【十四階層十六区画】レイドバトル その16
~終息~
異形と化したビビュラーバに理性が失われたのか、でたらめに大蛇となった両腕を振ります。
さらに、やっかいなのは、蛇から伸びた舌先が蛇になるという不気味な異形となっている。
「まるでマトリョシカですね【竹串】」
輝美が放った竹串が蛇の口を縫い付けるように串刺しにする。
「いくぜ崇高」
「解ったであります」
「【刃雷轟閃・肆式】刀雷」
雷の波紋が蛇の動きを0.02秒程止める。
「破!」
その隙間の時間に崇高の放たった矢がビビュラーバの眼前に迫るが、間一髪と舌で矢を砕くだが、その矢じりから一枚の硬貨が飛びだし宙に舞う。
「《チェンジリング》」
「!?」
錬治は硬貨と自分の位置を入れ替えると刀を構え気合一閃。
「【刃雷轟閃・参式】千秋烙」
雷の刃が降り注ぎ焼き切る。
「佐江!」
「かしこまりました」
今度は佐江と場所を入れ替わりと眼前にて鉄扇を振るい殴打する。
「連武『紫陽花』」
戦いは完全に錬治たちのペースとなっていた。
即席のチームワークは徐々に精度が上がり、頑強な肉体が徐々に崩壊していくさまにビビュラーバに残った僅かな理性が死という消滅のときを実感し凶行へと駆り立てた。
(消える。消える私が消える。いやだ。私はあのお方の末席に加えていただいたのに……己、己、この世界の神め……いや、人間め! ただで消滅させられてなるものか……こうなったら……)
――もはや消える命。
――ならば全てを燃やし尽くそう……
「なんかヤベェ気がする」
「そうであります。魔力が高まっているでありますよ」
「これは…否定できません。否定してもきりがなく」
ビビュラーバはがむしゃらに腕を振り回し血を飛ばしながら無様にのたうちながら回りながらブツブツと何か聞きなれない呪文を唱え続けている。
(クククク……この世界の神よ……目にモノみせてくれる)
「錬治くん、この血の跡は!?」
「やられましたね」
「こいつを狙っていたのかよ!」
飛び散った血で描かれた床も壁も天井も利用されて描かれた立体魔法陣。それに気が付いたときには既に遅かったようである。
「はぁはぁ……これに気づけるなんてなんて……あぁ……あぁ…侮り過ぎましたね………本当に本当に口惜しい………私の手で殺して差し上げたかったのに…………それもできないから最期の嫌がらせだけはさせてもらいますヨ」
――ディメンション・ホール――
全てを捧げて紡いだビビュラーバの最期の呪文。
八岐大蛇を核にした周囲1キロメートルをブラックホールが出現し、錬治たちをはじめ。様々なモノを呑み込み、そして消失することで、後に八岐大蛇事変と呼ばれる事件は収束するのであった。
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