【十四区画七区画】レイドバトル その7
~集う力~
大蛇は裂いても砕いても完全に消滅させるにはなかなか至らない。
「ちっ、数あいてにすんなはぁ、あいつらのほうが向いてのに」
「錬治……手を動かす」
「幸、そういえば苦無は?」
「ここに来るまでに使い切った……忍法で頑張る氷遁【吹雪舞】」
冷気の風により大蛇の一部分を凍らせその部分を削るように戦う。
大蛇にダメージは与えているが、錬治、銀之助、光太郎の三人がメインで、相馬や源治の攻撃力ですらたりず、徐々にじり貧になってきているのが実情である。
「【流星弓】であります」
広域に矢の雨が降り注ぐ
『氷狐がコンとなきゃ小声で凍え候』
「<アイスニードル>っス」
広域に季節外れの雪がふり、大蛇の表面に薄く凍り付き、かと思えば飛来した氷の針が大蛇の眼球を穿つ。
「崇高、調、次郎」
援軍として三人が駆け付ける。
「ういっス。錬治っち伝令とか状況説明は自分がするッス。崇高っちも心友も広域攻撃はお手の物っスからそっちに集中するっスよ」
「で、状況は?」
「とりあえず、少しずつ探検者が集まってきてるッス。どうやらこの本体から離れると徐々に力が弱まるみたいで一定距離無はなれた場所の大蛇は少しずつ倒されてるっス」
「そいつは、いいニュースだな」
「解ったことは、あの大蛇を倒すと八岐大蛇はほんの少しだけ縮んでいってるみたいっス0.001%くらいっスけど」
喜ばしいニュースに錬治の口角が上がる。
「崇高か?」
「そうッス。崇高っちが計ったら縮んでるのがわかったス」
「あいつ測量士としても食っていけるな」
「確かにっス」
軽口をたたき合いながらも、手は止まらず大蛇の切り裂いていく。
「それにしてもここまでよく来れたな」
「去年の甲子園の優勝校、覚えてるっスか?」
「銀城高校だっけか?」
「そうっス。その人たちが協力して道を切り開いてくれたッス」
「なるほど、あの高校の主将とかならできそうだ。今度、手合わせ願えねぇかな」
楽しみが増えたといわんばかりに更に嬉しそうに大蛇を二匹切り倒す。
「あと、スキルが強化されたり覚醒して数段階上がっている人が増えているみたいっス」
「光太郎みたいにか?」
「そうっス変な声が聞こえたてのは共通しているみたいっスけどね」
「状況はわかった。つまり斬ればいいんだな?」
「そうっスね……錬治っちはそれでいいっス」
「極めて了解と。なら、暴れるとするか…さてと、次郎、調に伝えろ『仮面外して、本気だせ』てな。あと、お前も本気みせろよ。いつも人まねして誤魔化してないでな」
それだけ言うと、再び大蛇の群れの中へと突撃していった。
「はぁ…やっぱりバレてたんスか……えっと、大隅さんだったすかね? 俺っちの苦無の予備があるから渡しておくすっす」
「……助かる」
幸も苦無を受け取り錬治の後を追っていった。
「はぁ、本当に嫌になっるスよ」
「どうしたら次郎」
「あぁ…心友、錬治っちから伝言っス『仮面を外して戦え』て」
「はぁ? いや、これオレのスキルだし」
「じゃなくて本気見せろってことらしいッスよ。おれっちも人まねで戦うの止めろて言われたっスから」
「……仕方ないか。こんな状況じゃ。あれもやるぞ。出し惜しみなしの本気モードで」
「了解っス」
「「【ペルソナ・ナイツ】」」
二人が唱和すると、【フェイスレス】以外の【ナイトバロン】【鉄鬼】【スカル】【フォックス】【インセクト】の仮面をつけた次郎の分身が姿を現す。
「そんじゃそっちは任せたからな」
「任せるっスよ心友」
仮面をつけることなく調は迫っていた大蛇の手刀で首を切り落とし、その後ろから鎌首をあげた大蛇の頭を踏み砕いた。
そして、仮面の軍団を引き連れた次郎はするするり蛇の隙間を抜けるたびに大蛇は大蛇だったものに変わっていく、音もなくただただ淡々と淀みなく蛇を処理し、仮面の軍団は際限なく大蛇を蹂躙していく。
調も次郎は、なんでもできてしまう人間だった。
天才という規格の外にいる人外じみた才能。そんな呪いのような才能をもった二人は、己を偽り、片方は他者を真似て、片方は心に仮面を被り隠し続けた本性。それら全てを解き放った。解き放つことができた。
なにせ今は自分のような埒外の化け物のような友人たちの中にいるのだから隠すことすらバカバカしいのだから……
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