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【十三階層十九区画】修学旅行 その16

 ~ 悪因悪果 ~


 起き上がった。奪妬は首をコキコキと鳴らしながら左右を見回す。


「ココハ……現世か……ふむふむ……面白い。実に面白い。これがこの世界か」


 何かをブツブツと語る奪妬。その隙を見逃すことなくヴァルキリーガーデンの面々は追撃する。


「【セイクリッド・バスター】」


 鈴蘭の一撃と


「【竹々蛮々】」


 照美の追撃をけん制の攻撃。だが、奪妬はそれに反応することなく一歩も動かず手を握ったり開いたりを繰り返す。とうぜん直撃するが動じることなく、ダメ押しに迫っていた、真白の放っていた蹴りと幸の小太刀での一撃を指先で受け止めた。


「あぁ、すまない。ちょっと浸っていた」


 それまでと異なる雰囲気。


「あなたは誰ですか?」

「我か我は――――――あぁ、すまないなどうやらこちらでは名前をだせないらしい。忌々しい連中の封印か……だが、先ほどまで戦っていたものとは別と思うが良い」


 ただ、話しかけられているだけなのに、かかる重圧は相手が圧倒的な強者というのは理解できてしまった。


「それにしても、この器よき器であることは褒めてやりたいが、憐れなことにこの中身は我が顕現したおり、供物となり果てた。だが、まぁそれは…この世界では、悪因悪果というのか? 他者から奪ってきたモノが最期は肉体を奪われるというは、皮肉であろう? ハハハハハハハ」


 楽しそうに高嗤いし奪妬に恐怖しか抱けないヴァルキリーガーデンの面々だった。


「なんだ面白くないのか? ふむ? では死ね」


 奪妬だったものが手を振ると衝撃波が襲い掛かる。


「【腰巻竹】」


 照美が慌てて防御用の竹の盾を作り出して全員をカバーするも、あっさりと切り裂かれる。


「ほう、対応するとは面白い。よし、遊んでやろうぞ」


 パチンッ――


 指を鳴らすと同時に異形の魔物が次々に姿を現してくる。


「この器の愚かな事は、出し惜しみしすぎたことであるな。本来こうするべきあってチマチマと小出しにするとは愚の骨頂である」


 その光景はまさに百鬼夜行。そして、その百鬼夜行の王となった、奪妬だったそれは再び高笑いをあげる。


「照美さん【猛槍修竹】はまだいけますか?」

「あと一回だけなら。ただ、詠唱強化で使用するとなると、やはり時間がかかります鈴蘭さんの切札は?」

「私も時間をいただけるのならいけますわね」

「そういうわけだから……真白いいわね?」

「しょうがいないンゴ。帰ったらパフェおごってもらうンゴ」

「幸さんも頼みましたよ」

「了……」


 ――籠目籠目


「テルちゃんが詠唱はじめたンゴ……はぁ……これは疲れるんゴよ【リミットブレイク】殲滅開始」


 真白は、一気に加速し、今までとの比べ物にならない破壊力の一撃はモンスターを爆ぜさせる。


「良いぞ良いぞ。さぁ、お前たち進め進め蹂躙するがいい」


 ――籠の中の鳥居の番人


「……忍法<流星群>」


 幸の投げた苦無は正確に魔物に命中すると派手な爆発を起こす。


「おぉ、花火とは気が利いてるではないか。良いぞ良いぞもっとだもっと我を楽しませろ」


 ――いついつ出やる


 有象無象をかき分けながら、真白と幸は駆けまわりながら、奪妬にせまり、豪打と静かな刃が襲い掛かる。


「おぉ良いぞ良いぞ。そうだ頑張れ頑張れ」


 余裕の表情でその攻撃を躱し、明らかに手を抜いた必死の攻撃を幸と真白は懸命に回避する。


 ――蔓と甕が滑った


「ほう? 童歌で何を魅せてくれるのだ?」


 ニヤニヤと笑う化け物を照美は射殺さんと睨むと最後の詠唱を終える。


「後ろの正面どこだ――【籠目・猛槍修竹】」


 一本一本が電柱のように太い竹の槍が次々にモンスターを貫いていく。


「ほうほう、だがだが、其れだけではあるまい?」


 迫りくる竹やりを腕を止めるが、そのまま後方へと後ずさる。


「良いぞ良いぞ。さぁ、これでは終わるまいよな?」

「えぇ、人間舐めないでいただけますか? 【焦竹媒】」


 竹が燃え上がると轟炎が襲い掛かる。


「ハハハハ、この痛みは、よし、では褒美だ」


 そういって指を鳴らし斬撃の衝撃を放つ。


「先ほどのようには防げまい」

「ええ…そうですわね……あとは皆さんに任せましょう」


 斬撃が照美の胴を真っ二つに切り裂く。


「ふむ…?」


 だが、次の瞬間、そこにあったのは真っ二つにされた竹であった。


「<変わり身の術>」

「おぉ、お前の技か次はお前か」

「それだけじゃないンゴ」


 化け物に迫る二つの影…


「【猛牛裂光撃】」

「【幻影殺・八陣】」

 

 一撃必殺と高速の連撃による連携攻撃。対極の合わせ技は化け物は避けない。そもそもこの化け物に避けるという概念がないのか全てを攻撃を受け続ける。


「カハハハハハ、良いぞ良いぞ。この我に痛みを与えるなど、お前たちを妾にしてやろうぞ」

「お断り…」

「断るんゴ」

「では、力づくでいくかのう」


 パンと手を叩くとハンマーで殴りつけられたような衝撃が幸と真白を襲う。


「げほっ…」

「きゅ~@_@」


 二人は吹き飛ばされ、悶絶する。


「皆さんありがとうございます。チャージ完了しました」


 鈴蘭は、今まで静かに溜め続けた力を一気に開放し、大剣が分離し二振りの剣へと


「双星の輝き交わりて我が眼前の敵を撃たん…降魔覆滅、破邪顕正【セイクリッド・アブソリュート・クロス】」

「この一撃は……ぐっ……ククククク、どうやら遊びが過ぎたか……この器もそろそろ終わりだが…楽しめたぞお前たち、次は我が本体で出会いたいものだ」


 その一撃を受けながら奪妬だったものは塩の塊へと変わり朽ち果てそれと同時に魔物も同じように朽ち果て、謎だけを残していくのであった。

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