【十六階層二区画】襲われた村
~胸糞悪い光景~
「村が襲われました」
「「「なんだって」」」
少女の証言に驚いた。
「……そういうことはよくあるのか?」
「いや、盗賊、山賊でも村を襲うなんてバカはぁいねぇよ」
「ですが襲われている否定できませんね」
「せやな。ところで、錬治はんどないしたん?」
「別にぃ……なんでもねぇよ」
「嘘をついている事は否定できませんわよ。昨日今日の付き合いではないのですから」
「はぁ……わかったよ。さっき初めて人を斬った……つまり、今度の相手は間違いなく。ヒトてことなんだよ」
その一言に、源治も佐江も美千代も理解する。
「なんじゃ? レンジはまだなかったんか。なら今日は祝い酒じゃな」
「そうじゃ! そうじゃ!」
「しっかしレンジなんで埋めたんじゃ? 野盗なんぞ野ざらしで十分じゃろうに」
文化の違いを感じる錬治たちであった。
「あの……それで……」
「おお、そうじゃった。後、襲った連中は何をしたんじゃ?」
「村の教会を襲ったと思ったら神父さまを……」
「なんじゃと!? ふぅむ……まさか、黒に赤い紋様の入った旗を掲げておらんかったか?」
「は、はい。掲げてました」
「くっ、だとすれば……フィセートロ教団の連中で間違いないじゃろうな」
「フィセートロ?」
「邪神の勢力じゃよ。まさか、未だに残党がおるとは……と、いかん! 早よせんと村人が皆殺しにされんぞ」
その一言を聞いた瞬間から錬治たちは既に駆けだしていた。
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村は悲惨な光景が繰り広げられていた。村は焼かれ、神父らしき人物は、杭に串刺しにされ、中吊りの籠には裸身の女性が血まみれで倒れ、車輪に縛られた男は棘の刃で回転する度に身を削られ、幼子が首に縄をかけられつられる。しかも苦しめる為だけの拷問による殺戮劇が繰広がれていた。
「ふふふふ、いいぞお前らの断末魔は神への供物へとなり恨みの念がこの世界を正しい姿の礎になるのだ」
リーダーらしき男が高らかに声をはりあげながら配下の男たちがじっくりと村人たちを殺戮を繰り広げていた。
「胸糞わるすぎだろうがぁぁぁぁぁ、人だからとか関係あるかよ! お前らはヒトじゃねぇ」
「……同意だな」
「えぇ否定しがたいですね」
「あんたら覚悟しいや!」
その光景が目に入った瞬間から、錬治たちの理性は、ブチ切れていた。それは普段、冷静に周りを鎮める佐江さへ…いや、切れ具合なら佐江がもっとも怒っていた。
「【フェイトセレクト】……因果応報・天網戒懐。悔い改めて死になさい」
「はぁぁ? なにをふざけたことを」
5人ほどの男が襲い掛かった瞬間。その男たちの肉体が弾けて吹き飛んだ。その死体をみた村への襲撃者たちは、戦慄した。なにせ全身の骨が折れ赤黒く変色するほどの殴打を受けていた。だが、その過程を誰も認識していないと思った次の瞬間再び五人が吹き飛んだ。
「うちかて人を殺すちゅうわ躊躇うとおもったけど……あんたら人でなしなら迷わへん! 【キューブプレス】」
戦闘力低い美千代とはいえ、並み程度の戦闘力しかない襲撃者たちならそのスキルで圧倒していく。
「なめるな!」
大柄な男が斧を振り下ろそうとした。瞬間…
「【キューブケイジ】なめてんのはアンタらや! うちらを本気でおこらせた!」
男をキューブの檻に閉じ込めると
「【ルービックキューブ】」
檻は閉じ込めた相手をルービックキューブのように回転し鈍い音が響く。
「な、なんだ、このガキども。ぜ、全員でかかれこっちはまだ50人くらいいるんだ」
「……有象無象は本来は相手をせぬが……許すまじ【モーニングスター】」
源治が直径2mはある鎖につながれた棘付の鉄球を振り回し、次々と吹き飛ばしていった。
「はぁ……対人戦を憂慮したけど、ここまで外道だと、吹っ切れるな【刃雷轟閃・肆式】刀雷」
「ぐぎゃ」
威力が低いといっても、この集団レベルならば致命傷に至る電光が降り注ぎ、その命を次々に終わらせていく。
「強さ的にはレベル10~15くらいでしょうか?」
「……崇高がいればわかるだろうが、手応え的にはそうだな」
「まぁ、この世界でレベルがあるんかは解らへんけどそれくらいやろ」
死屍累々、戦闘開始から10分と立たずして襲撃者たちは壊滅しておりたっているのは片手程度の人数のみ。
「な、なんなのだ……お前たちは何なのだ!」
「うるせぇよ! てめぇは色々と聞きたいから生かしてるんだ。大人しく縛につきな」
首謀者らしき男はワナワナと震えだすと懐から不気味な像を取り出した。
「ふざけるな! 我ら真なる神の信徒! 邪教徒どもが! 神の威光に頭を垂れよ!」
不気味な像が黒い光を発すると、像から伸びた触手が襲撃者たちの遺体へと突き刺さり肉を吸い始める。それだけでなく……
「アベェ!? ナゼ……ナンデ……」
首謀者や生き残っていた襲撃者にも触手が潜りこみ肉を吸収を始める。
やがて不気味な像は無数の瞳と無数の触手を備えた肉塊へと変貌するのに時間はかからないのであった。
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