【十五階層四区画】シルドフィルの闇森での奮闘
~逃走劇~
暗闇の森に響くは打撃音と激しく揺れる木の音だけが響いていた。
「人間にしてはやるな。だが、パワーがたりない。そんな貧弱な攻撃じゃ俺は倒せないぜ人間」
何度の打ち合いの後に勝ち誇ったように人狼は攻めてくる。
(むぅ。キメラスタイル使い過ぎてリキャスト中で《ビースト》は使えないし~《ワービースト》も金獅子使ったから、まだ使えないし~)
「悪いが、終わらせてもらうぜ!」
勢いをつけてトドメと言わんばかりに爪を振り下ろしてくる。それに対して一芽は、迎え撃つように構えをとると腕を絡める様にして受け流し投げ飛ばした。
「ぬお!?」
「『螺旋転象』」
受け身が取れずに地面に激突した狼男の腹部へと追撃へと一芽は体を回転を加えながら跳躍する。
「『螺旋飛燕脚』」
「ぐぼっ」
反動を利用して宙返りを決めながら見事に着地する一芽。
「まだやるの~?」
「げほっげほっ……」
「チュ~チュッチュッ。これは僥倖は、まさかあの鮮血の守護者と呼ばれたヴェルフェスが、まさか人間の小娘にやられているとはチュウチュッチュ」
暗闇から姿を現したのは1メートルほどの大きさの二足歩行のネズミであった。
「えっ…たって喋るネズミ!?」
「失礼でちゅ! 吾輩は誇り高いラットマンのレオンハルトでチュ」
「ほへー」
「はぁはぁ……お前ら組んでるんじゃ」
「こんな人間しらないでちゅ。さて、それはそれとして、コレは用意してくる意味がなかったでちゅね」
手を挙げると3体のホブゴブリンが姿を現すと一体のホブゴブリンが鎖に縛りあげた少女を持ち上げた。
「チュウチュッチュッ」
「ごめん……ヴェルつかまっちゃった……」
「お嬢!!」
「そこのお前も動くじゃないチュ。動いたらこの子を……」
そう言い切るよりも先に事態は動いた。
「よくわからないけどー。女の子を人質にするなんて悪人のすることだよーねずみくん。だからお仕置きするしー」
一芽は一瞬で少女を捉えていたホブゴブリンの頭と両腕を切り落とし少女を抱きかかえていた。
「チュゥゥゥゥウ!? ホブゴブリンそいつを叩き潰すでちゅ」
「ふぅぅぅ…あーし。怒ってるんだからね。《ワービースト・黒獅子》」
怒りでスキルのリキャストタイムが全てリセットされスキルが全て再使用可能になっていた。
「チュゥゥ、お前獣人なのかあぁぁ!?」
「違うしー」
そういいながらホブゴブリン二体の頭を潰した。
「はい、受け取るし~」
「お、おう」
「チュッチュウ!? 待つっチョ」
狼男は少女を受け取ると走り出した一芽を追いかけた。
「で、これからどうするんだ」
「まずは、調っチと合流するしー。周りにゴブリンとか、コボルドとか一杯かこまれてるしー」
「ちっ、あのネズミめ多分、召喚系のアイテム使いやがったな」
「そこら辺の詳しい事情は後で聞くから、ここからを突破するしー」
「それで、そのシラベッチてヤツなら何とかできるのか?」
「うーん、数相手なら美穂っちだけど、距離的なら調ッチのほうが近いし~」
「あー、あの男のことか」
コボルドとゴブリンが道中立ちふさがったがスキルが使用できるようになった一芽の敵ではなくあっさりと蹴散らしていく。
「調ッち! 敵一杯! 狼さんとは共闘!」
「了。ということですけど?」
「はぁはぁ……状況は悪いみたいですね」
「そうでもねぇぜ。ベンドの爺さん、こいつらは連中とは無関係らしい」
「あーこの状況だと説明とか、難しいし、信頼してもらえるかとかわからないから切り抜けてからということで」
「クンクン…美穂ッちの周りに血の匂いが増えてるー」
慌てて美穂のもとにかけよると、あたり一面血の海だった。
「ヒャッハー、オラオラオラ【血狂イノ禁断ノ果実】」
血の海から伸びた杭がゴブリン、コボルドを貫きあたり一面、ゴブリンやコボルドの串刺しが広がっていた。
「美穂ッチ、斬り抜けて脱出するしー!」
「ヒャッハー、了解だぜ!」
ちなみに小脇には気絶したメイドを抱きかかえていた。
「チュゥゥゥ、ミ、ミノタウロス奴らを止めろ!」
「ブモォォォォ」
離脱しようとする一行に立ちふさがるように牛頭の巨人が大斧を振り回すが…
「ミノタウロスって……」
「あぁもうめんどいし!」
「ヒャッハー! 【飛ビ血鎌】」
美穂が血の刃を飛ばしミノタウロスの両腕を切り落とし、一芽が手刀で一閃。ミノタウロスを両断する。
「チュゥゥゥ、ミノタウロスが一撃でチュゥゥゥゥ」
ホブゴブリンの肩に乗って追いかけてきたラットマンのラインハルトをみると
「えっ、喋るネズミ!?」
「詳しい事は後で話すし~とりあえず調ッち」
「あいよ《イリュージョン・ミスト》」
調は深い霧の魔法を放ちあたり一面の視界を奪い全員で逃走を開始した。
「チュウこんな霧で……て、ヘビヘビヘビ!?」
「悪いねネズミ君。そいつは幻惑の霧なんだよ。じゃーな」
こうして、一芽とひょんなことで争う事になった一団は共に逃げるのことになるのであった。
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