【十四階層九区画】レイドバトル その9
~~
城一は天井に乗りながらキューブバギーは大蛇の海を駆け抜ける。
「それにしても、なんやねんこの八岐大蛇。おかしいやろ…」
「そうですか?」
「デカさもやけど、この蛇どんだけ沸いて来るちゅうはなしや」
「ハハハ、だよねぇ。まるでダンジョンみたい」
充希の何気ない一言に全員が一瞬固まる。
「ぼたん」
「えぇ、【オモイカネ】応えて。この八岐大蛇はダンジョンなの?」
――是。大量の迷宮核を利用して強制的に統合し作られた為に迷宮の特性をもつ依り代
「もしかして、完全に倒す方法は」
――内部にある迷宮核を破壊する必要有。
「……つまり或る程度削れば、ダンジョン攻略が楽になると……」
――是
「美千代さん、急いで下さい。攻略となると、錬治さんと光太郎さんが適任ですね」
「せやな。けど、外のほうもおる蛇も狩らなあかんから」
「そちらは源治さん、一芽さんと美穂さんがいいと思います」
「了解や。とばすでぇぇぇ」
八岐大蛇討伐へと向けて驀進するのであった。
激戦続く、八岐大蛇のふもとでは大斧を振るう光太郎とチェーンソーを振り回す源治が背中合わせに戦っていた。
「……リキャストが終了した」
「ケケケ、ようやくかよ。なら、頼むぜ。さっきのアレが来たらたまったもんじゃねぇ」
「……あぁ…最初から、全力だ。【サモン・ガーディアン】ガルド!シルドラン!【フュージョン・カスタマイズ】銀竜合体! 【ドラガルド】」
銀色の鎧を身に纏った巨人がその体と同じほど巨大な剣――【ドラグスレイヤー】を手に一番高い位置にある八岐大蛇の首を狙う。
大蛇を降らしてくるが、それを切り落としながら、高度をどんどんとあげる。
「もらった……」
剣を振ろうと構えた瞬間。ドンッと重たい衝撃が襲い地面へと高速で墜落していく。
「ぐ……【ロケット】」
ロケットの推進力で衝撃を緩和するがそれでも激突はさけられず背中を強かに打つことになった。
「なにやっとんねん!」
「その声は……美千代か?」
聞こえた声に反応してあたりを見回すと、よく見知った顔が目に入り、さらに確認すると柔らかいキューブが緩衝材として地面に敷き詰められていた。
「ふむ……強敵か?」
城一の問いに源治は素直に応える。
「……あぁ、だがまだ戦える」
ドラガルドを操作して巨体を立たせるが膝が落ちる。
「あぁ、もう、うちも力かしたる。えぇな」
「……わかった」
「ほな行くで!【ボックス・」
「……カスタマイズ】」
操縦部分が複座になり後部に美千代が座り、拳が硬い箱で覆われると、再び空に飛びあがり再び大蛇の雨が襲い掛かるが、その動きが緩慢に見える。
(なんだ…これは?)
――ヘイ、ボーイ。イイカイ?
(なだこの声は?)
――ヨク。パンチミル。ヨケテ、オモイノヲズドンダ。アトハ、アイテタオレルマデ、ナグレバオッケーヨ。グッドラック
(? 良く解らんが……解った)
空を滑るように駆けながら降り出す拳は大蛇の頭部を吹き飛ばす。そして、足場は美千代が作り出し姿勢が安定させる。更に、死角からの攻撃には、美千代がその攻撃を防ぎ源治が、殴り飛ばす。
そして、八岐大蛇の頭一つに到着すると両腕を揃えて上体をユラユラと揺らし始める。
「【ドラガルド・ボックス・デンプシー・ロール】……」
伝説のボクサー。ジャック・デンプシーの編み出しインファイトの完成形の一つ、高速のウィービングによる勢いを付けた連続フックを八岐大蛇に浴びせ続ける。
本来なら拳が砕けるであろう威力になろうともボックスは砕けない。さらに防御面を美千代が担当することで源治の意識は攻撃に集中し、その絨毯爆撃の如き連打音が響き続けるのであった。
評価や感想、ご意見など時間がありましたらどうかお願いいたします。




