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【十七階層十三区画】夜の来訪者

 王都への入場は、あっさりと済んだ。先触れも出していたことと、貴族専用の門を通り抜け、貴族が住む、貴族街へと直接続く道を抜けて、たどり着いたのは辺境伯の王都にある別邸。と、いっても、かなりの大豪邸である。


「ようこそ、お越しくださいました」


 出迎えたのは、妙齢の貴婦人はにこやかにほほ笑み、傍らに押さない少年と少女も礼儀正しく礼をする。


「母上! それに、ホルディにリィーン」

「兄上さま、お久しぶりです」

「ギムレット、客人の前ですよ」

「はっ、申し訳ありません母上」


 微笑ましい親子の対面に誰も口を挟まずに、旅の荷解きを始めるのであった。


 簡単な食事会を終えて応接間にてギムリと、錬治たちが通された。


「なんじゃと? 式典は十日後じゃと?」

「詳しくは話せないのですが……」


 ちらりと夫人は錬治たちをみる。


「俺らがどうかしたか?」

「いえ、なんでもございませんが……ギムリ様その」

「レンジたちは、信用に足る友じゃ」

「その……わたくしからはこれ以上のことは……夜にお客様がお二人こられることになっておりますので詳しくは……」


 そう言い残して夫人は部屋を後にした。


「なるほど、そういうことですわね」

「だな」

「せやね」

「うむ」


 錬治たちは、夫人の対応で、いろいろと察したが、ギムリだけは首をかしげていた。


「どういうことじゃ?」

「美味しいお酒を携えて客人が来るということですわ」

「ほー、それは楽しみじゃ」


 ガハハハハと笑いながら、佐江のお米のジュースで喉を潤した。


 なお、錬治は共にきた騎士たちと手の空いてる兵士を集めて訓練を開始した。騎士たちの目が死んでいたのは気のせいであろう。


 夕食はお世辞にも美味しいとは言えなかった。具体的にいうのなら、塩や香辛料の使いすぎで舌が痛かったくらいだ。


「こちらでは、このような味付けが普通なのでしょうか?」

「うーん、ここまでじゃなかった気がするんじゃが」

「それは……」


 夫人が説明しようとしたところで、執事が耳打ちをすると慌てて指示をだすと、執事が部屋をでて、直ぐに深くフードを被った二人が入ってきた。


「どなたかは存じませんが、食事時に、しかもフードを被って来訪とはぶしつけではありませんか?」


 客人とは聞かされていたが、まさか、ぶしつけな来訪にギムレットが立ち上がって抗議したが夫人は慌てて止めに入る。がフードの人物が制して


「確かにぶしつけであった、許せ」


 そういってフードを外すと中年の男性が二人が顔を見せると、ギムレットは顔を青くして跪き。


「アレクサンダー陛下! それに、ディオン教官ではなくて騎士団長!?」

「此度は忍びぞ」

「うむ、古き友人と酒を酌み交わしに訪れただけ故に、楽にするがよい」


 どちらも貫禄のある声で言われるが、無礼講だからといって額面通りに受け取ることなどできず、自分にも秘密にしていた母親の方を見るが目線を思いっきり逸らされてしまった。


「ガハハハハ。なんじゃおぬしら、また、城を抜けてきたのか。ガラハッドのやつも苦労しているじゃろうな」

「小言ならいわれたよギムリ」


 そういいながら席に座る。


「ところで手ぶらは無いじゃろうな?」

「異国のワインが手に入ってな数本持参してきたぞ」

「どれも美味だぜ」


 突然、砕けた口調になりワインが運ばれ来る。


「ほー、なかなか美しいグラスじゃが……それをいくつも揃えるとは、どうしたんじゃ?」

「う、うむ……とりあえず口を付けてから話させてくれ」


 促されて口を付ける。


「これは、酒精も悪くないが香りも、舌触りもどれも素晴らしいものじゃな」


 ギムリがそう感想を述べると佐江も口にする。


「……これは……ボランジェですわね」

「佐江はん知ってるんか!?」

「イギリス王室御用達の高級ワインですわ」


 その会話にアレクサンダーは目を見開く。


「君はフソウの関係者…なのか?」


 目を細め鋭い視線を向ける。


「そうでもあり、そうでもないといった所ですわね」


 そう言いながら、もう一口、口を付ける。


「アレクサンダーよ。今日は忍びじゃろ。じゃが、式典が十日後という理由の説明くらいしてくれんかの」


 緊張した空気になりかけた時に、ギムリが話を割りこみ話題をそらす。


「そうだな。すまないギムリ。何から話すべきか…一先ず順を追って話そう」


 謝罪の後に語られる話は、錬治たちにとっては愉快な話ではあったが、この国にとっては大変なこととなっていた。

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