【十四階層十一区画】レイドバトル その11
~刀雷と千秋烙~
八岐大蛇の体内は、ダンジョンといって差し支えなかった。生き物でありながら生き物でないそんな印象を抱かずにはいられない奇妙な空間。
そんな中を一人、尾張錬治は駆け抜ける。
襲い掛かるモンスターは、蛇、蛇、蛇。
悍ましく、恐ろしく、普通の人なら歩みを止めてしまうだろう蛇の大軍勢。
だが、錬治は止まらない。口角を少し上げながら蛇の河をするりと抜け、奥へ奥へと突きすすむ。
尾張錬治の真骨頂は、本来であればその特性から圧倒的なアドバンテージである《チェンジリング》をオマケ扱いする、戦闘センスからなる戦闘技術。もしも、ダンジョンがこの世界に誕生しなければ、本来なら無用の長物となっていたであろう。それは、この世界、この時代、この事態において開花していく、鋭くとがれその切れ味は…
一 刀 両 断
数多の敵を切り裂きながら
閃光を描き
蛇の屍の山が築かれていく。
「そろそろかなぁ…ここがダンジョンなら」
錬治に向けて細いといっても象の鼻程の太さはあるが蛇三匹程襲い掛かる。
「あぶねぇ」
切り払い後方に軽く3メートル程跳躍し襲い掛かったてきたほうを見つめる。
「やっぱりダンジョンだよな。ボスがいるんなら」
眼前にいたのは蛇が巻き付き筋線維すらも蛇でできたのような全長6メートルの巨人。
「なんかヤバェ感じがするねぇ」
そういいながら一直線に突っ込み刀を振り下ろそうとすかるが、無数の蛇が襲い掛かりそれを切り払いながら再び距離を取る。
「【雷身】…さてと、あの技を使うかね」
そういい鞘を力強く掴む。
「こいつは変わり技なんだがな【刃雷轟閃・肆式】刀雷」
キィーン
という甲高い鍔なりと共に電光が音にのり、蛇の巨人を襲う。
刃雷轟閃・肆式『刀雷』は納刀技。高速納刀し鍔なりを起因に衝撃波を発生させ、さらに鞘に流した電と刀の蓄電をスパークさせることで相手を攻撃する攻撃的納刀を可能にした錬治のたどり着いた五つの技の一つである。
もっともこの技自体には、殺傷能力は一番低い。だが、衝撃を受けた巨人の蛇は痙攣して動きをとめる。
この五式は他の四つとの繋ぎ技。すなわち次の攻撃を確実に当てる為の布石の技なのである。
「技名に統一感て大事だよな。というわけで名前改め【刃雷轟閃・一式】春雷」
腰だめからの抜刀、雷光が走り片足を切り落とし、そのまま加速し頭上を飛びこえてトンボの構えを取る。
「【刃雷轟閃・参式】千秋烙」
振り下ろされた刃と共に降り注ぐ数多の雷の刃が蛇の巨人を打ち続ける。
「どんなにタフでもよぉ。死ぬまで殴れば死ぬだろ」
雷の刃に無数に打たれ巨人は膝をつきやがて光の塵へと変わり果てると、錬治がポケットに入れていた探検者カードが光りだすのであった。
評価や感想、ご意見など時間がありましたらどうかお願いいたします。




