのに、かなり苦労したのだが……」
水から出るようにするりと、現れたのは槍を構えた眼帯の男だった。
「オレは二十二神将の一柱。『戦悦』のサビク。楽しませろよ」
「ケケケケ、お前がな」
槍と斧がぶつかり合い、火蓋が切って落とされるのであった。
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