【一階層十七区画】卒業に向けての戦い
今回は、ほのぼのダンジョン回
日本ダンジョン戦記【一階層十七区画】卒業に向けての戦い
季節は巡り巡って冬を迎えて年が代わり、あっという間の二月へとなった。
錬治たちの受験は無事に終了しており。既に錬治と銀之助は合格通知がきている。幸たちも後は結果を待つだけだが、自己採点では合格ラインに達していたので十二分に安心している。
そんなわけで、やってきたのは錬治たちにとってはお馴染みとなっている「小鬼のダンジョン」。
卒業も近い為に同年代も多いが、エクササイズや気晴らしなどでも利用する人も多いために割と年配の人も多いし、主婦でもパート感覚で三級ダンジョンの三階層までなら比較的安全に利用できるのである。なので、ラウンジではちょっとした装備の見本市に近い。もっとも錬治と銀之助は伝手を利用したためにかなり上等な分類に入るために注目を集めるし剛も別の意味で注目を集める。
それは悪い意味だけではないが、ちなみに剛の手甲は少し頑丈になっており厳つさも増している。幸と守里はというと少し遅れて歩いてきた。全員同じ時間に更衣室に入ったのだがちょっとした理由で遅れていた。
「ごめん…サイズが合わなくなっていた…」
「えっと…」
「錬治、察しなさい」
幸からの僅かな怒気で何となく察せた。幸と守里は身長は二人とも小柄ではあるが並ぶと格差が理解できる。あえて明言しないがまな板とエベレスト程の差があるとだけ記そう。
錬治たちの五階層までの突破、それはあっさりとなされた。断言していいが、錬治たちは異常といえる。普通の同じレベルでも五階層突破はあっさりとはいかない、消耗するし損耗する。が、消耗も、消費も、損耗もなく突破して見せた。つまるところ、スキルが凄いとかレベルが高いとか別の処の何かが違うのである。
「ふむ、五階層を過ぎたが順調だな」
「幸が罠を見つけるのは解るけど…なんで錬治と銀之助もわかるの?」
「音と足の裏からの振動?」
「後は悪意だな」
「あんたたち相変わらず頭おかしいわね」
五階層を超えてからは、まずは、ホブゴブリンが普通に出てくる。もっともボスのホブゴブリンよりも若干弱いのは、ボス補正というのがあるのではないか? というのが通説である。
続く六階層は、ホブゴリンとゴブリンファイターやゴブリンアーチャーが加わり。七階層では、ホブゴブリンもグラップラー、ファイター、タンクなどのクラス持ちが現れ。八階層では、ゴブリンチーフが加わり連携を仕掛けるなどと難易度がどんどんと高くなっていたったが…
「次、二体来るわよ」
「了解」
アタッカーとして錬治と銀之助、タンクとしての剛と守里、サポートとしての幸が機能している限りは困難も困難でなく突破する。まさに快進撃という言葉がまさに相応しい。もちろんそれには錬治と銀之助の異常性も関係してはいる。
「それにしても、詰まらねぇな」
「だな、こいつらはおかしい」
「? どういう事だ。すまないが吾輩たちにもわかるように話してくれないか?」
「あぁ、なんというか鍛えかたがまるでおんなじ何だよ。誤差なく、寸分たがわずにまるで機械のような…いや、機械以上に正確といっていいかもな」
錬治が語る相手の異常性に気づけているのは、ごく僅かなのだが、それを指摘できる人間は、ここにはいない。ダンジョンに出現するモンスターの強さは、階層ごとに上限はあっても誤差数%程度の差しかない。技術においては、まるでプログラムのような反応といってもいい。それはきっとダンジョンの秘密につながるのだろうけど、それには気づけていないのが現状である。
「まぁ、だから俺と銀が遅れは取らない。こいつらは何べんやっても成長しねぇ、成長できない。そういう奴らなんだろうさ。だから、俺は深くいく、俺は強くなりたいと強くありたいと思った。ただ、それがカッコイイと思っただから戦う。勝ち負けはいい。死ななきゃそのうち勝てる、負けない勝負は勝負じゃねぇ。勝負てのは負けるから勝負なのさ」
「…相変わらずね。その、ぶっとんだ思考というか思想というか…大人しくなったと思ったのに、残念」
「あぁ、そりゃ無理だわ。錬治の戦闘狂は変わらない不治の病だね」
「おい、お前ら酷くねぇか? 幼馴染だろ」
「「幼馴染だからだよ」」
九階層にくると、ホブゴリンは、ホブゴリン・バーサーカー、ホブゴブリン・ウォーリアと種類が増えるも一、二度の遭遇で癖を掴むと難なく倒せるようになり斬り進む。
「尾張もあれだけど、なんだかんだで坂田もあれだな」
「二人は…バーサーカー」
「日曜の朝から血生臭いわね」
ホブゴブリンは恐怖した。自分が振り下ろした斧を恐れることなく踏み込んで一閃、たたらを踏むと稲妻が自分を貫きそこで息絶える。
「やっぱりこいつもタイミングが一緒だな」
「だな、けど油断はするなよ錬の字」
「応よ。でも、今の奴も結構硬かったけど、突きの威力上がったか?」
「ふふふふふ、まぁな、ついでに新しいアーツも完成したからな。お前の面白スキルの先は見えたか?」
「そっちはまだだな。けど、俺としては【瞬閃・一式】のほうが性に合ってるんだよな。こいつをフルで活用できる敵がでてくれると面白そうなんだがな」
気を抜いてそうに見えるが錬治も銀之助も警戒は解いていない。
それからも快進撃は止まらない。10階層…三級ダンジョンの最下層のボス部屋前の大門へと14時間で到着。ちなみに、このタイムは同世代なら最速といっていい。また、優秀な斥候役がいる証左である。
さて、ここで早速ボスへと挑みたいところではあるが、流石に強行軍といっていい速度でにここで休息をとり、翌日に挑むことに決めていた。もちろんその為の外泊許可書類や探索計画書も幸が提出している。
何より、ボス部屋前の大門エリアは、安全地帯と呼ばれ、モンスターが現れない場所となっており探索者の休憩スポットとしては、討伐後のボス部屋とならんで有名である。なので錬治たちは錬治の父お勧めのイタリアン軍レーションで食事をとりローテーションを組んで睡眠をとることにした。
それでは、おやすみなさい。
次回、ボス戦です。




