【十三階層二十八区画】修学旅行 その25
~種明かし~
佐江は苦戦を強いられていた。
「不思議よね。不思議よね? 種を明かせば簡単簡単。わたしのスキルは《ポジティブ》事象を肯定するスキルよ」
「そんな都合の……いえ、それ以前にあなたのスキルは《オラクル》だったはずです」
「それは器の、この子スキルでしょ? 私は『ビビュラーバ』なのだから別のスキルを使えてもおかしくないでしょ?」
ケラケラと笑いながら安武マリいや、ビビュラーバは今までの天真爛漫な笑みではなく悪意に歪んだ笑みを浮かべた。
「さてさて、これからが忙しいから、そろそろ終わりにしましょうね? 円武・弧月散水」
鋭い水の刃が佐江へと迫る。
「くっ」
本来なら《ネガティブ》で打ち消しているが《ポジティブ》の影響で打ち消けせず水の刃が佐江を切り裂き、最後の刃が佐江の顔へと迫る。
「【キューブ・ウォール】」
風の刃を壁が阻み佐江を庇った。
「これは…美千代さん」
「間におうてよかった」
佐江を庇う様に美千代が前に立つ
「ようも、うちの友達をいじめてくれたやないか。佐江はんと因縁あるみたいやけど、うちの戦う理由は友達をいじめてくれただけで十分や」
「アラアラ、いいお友達だこと…それと気づいてますよ。円武・疾風怒闘」
背後から拳を振り下ろしていた二体の甲冑を殴り飛ばした。
「一瞬でサーヴァントが!? 今のサーヴァントはレベル20の格闘職だったのに」
その後方に控えていたぼたんは驚愕する。
「あら? あなた面白いモノを持っているわね? まぁ使いこなせてないみたいだけど……」
「だったら〈ウォーターバレット〉〈サンダーボルト〉」
指に輝く五連の指輪から放たれら水と雷の弾丸。しかし、それもあっさりと扇で打ち払われてしまうが、その間に、佐江たちの元に駆け寄る。
「クスクス、楽しくなってきたのですが時間もありません。信者のみなさーん最後の儀式のときですよ」
ビビュラーバの周りを取り囲むように男女問わずスクラムを組み肉の壁になる。
「クスクス、さぁ始めましょう」
身に纏っていたローブを脱ぎ捨てるとビビッドカラーのアイドルのような衣装があらわになり、中空に浮かび上がる。
その姿に全員の意識が吹き飛ぶ。
「さぁ、終わらせしましょう。始めましょう」
――掛けまくも 畏みもうす
「これは…祝詞を一体なにいをしようと」
「ホワイトブック、答えて何が起きるの」
ぼたんの手に持つホワイトブックには
―『ジャシンコウリン』-
の文字が浮かび上がる。
――恐み恐み白さく
「止めないと」
「この人たちが邪魔すぎなんや、他のみんなも足止めされとって…あぁ、こんなときに錬治はんがいてくれたら」
防御に専念し肉の壁となった信者たちを払いのけることは難しく、またビビュラーバには守りの魔法がかけられており、崇高が遠方よりいる矢や充希のカードは逸れて当たらない。
――狭間に揺蕩う荒ぶる神
――水鏡を越え来たりて贄を食め
――凶ツ神その御身を奉らん
空に巨大な輪が現れ、雨が降り出すが輪の中に水が溜まっていく。
「もう直ぐね。もう直ぐね」
ビビュラーバは楽しそうに空を見上げていく。
「一体なにをしたのですか!」
「あぁ聞いてくれるのね。聞いてくれるのね。そうねぇこの状況がわたしの描いた絵なのなの」
声を荒げる佐江に、コロコロと楽しそうに笑うビビュラーバ。
「光の柱を縁を怨で繋いだ環が、あの環。きっときっとあの光の柱に向かった人たちは奇縁に引かれて、都合よく運命的な再会とかしてるかもね」
少し遠い目を光の柱があった方向へとながす。
「まさか…光の柱を破壊させたのは!?」
「クスクス…えぇ破壊されなくても良かったけど、無事に破壊されてよかったわ。なにせこの場に七カ所のダンジョンのエネルギーを集めるのが目的だったんですもの」
ルール説明をされた時点で気が付くべきだった致命的なミス。光の柱を破壊すれば事件が解決するという解りやすい解答が佐江もぼたんも城一も他の面々の思考を停止させていた。
「それにこの国の言葉も素晴らしかった。まさかここまで霊的な言葉を扱う国があるなんて…こちらに来て正解だった…もっともこの世界の神の力が強大だったのは誤算だけど……」
「霊的な言葉…言霊?」
「えぇそうそう。言霊の力。さぁ、刮目してみなさい神話の凶ツ神が降臨するわ」
その言葉どおりに空に浮かぶ水鏡が割れその姿が見える。
「境界が割れた、割れた」
砕けた水鏡が反射して、その姿は見えないが浮かび上がるの16の鬼灯。
「水鏡…み、かが、み…七つ…を一つ…八? ま、まさか貴女が呼び出したものは!」
「答えが降りてこられるわよ」
その巨大なジャシンを目にした全ての人々が声を失うのだった。
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