【十七階層二区画】大立ち回り
ブレス城は辺境の要となる場所。故に例年は多くの騎士や騎士見習いがその修練を披露する為に観覧席が設けられていた。その席に多くの騎士が、貴族の当主が闘技場に視線が注がれていた。
「ギムリ殿いかがですかな、我が領の若人は?」
「ふむ、よく鍛えられておるな」
「ありがとうございます。して、サエ殿はどうみますかな?」
「そうですわね。まずは錬治の戦いを見ながらとしましょう。それだけで十分かと」
「なるほど。確かに武人たるものかくあるべしですな。では、始め!」
その合図とともに筋骨隆々で一番の巨漢が走り出した。
「吾輩は、アチャゲス家次期当主、セイエーである!。ハッ」
振り下ろすように繰り出された拳を錬治は、臆することなく悠然と左手で受け止める。
「名乗りながら攻撃するのが作法なのか? 尾張錬治だ。よろしくな!」
そのまま一本背負いで投げ飛ばす。
「この!」
左右から挟み込むように、青年騎士二人が剣を振るわれる。
「おっと、今の攻撃は良かったぞ5点あげよう。けど!」
そういいながら姿勢を低くしての水面蹴りで二人を転ばし、跳躍。
「なっ!?」
打ち込もうとした青年騎士の一人の頭部を踏みつけさらに近くにいた別の騎士に浴びせ蹴りからのフランケンシュタイナーを決めるという大立ち回りを演じて見せた。
その様子を見ていたゴルジは顎が外れそうなほど大口を開けていた。
「こ、これは」
「まぁ、錬治さん楽しそうに、遊んでますわね」
佐江は口元を隠しながらコロコロと楽しそうに笑う。
「アレは遊んでおるのか?」
「えぇ、錬治さんが本気なら<ウォーロード>や<雷身>などを使ってますから」
そう話しながら闘技場の舞台を見つけると、錬治が軽やかによけながら体術で翻弄していく。
「ほい、ほいほいっと」
今も、剣を片手で捌き、そのまま肘打ちからのアッパーカット気味の掌底をからの正拳突きと次々に倒していく様に、ご婦人方の熱い視線が錬治に集まっていく。
「くっ、ならばこれはどうだ【ノーザンクロススラッシュ】」
ギムレットは高く跳躍すると上段に剣を構えて振り下ろし、繰り出された衝撃波が地面に傷跡を刻み激しく土埃が舞う。
「どうだ!」
勝利を確信しつつも油断なく土煙を見つめる。
「へー面白い。ならこちらも技を繰り出すとしよう」
錬治はトンボの構えをとる。その様子をみた佐江は慌てだす。
「まずいですわね。源治さん! 美千代さん!」
「……おう」
「あっ、コレあかんやつや」
錬治が繰り出そうとする一撃に対して、佐江たちは慌てて防御の布陣を引く。
「全力だとまずいか……あいつらがある程度は抑えてくれるだろうけど【瞬閃・四式】天斬・弱」
軽い気持ちで振るった錬治の剣撃は、轟音と共に闘技場の舞台を両断するにとどまらず地面に深い溝を刻むのであった。
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初投稿から2年…更新が滞ることなくできました。まだまだ、消化できてないエピソードがあるので、あと完結までには、2年はかかるかもしれませんが、どうぞ末永くお付き合いください。




