【十三階層二十五区画】修学旅行 その22
~矜持~
長身で長髪を軽く結んだ男。怠釈は槍を構えながらも雰囲気は比較的軽く友人と雑談でもするかのように語りだす。
「あー、私としましては引いていただけると、助かるんですけどネ。どうでス? 面倒でショ?」
「アハハハ、魅力的だけどムリかな僕、君たちのこと嫌いだからね<バブルボム>」
シャボンの泡が周りを取りかこむ。
「おや? これは何ですかね?」
「それはね。こうするんだよ【スラッシュカード】」
投げた複数のカードが泡を切り裂くと爆発を巻き起こして刃としたカードが迫る。
「危ないですね《スロウス》」
爆発と刃が届くかと思われた瞬間……不自然に動きが緩慢になると怠釈の姿が消えたかとおもうと動きが戻り怠釈が居た場所をむなしく通り抜ける。
「むっうぅぅ?? これって…ユニークスキル?」
「えぇ、解説するのは面倒なのでしませんが……どうします?」
「そっか、まっ、いっか、なら僕もスキルを使って戦わせてもらうね【スラッシュカード】」
再びカードを投げる再び白刃の刃と化した13枚のカードが怠釈に迫る。だが、余裕綽々と槍を軽く振るい。
「無駄な事を《スロウス》」
先ほどの繰り返しとばかりに槍が振られた空間にカードが到達するとその動きが緩慢になる12枚は……
「なっ!?」
速度を変えなかった一枚は鋭く、予想外の速度で飛来したために反応が遅れた怠釈の右太ももを浅く切り裂く。
「バカな!?」
「一応、教えてあげるよ。僕のスキルは≪アンチェイン≫。僕は僕の意志にのみ縛られる」
どうやら怠釈は自分にとって相性最悪の相手だと直感するのであった。
充希が爆発を起こしたころ勇雄は修道女『征喰』相手に斧を振るっていたが正直、不気味でしかなかった。なぜなら征喰は一切の攻撃を避けない。それどころか、合えて受けている節さへある。
「痛いですね。勇者なのにいたいけな女性にコンナことするなんて、酷くて泣いてしまいそうです」
「全然、痛そうに見えないし平気そうですけど?」
「やせ我慢ですよ。それにしても噂以上に本物は可愛らしい方ですね。奪妬がこの場にいたのなら嫉妬に狂っていましたね」
楽しそうに笑いながらも不気味でしかない。
「むー、困ったね。けど、完全無敵なんてことはあるはずないから、とりあえず全力で殴るかな。錬治君ならきっとそうするよね」
勇雄は、連続で斧を振るうが、斧を受けても平然としている。
「そろそろ攻撃しましょうか?」
そういって放った右正拳突きが、頑丈なはずの勇雄の左わき腹のあたりの装甲を破壊した。
「【リバース・ブラスト】です」
にこやかに笑いながらも再び構えをとる征喰を相手に勇雄は再び攻撃を開始するのであった。
暴聖と呼ばれた巨漢を相手に城一は刃引きされた剣を振るい、それを暴聖は小手で払い飛ばし、態勢を崩したところに前蹴りを放つが城一は剣を捨ててバク転で回避する。
「ふむ、やるではないカァ~ワレの相手として認めてやってもよいゾォ~」
「ふん、貴様に認められなくてもいいのだがな…」
「クックックッ。では、こういう趣向はどうだ?【このモノを討伐せよ】」
その言葉に、周りで跪いていた探検者や避難していた人々が城一を襲い掛かろうとしたが…
「《ドミニオン》『自らの意思で立ち向かえ、汝らは支配されるものでなし』」
暴聖の支配力と城一の支配力がぶつかり合い効果が打ち消される。
「貴様に言っておくぞ」
「ほうぅ~きいてやるゾォ~」
「王とは、支配者とは脅威から守るものだ。その我の矜持にかけて貴様の好きにはさせぬよ」
「相容れぬなぁ~。支配とは暴力。力による強制ゾォ~そして、ワレの意志にぃ~従うべきなのだぁ~}
武骨な両手剣を手にし城一へと振り下ろされた瞬間、城一の前に一人躍り出た。
「城一さんおそくなって申し訳ございません。非戦闘員の避難を完了いたしました」
「うむ、ご苦労。岬。では、次はこの痴れ者を討つぞ」
「はい」
駆けつけた岬と共に暴聖を倒すべく城一は再び剣を構えた。
激しい戦いをそれぞれ続けているなか…
梵貂は、影を使った転移アーツの【影渡】を仕掛けようと影から飛び出たタイミングでカウンターで佐江の鉄扇を顔面に受けて距離をとり、相手の動きを封じる【影縛り】を仕掛けるもあっさりと解除されたとおもった瞬間、いつの間にか間近に近づいていた佐江の鉄扇の連撃を受ける。
もちろん応戦しようとするが、捉えたとおもったはずの攻撃は外れ、逆に攻撃を受けるのは自分ばかり、まるで自分の全てが否定されているかのような錯覚にすら陥っていた。
「オ、オ前ハ、ナンナンダ…私ハ、十二聖ノ一人『梵貂』ナノニ…コンナ事…オカシイ」
「わたくしは、貴女を貴方達を否定するものです。思想も信念も力もスキルもアーツも全て全て否定してさしあげます【フェイト・セレクション】」
過程も駆け引きも一切合切を否定し佐江は梵貂をいとも容易く下すのであった。
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