【一階層十五区画】ダンジョン学
今回は日常の授業風景です。
日本ダンジョン戦記【一階層十五区画】ダンジョン学
二学期のレベリングレクリエーションを終えると、三年生の二学期の授業にダンジョン学が追加される。
このダンジョン学は、日本とアメリカがリードしているといえる。そもそも日本は世界最多のダンジョン保有国。国土面積に対しての存在数が異常というレベルではある。到達階数では、アメリカには負けてはいるがそれでも日本はその後を追っている形になっている。
内容は多岐にわたる。ダンジョンの規模、特徴、共通点に始まり、モンスターの種類や罠などを学ぶ。なぜ二学期からとなるかというと、下手に知識を身に着けて間違っても高いレベルのダンジョンに挑むのを抑止する目的と実体験を経験してから知識の習得の重要性を身に着けてから行われる。
「ダンジョンにおいては、通常は直進は最大でも50m~100mでありそれ以上の直進の場合は罠の可能性が大きい」
とはいえ、やはり少々退屈でもあるのは他の授業とは変わらない。
「では、直進が罠の場合どのような罠が考えられるか? 加賀、答えてみろ」
「えっと、幻術によるループとか?」
「ほう、悪くない発想だな。ダンジョンの罠というのはどこかに綻びがある。まるで解かれる事が前提のパズルのようなものだ。ちなみに他にもポピュラーなのはムービングウォールだ。これは退路を塞ぐように隠し壁が動くものや直接壁で挟むように動く仕掛けだな。対処法は左右だけでなく上下を確認することを忘れないこと。直進すれば出口とは限らないからな。それから落とし穴や吊り天井などの落下天井、アロースリットと呼ばれる壁の隙間から矢などが飛んでくる罠もある。さらにモンスターが落とし穴の中に潜んでいるパターンなどがある。ダンジョンにおいては直進でも油断しないようにすることだ」
ダンジョン学は、ダンジョンの危険だけでなく、実体験などによってほぼ毎年内容が、更新されるために教材はルーズリーフに閉じる形で毎回プリントとして渡される。
内容も多岐にわたり、例えば、武器や防具の簡易的な手入れの仕方や危険な行為。各地域のダンジョンの傾向、探索者協会の施設説明なども含まれていたりする。
また、犯罪行為や罰則などの指導、さらに簡易軽食の作り方など戦闘以外にも知っておくと便利な知識なども授業が行われる。
もちろん、座学だけではなく、装備の手入れや調理などのも実習も行われたりと、そっちは人気の授業である。ダンジョンに持ち込むシーズニングスパイスの配合研究などが、行われていたりする。
なにせ有名な探索者のシーズニングスパイスは人気が高くスーパーなどでも売られてはいる程で、日本の探索者の多くは、自分オリジナルのシーズニングスパイスレシピを所持しており、それを一食分ごとに小分けし単調になりがちなダンジョン内の食事の変化として楽しむのが普通である。
とはいえ、やはり調理技術の向上は探検者を目指すものにとっては必須といってもいい。コックのクラスを持っているものがいればいいが、選択するものが少ないクラスである。なにより基本的なことが、できなければクラス選択に表示されない。それに料理ができなければ不測の事態の時に困るしなにより、ダンジョン内で食料調達をしても調理できなければ意味がない。なので教えられる料理は豪快というか原始的とも言える単純な料理が多い。そのために味の変化がでるシーズニングスパイスが人気でもある。
人気のメニューとしては富貴鶏、ローストビーフ、カルトッチョがあげられる。これらは近年のダンジョン飯ブームの火付け役となったグループがダンジョン攻略に持ち込んだ調理用耐熱フィルムでの調理法が広く広まったことに起因している。なにせ基本的に具材をフィルムに入れて後は煮るか蒸し焼きにするだけで簡易オーブンとなるので人気商品として出回っている。
また、ダンジョンによる学校教育の変化が顕著だったのは体育の授業や格闘技系の部活動。実践的な武術指導などが行われ、受験の際にも実技試験として導入されいる高校も増えてきている。
そうしたことをしながら高校受験へと準備を進めるのが今や日本の中学生の姿である。
富貴鶏…鶏一羽を蓮などで包んで泥で固めて蒸し焼きにする料理。乞食鶏ともいい、昔乞食が視察していた皇帝に献上したところその美味さに褒賞を与えたという逸話がある料理
カルトッチョ…魚介類を野菜とオリーブオイル、バターと一緒に紙で包んでオーブンで焼き上げた料理。魚介類の水分の影響で紙は燃えないそうです。日本の紙鍋と同じ原理。




