【十四階層五区画】レイドバトル その5
~それはあまりにも巨大だった~
「ケケケケ、源治。あの閃光は」
「……派手にやっているな。急ぐぞ」
源治はアクセルを強め更に加速する。
「のきぃや蛇ども」
光太郎は手に持った大斧『巨人の手斧』を振り回し蛇の首を切り落とす、その遠心力でスピンしそうになる車体を源治はさらに加速させ、蛇の隙間を抜けていく。
「……タイヤの交換代…あとで請求するからな……」
「ハハハハハ、いいぜぇ。ついでにオイルの交換代金もだしてやんよ」
「そうか【ロケット】」
「うおっ!?」
加速させ蛇の胴体をジャンプ台にして空を駆けて飛躍的に進むのだった。
さて、錬治の大技で敵陣に大穴を穿った錬治たちは八岐大蛇への距離への詰めた。
故に絶望する。
当然だ。目の前に存在する馬鹿げた現実。
大蛇とて馬鹿げたサイズなのだ。それを前にして戦えていた彼ら彼女らは異常ともいえる。その異常性をもってしても躊躇するであろう現実。
大型トレイラーに正面から衝突するようなことをするものはいない。それが普通だ。その大型トレイラーを丸のみする大蛇がミミズにすら思え、もはや地形といっていい存在。
それが目の前にして絶望しない人間はいない。
そう絶望しないはずはないのだが……
「見えてきたな銀、とりあえず斬るぞ」
「おうよ」
「いや、君たちおかしいでしょ? えっと、どれにしようかな?」
「とりあえず殴るし」
「ヒャッハー、斬る斬る斬る」
「刺殺、爆殺、大喝采ですね。鏖にしましょうそうしましょう」
元気溌剌でというか、まるで人気アトラクションを目の前にした子どものような反応だったが、幸か不幸かツッコミを入れるものが居なかった。
だが、八岐大蛇は飢えていた分体を生み出し、エサを確保しようと放ったのにまともに食えたエサは少なく。石ころや草木などを食んでも味気なく。ただただ飢えてしかたがない。
目の前で騒ぐ子ネズミでも少しは足しになるだろうと、頭一つ動かしそれで終わり。空腹と眠気に支配された八つの頭は適当に頭一つ動かし舌を獲物へと伸ばした瞬間。激痛。激痛。どれほどの時味わっていなかった激痛が、頭一つを覚醒させる。
「うぉ、速かったな」
「あぁ、まったくなぁ」
舌の先端が2m程切り落とされていた。
怒 怒 怒
八岐大蛇は怒った。怒らずにはいられなかった故に、屠らんと鎌首をあげて眼下の子虫を睨みつける。
「【ビッグドリル】」
その頭上に何かが突き刺さったと思うとギュイィィィンという音とともに激痛が走る。
「ケケケケケ、デカすぎだろけどよ! デカすぎだからぶった切れないなんて事はねえんだよ《トレイター》」
ズン――
何かが首を通り抜けてズルリと落ちズドーンと地響きを鳴らして地面に落下した。
「よう、待たせたな」
「……デカイな……」
落下した八岐大蛇の頭部には仏頂面の源治とドヤ顔の光太郎がたっているのであった。
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