【十七階層十四区画】どうやら、やらかしていたようです。
「それでどういうことじゃ?」
ギムリの問いに二人は、どうしようか口ごもる。
「いくつか、想定はできますが、『扶桑』が関係してますわよね?」
「君は?」
「まずは、自己紹介をさせていただきますね」
そういって、佐江は全員の挨拶をすませて席につき、佐江の背後に錬治たちが立った。
「さてと、お話を始めましょ。ただのアレクサンダーさん?」
「かなり話せるみたいだ」
「じゃから、説明しろというとろうが!」
「そうだな。実は、今、城が二つの意見に割れているのだ。一つはフソウとの融和」
「もう一つは排除ですわね」
「うむ…その通りだ」
そう口にしたのはディオンであった。
「排除の理由は、神剣…というよりも神剣をもった異邦人が来たことで、王の権威が揺らいだ。それを利用してあわよくば王位の簒奪を狙っているといったくらいは予想の範囲ですわね」
「せやな。けど、それだけじゃなかったわけやろ?」
「あぁ、彼は…いや、彼らはみな礼儀正しかった。娘も助けてもらったし褒美をと思い爵位をといったときも、いずれ、さる身故に辞退されたしな」
そういってワインを一口、口にした。
「とは故、なにも出さないわけにはいかんかったからな。何がいいかと聞かれたら、海岸沿いの廃村があればそこに居を構えたいといわれたよ」
「あらあら、城一さんは謙虚ですわね。わたくしなら、どこかの都市一つはいただいておりましたのに」
コロコロと笑う。
「ちょうど王家の直轄領にあったからの娘にそこの管理を任せることにしたんじゃ」
「……それは悪手だったのではありませんか?」
「うむ、いくつかの反対意見はでたが何れは去るといっておるし、なによりも恩人を蔑ろにしたというのは王家のメンツも立たん」
「確かにそうですわね。それで?」
「その程度なら然程影響はないと思っていたが……海水からの塩を、それも上質の塩を作りだし販売を開始、さらに貧しい近隣の農村には格安で提供するなどの施策をし、そで塩の販売を始めたことで塩ギルドや塩で利益を得ていた貴族と対立することになってしまった」
「あぁ……やっちゃいましたね……はぁ……わたくしたちにとって、製塩技術が当たり前でしたから見落とし? いえ……もしくはわざと? とりあえず火種になってしまったのですね」
「うむ」
「じゃが、それで式典が十日後と何が関係あるんじゃ?」
はぁ……とアレクサンダーと深いため息をついて意を決して告げた。
「実は、料理対決をすることになり。その審査委員の一人をギムリに頼みたいのだ」
「なるほどの。わかったわい。引き受けるが……」
ギムリは錬治たちをちらりと見ると
「あぁ、だから今日の料理は塩辛ったのか、て、事は…」
「塩料理対決とかかな?」
「……もしくは、メインあるいは一品は塩を生かした料理を出す?」
「そうですわね。たぶん、その前に傭兵団でも利用して城一さんたちの村を攻めたけど返り討ちにあったのでしょうね」
「ありそうやな」
経緯を推察しており、その何気ない会話にアレクサンダーもディオンは目を丸くしていた。なにせ、その推察は正鵠を射ぬいていたのだから……
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