【一階層十三区画】蜥蜴の巣
職業が決定です。
日本ダンジョン戦記 【一階層十三区画】蜥蜴の巣
二級ダンジョン「蜥蜴の巣」
三級ダンジョンとの違いは、まず、強さにある。三級と二級だとおよそ一階層から五階層までが1.2から1.5倍は同じ系統でも強さが違う。次にドロップ品だがそれも強さに比例して上質なものに変わっている。当然、この傾向は一級にもありそれが、難易度と報酬の差として現れている。このダンジョンはその名の通り蜥蜴系のモンスターが中心に蛇などの爬虫類系モンスターが出現するダンジョンである。
さて、難易度が上昇した二級ダンジョンではあるのだが…
「はぁぁぁぁ」
斬――
剣撃一閃のもとに3階層に生息する大型犬ほどの赤いトカゲ。レッドリザードを錬治は一撃のもとに切り伏せた。
錬治、剛、守里、幸のパーティーは、順調といっていいほど順調である。
幸。その探査能力は同レベルの斥候職とは頭一つどころか二つ、三つは上を言っている。
まず、アーツ【エコロケーション】。このアーツは、探査系アーツの一つで様はイルカやコウモリのように音による探知なのだが、さらに算術師の能力と併用して構造とさらにモンスターなどの位置を大まかに割り出している。そして、その情報をもとに進み的確にモンスターを見つけ、戦闘ではさりげなく苦無を投擲しけん制し、ゆるりと死角カバーし、さらにメンバーのコンディションも管理し、何気なく休憩を促し嫋やかにお茶を勧める。気遣いと気配りの淑女それが大隅幸という存在である。
次に、比較的常識的な枠である守里ではあるが、それでも彼女のステータスは高い分類になる。一般的な基準であれば、ステータス評価がBあれば優秀、Aで一流とされている。Sが一つでもあればもはや超一流の領域と言われている。つまり守里以外のメンバーのステータスが一般的とは逸脱しているだけである。そんな彼女の戦い方は非常に安定している。
その戦う姿はドイツ戦車ヘッツァーの如く、けん制や止めにインパクトショットでダメージを与え近づいてきたレッドリザードの攻撃は時に受け止め、時に逸らしそこにインパクトショットを撃ち込むという非常に安定した立ち回る。非常に優秀な固定砲台である。
そんな彼女の活躍を霞ませるのが、筋肉の塊というか圧倒的な存在感を発する剛である。ネタのようなクラス、ボディビルダー。しかし、その実態は恐ろしく有能、存在感をあげることにより敵をひきつけ更に自身に防御力を上昇させるバフをかけることによりもはや堅牢なる鋼の砦。レッドリザードの牙も皮膚にすら刺さらない。しかも、その防御力の硬度は格闘系のスキルでは攻撃力に加算され敵を蹂躙する。リザード系やスネーク系などの爬虫類型モンスターの鱗は硬く天然のスケイルメイルを纏っているようなものであり打撃が一般的には一番有効なのである。
そう、一般的には…その常識を無視するかのように斬撃による一撃のもと、スルりとレッドリザードを切り裂いているのが、この中での一番異常ともいえる錬治である。爬虫類型モンスターは前条のように硬い鱗そして何よりも密度の高い筋肉の塊が特徴のモンスターなのである。しかしそれを容易く斬るなど普通なら無理なのであるが正確に鱗の薄い所に刃を入れ筋線維にそって切り裂き致命傷を与えたり鱗の隙間に刃を通し鱗をそぎ落とし斬りつけるなど年不相応の技量をもってそれをやってのけている。
「やっぱりあんたおかしいわ」
「そうか? 多分銀も同じことできると思うぞ?」
当然と言えば当然というツッコミではあるのだが…
「幸も…おかしい…さっきカメレオンリザードが隠れていたのに…的確に苦無当ててた」
カメレオンリザード。その名の示す通り周りの色合いに体色を変化させて身を隠し奇襲してくる非常に厄介なモンスターなのだが…それをあっさりと発見し先制攻撃を仕掛けるのも確かに異常といってもいいレベルなのである。
「ところでそろそろレベルが上がってクラス選択が可能になったのでは?」
そう言われて、探検者カードを取り出し確認する錬治。
「えっと…おぉ、できるな」
表示されているクラスは以下の通り
・戦士
・剣士
・黒騎士
・狂戦士
・魔剣士
・侍
「…なんか物騒なのが多くないか?」
「当然ね」
「当然である」
「至極真っ当…」
弁護のしようがない。
「まぁ、いいか。選ぶの一択だし」
そして錬治のステータスは以下の通りに変化した。
尾張 錬治
レベル:10
クラス:侍
生命力 100/100
魔法力 100/100
[ステータス]
体力:A
攻撃:S
防御:C
敏捷:S
器用:A
感覚:A
魔力:E
精神:S
【スキル】
《チェンジリング》Lv1 《刀術・改》Lv1 《体術・剛》Lv3 《気配感知・改》Lv1
《軽業》Lv3 《跳躍》Lv4 《歩法》Lv4 《縮地》Lv1 《手入れ》Lv5
《直感》Lv5 《走り》Lv7 《抜刀術・改》Lv1 《インファイト》Lv1
《斬撃強化》Lv1
【魔法】
<コーティング> <クリイエイトウォーター>
【アーツ】
【ミスディレクション】【瞬閃・一式】
「幸、頼めるか?」
「判ったわ……【エコロケーション】……40m先に左曲がったところに一匹、大きさから推定レッドリザードね」
「ならちょっと行ってくる」
錬治は走り出しそれを止めるものはいない。
「みいぃつけたぁぁぁぁぁぁ」
レッドリザードは恐怖した。その人間に恐怖した。レッドリザードの本能にある人間はエサという認識。その認識を改めされるよな恐怖。生物的本能から怯え、逃走本能が神経に、筋肉に逃げろ逃げろと最大限のアラートを鳴らす。
「試すか【瞬閃・一式】隼斗」
スキル《縮地》それは一歩で最大速度へと到達しさらにレベル+4mの距離を瞬間で移動するスキルであり本来ならレベル20以降でもないかぎり出現しないスキルである。そして【瞬閃・一式】はスキル《縮地》《走り》《歩法》《抜刀術・改》が合わさったモノであり、それに加え《インファイト》は相手との距離が5m以内の場合攻撃力が上昇し、さらに《斬撃強化》のよる威力の増強それらが合わさった結果はレッドリザードの開きが出来上がった。
「うん、悪くないが…」
振り返えり自分が踏み込んだ後をみると地面が、かなりえぐられていた。
「すこし力が乗り切らなかったな」
不完全な形に発揮された技に若干落胆していた。
「ちなみにどれくらいの威力ですか?」
「そうだな。半分程度くらいじゃないか? というか音もなく背後にたつなよ」
「いいじゃない」
幸は昔からかくれんぼが異様に上手い。上手すぎて警察沙汰になったほどでありしかも普段から気を抜くと足音が消えてしまうのである。
「一応、レベリングレクレーションて最低ラインが10になれば後は自由だけどどうする?」
「…折角だからもう少し降りてもいい」
「我がシックスパックも降りるべきといっている」
約一名は少々意味不明だがとりあえず5階層を目指していくことになった。
侍のクラス効果は絶大で錬治のアタッカーとして役割が遺憾なく発揮された結果…
「これは虐殺ね」
「轢殺…」
「圧殺だな」
「ワハハハハハハハハハハ!」
斬る、切る、KILL!!!! ハイテンションで錬治が切り伏せていく、止まらない。止めらない。
そして…
「いつの間にか五階層に到着しましたな」
周りの目は冷ややかである。
「やり過ぎ」
「知らん」
さて、五階層に存在するボスモンスター。ブロンズリザード。青銅の鱗で覆われた牛よりも大きな蜥蜴である。
「さてと、殺るか」
「ではいくぞ<ライトアップ><フィジカルアップ>からのフロント・ラット・スプレッドの【ガードポーズ】」
見事なフロント・ラット・スプレッド。それに向かって大口をあけて突進をしてくるブロンズリザードを受け止めた。だが、ブロンズリザードの攻撃は止まらない。尻尾を振り回してきたが…
「【カウンターインパクト】…」
守里が尻尾を受け止めながら尻尾に衝撃波を当てて軌道を変える。
「爆殺苦無」
《薬術》で作成した爆薬をつけた苦無が鱗の隙間に刺さり爆発し鱗を欠けさせる。
「【ミスディレクション】いくぜ、蜥蜴」
メダルを大量に放り投げる。
「【瞬閃・一式】隼斗」
錬治のみが可能なメダルを利用した高速移動と運動エネルギーが損なわれないことを利用した本来なら攻撃が難しい背中を切り裂く。むろん、ブロンズリザードは、それをいやがり尻尾を振り回すがそれにはじかれたメダルが空中に舞う。錬治は、そのメダルに転移し落下速度を加えた斬撃を与える。
「【パンプアップ】うぉぉぉお唸れ筋肉! 震えよ筋肉! 轟け筋肉! 筋肉アッパー!」
力強い踏み込みから繰り出されるしなやかなアッパーでブロンズリザードの顎を跳ね上げる。
「【幻影殺】…」
意識の外から幸による静かな斬撃が急所となる鱗が剥がれたところを切り裂く。
「<チャージ><インパクトショット>…10秒間お願い」
「任された! マッスルデンプシー!!」
剛の見事なフットワークからのコンビネーションパンチがブロンズリザードの頭部を激しく揺さぶり
「全力!」
足元に落ちていたメダルを拾い頭上高くになげると錬治は納刀し
「【瞬閃・一式】隼斗からの…《チェンジリング》」
瞬閃・一式による加速+落下速度を加えた、斬撃が硬い青銅の鱗を砕きブロンズリザードの動きを止める。
「チャージ完了…発射」
放たれた<インパクトショット>は巨大な塊となってブロンズリザードを吹き飛ばしブロンズリザードを倒した。
レベリングレクリエーション。錬治たちの班はブロンズリザード討伐という成績と真理の欠片を一つ入手し終了となった。
主人公よりも周りのほうが、技が派手になっているような…不思議
 




