【十五階層十二区画】神の勢力
~救援~
「うわぁぁぁぁぁぁ、ボクの神の腕がぁぁぁぁぁ」
ビシューは無様に尻もちを搗きながら、這う這うの体で無様に地べたを這いずりながら後ずさる。
「な、なんなんだお前……そ、その剣は!? あ、あり得ないだろうボ、僕の神威が消失させるなんて……ひぃぃぃ」
剣を喉元に突きつけながら城一は尋ねる。
「ふむ……先ほどからカムイ、カムイというがなんだそれは?」
「神威を知らない蛮族に……」
「どうやら頭はいらんらしいな」
「ま、待て。神威とは神の威…この前では全ての生命は委縮し、そして神の勢力に力を与え、そして衣となって神自身をも守る力だ」
「なるほど、勉強になった。では、さよならだ」
「ひいぃぃぃぃぃ」
剣を突き刺さんとした瞬間。
「むっ」
城一が、その手を止め距離をとるとビシューの背後に黒い甲冑を身に纏った騎士が大剣を振り切っていた。
「勘がいいですね。なるほどビシュー程度では勝てぬわけです」
その背後からはインテリメガネといった感じのローブを身に纏った男が姿を現した。
「……サディス! 助けてくれ!」
「騒ぐなビシュー。助けにきたのだからな。いと高き十柱の方のお一人が御帰還されたのだ。我らが欠けるわけには、いくまい……さてと、引かせてもらえると、ありがたいのだが……」
「黙って引かせるというのはあるまいよ」
「こちらは、急いでいるのだが……では仕方がない」
サディスが本を取り出すと紙吹雪が舞うと百体のワイバーンが空を覆う。
「これで引かせてもらえるかな?」
「……いいだろう。その前に名乗ったらどうだ? 貴様の名前で手打ちにしてやろう」
「ふふふ、面白いヒュームだ。いいだろう。その勇気に敬意を評して、名乗ろう。リジューレ二十二神将の首座、断罪のサディス。再び相まみえるのを楽しみにしているよヒューム」
「その時は、貴様の首が落ちているかもしれぬがな」
笑い声と共にワイバーンも魔物の軍勢が影に溶けて消えるのであった。
「さてと、では、あちらとの交渉もしなければならないか……ヤレヤレ。手札が足りぬが何とかするしかあるまい」
まだ、戦いは序章でしかないと思う城一であった。
――常闇の神城・フィセートロ
朽ちた廃城。
虚飾の残滓。
兵達の夢の跡。
それが今のフィセートロ城でしかなかった。
『我の帰還である』
その声と城内へと短髪で顔に奇妙な文様のような痣をもつ美丈夫が、降臨すると一気に城が再構築され、真新しい真紅の城へと姿を変える。
「「「偉大なる御柱『レイノ』様、御帰還。『レイノ』様、御帰還」」」
その場に、集っていた知識ある者たちは声高らかに唱和し、獣たちは歓喜の遠吠えを揚げて喜びを最大限へと現した。
「よくぞ帰還してくれたレイノ」
「クククク、『サヴドゥリア』久しいな」
出迎えたのモノクルを身に着けた老紳士ではあるが顔にレイノと同じく奇妙な痣が浮かんでいた。
「あぁ、まったくだ。私以外の九柱と、あの御方が、忌々しい封印されて十年程度とはいえ、我々の計画が大きく狂ってしまった」
「良いではないか、それでなくては、ゲームが楽しめぬ」
「言うてくれる。しかし、貴殿が封印から外れたことで、他の者たちも帰還するであろう」
「それは楽しみだ」
「くれぐれも迂闊に動く出ないぞ」
「あぁ、今日は機嫌がいいから、貴様のいう事を聞いておこう。あぁ…それと向こう側で面白き者たちと戦ったのだが……」
「それは興味深い。まぁ、今宵は共の語明かすとしようではないか。酒もよういさせてるのでな」
「ククク、久しぶりの酒か悪くないな」
邪神たちの胎動も始まったばかりであった。
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