【十六階層八区画】辺境の街へ
~到着~
――常闇の神域・フィセートロ
帰還したレイノを迎えたサヴドゥリアは睨みつけていた。
「そう怒るでないよ」
「まったく……まぁいい。しかし、あの者かなりの者で、あったな。フフフ」
「貴様はもう少し自分の立場を弁えろ……だが、貴様がいない間に……」
「お久しぶりです兄上。『王冠』のヘイナー帰還いたしまてよ」
にこやかに微笑み漆黒のウエディングドレスを身に纏った女性が姿を魅せた。
「おぉ、ヘイナー。我が愛する妹よ。お前が帰還するとは万感の思いぞ」
そういって抱擁すると情熱的な口づけを交わしヘイナーもうっとりとした目でレイノを見つめる。
「ふぅ……説教は後回しにしよう。それにしてもお前の神威をも貫くか…….野放しにはできないが、従属神でも相手にならないとなると……」
「待て、まさか奴を『敗北』のウィクトルをぶつける気か!」
「あぁ、奴が帰還さえすれば、そうしたい所ではあるな」
「ふざけるな! アレは我の獲物ぞ!」
激昂し、思わず声をあげサヴドゥリアを怒鳴りつける。
「わかった。機会は作る。だから大人しくしていろ」
その返答で機嫌が直ったのかにこやかに笑う。
「おぉ、そうか。それは良かった」
「まぁお兄様の敵なのですね。ならば監視を放ちましょう」
「ふぅ~む。ヘイナーがそういうのなら放つか、サヴドゥリア。それでいいな?」
「わかった。手配しよう」
「では、我は休むとするぞ。行くぞヘイナー」
「はい、お兄様」
レイノはヘイナーを連れ立ち自らの寝所へと向かうのであった。
そして、退けた錬治は……
「うぅん……ここは…」
「馬車の中ですわよ」
ガタゴトと小さくゆれる馬車の中錬治は目を覚ました。
「佐江か」
「はい、大分無理しましたね」
「あぁ…終式、岱風一華は暫くは封印だな……ちぃーと消耗がキツイ。それよりもここはどこらへんだ?」
「フフフ、もう少しで、辺境伯の領都につくそうですよ」
「て、ことは相当、寝てたのか」
「そうですね。その間は源治さんが魔物の相手をしてましたよ」
そう聞いて錬治は額を抑え。
「っ…もったいないことした。面白いのはいたか?」
「大きなイノシシがいましたけど、弱かったですわね」
「ならいいか……」
そういって馬車の外を見てみると、大きな城壁に囲まれた都市が目に入るのであった。
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