【二階層】 プロローグ
二章を開始いたします。
【二階層】 プロローグ
そこは陽光に満ち程よい暖かさに包まれた広いオフィス。
事務机には大量の書類が山積みになっており、それを決裁する見目麗しい女性が一人
「ただいま戻りました」
「うーん、お帰りなさいね」
まるで母親のような優しい微笑みを浮かべ、一人の男を迎えた女性はオフィスのとは、不似合いなほど若かった。
「それでどうだった?」
「しばらくは大丈夫ですね」
「そう、安心したわ。あなたもご苦労様」
「いえ、これは私の権能ですので」
「とりあえず定期的に観察をお願い」
「畏まりました」
「私たちは『ダンジョン運営神議会』でしばらく手が離せないからあの子の事はお願いね」
その一言に男は短く「はい」と答えて再び姿を消すのだった。
「はぁ…本当に大変なことになっちゃったけど…頑張ってもらうしかないわよね」
少し、深いため息をして再び書類作業に戻るのであった。
――とある日のニュース――
「では、次のコーナーではダンジョンが世界中に誕生してから10年。本日は日本迷宮研究所から広報員の長谷川耕三さんをお招きしております」
「よろしくお願いします」
スーツ姿の男性が向かい合う形で、対談を始める。一人はニュースキャスター鳥越正和である。
「さて、長谷川さん。ダンジョンと呼ばれる迷宮が誕生してから変化したこととはなんでしょ?」
「そうですね。やはり『魔石』と呼ばれるモンスターの心臓部にある赤い結晶体から持たされた恩恵ではないでしょうか」
「あの、私。不思議だったんですけどなぜに魔石なんて言われるように?」
「うーん、そうですね。やはり若者のライトノベルの文化からの影響が大きいと思います。ネットで魔物情報が集まる中、自然と魔石という呼称が定着してしまったので我々も便宜上は魔石と呼んでいます」
「なるほど。それで魔石の恩恵というのはやはり」
「はい、魔石発電ですね。魔石は高度なエネルギー結晶体と判明しそれを解析することで電力に変換することが可能になりました。これはエネルギー資源を輸入に頼っていた日本にとっては革新的な技術となり我々の生活は一気に好転したともいえます」
「たしかに電気代が、半分くらいになりましたね」
「はい、それに魔石による発電は、環境へのストレスもありません。理想のエネルギーといえます」
「まったくそうですね」
「現在は、動力への直接利用に向けての研究も進められていますが、実用化にはまだしばらく必要になると思います」
「ありがとうございます。ところで、そんな魔石なんですが、その詳しい正体などは判明しているのでしょうか?」
「いえ、未だに完全解明とは言えません。ただ、言えるのはモンスターにとっては非常に重要なモノだと考えています」
「と、いいますと?」
「はい、モンスターには共通してこの魔石は存在していることからモンスターを構成する鍵ではないかと考えています」
「なるほど」
「むろん、仮説の一つですので断定してはいませんが、魔石には可能性がまだまだあります。ですから我々では冗談ぽく『賢者の石』などとも呼んでいたりしますね」
「それは何とも」
「まぁ、そういうのが好きな局員が多いですからね」
「なにか魔石以外で問題などはないのでしょうか?」
「そうですね。やはりダンジョン産の資材が足りませんね。ダンジョン産の資材はどの部署も争奪戦になります」
「なるほど…本日のお時間はここまでのようです。当番組では一週間のこの時間にダンジョン特集を行いますので皆様ご期待ください。明日の話題はダンジョン産食材についててです。長谷川さん本日はありがとうございました」
「こちらこそ。明日もよろしくお願いします」
毎週水曜日の12時の投稿を行います
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