【十三階層八区画】修学旅行 その5
【十三階層八区画】修学旅行 その5
一芽に一斉に襲い掛かる男たち、だが、慌てるそぶりは一切ない。
「《ワービースト・エイブ》あーしー怒ってるから今日は手加減できないから覚悟するし~」
見た目は然程変わらないが、攻撃をひらりひらりと躱し、的確に顎や腹部に、打撃を叩き込み吹き飛ばしていく。
「くそっ! お前たち選真教破魔八陣・兵でいくぞ!」
「「「「応」」」」
一列に一番大柄の男が先頭にたつと五人の男が並ぶと一直線に迫ってくる。
「【紋気意魔示狗】なめんなし~」
だらりと脱力すると腕が二回りほど太くなる。
「破ッ」
先頭の男がスライディングキックくりだし、次の男の肩を踏み台にして最後尾の男がオーバーヘッドキック、二番目と三番目の男は左右に別れて挟み撃ちを狙い、四番目の男は飛び蹴りを繰り出す。これが破魔八陣・兵である!
「温いしっ…!」
一芽は、飛び蹴りをしてきた男を掴むとそのまま振り回し、他の男たちを撃ち落とすとさらに追撃と言わんばかりに何度も叩きつける。
「情けない。なんと情けないことか…もういいです。えぇもういいです。あなたたち杭改めなさい! 【ジャッジメント・パイル】」
後方に控えていた征杭が苛立ちながら無数の杭を作り出す。
「ひ、ひぃぃお、お助けをぉぉぉぉぉお!」
征杭が作り出した杭は倒れた男たちを貫き、全員を皆殺しにした。
「あんた……なにしてるし!!」
「制裁ですよ。まったく、神の使徒として情けない」
その場を動くことなく、当たり前のことをしたかのように語る征杭。
「ふざけんなしっ!」
怒りに震える一芽は強く拳をにぎり、襲い掛かろうとするが、次の瞬間、全身の毛が逆立つような感覚に襲われ思わず背後を振り返る。
「一芽ちゃん……悪いけどみんなを連れてここを離れて……こいつは許せない……許しちゃいけない……だから、あちきがやる……」
「美穂ッち…わかった。みんなついてくるしー、避難できるところまであんないするしー」
一芽は、探検者と子どもたちを連れて、この場を離れようとする。
「おっとそうはさせませんよぉぉぉぉおおお。《パイル》」
無数の杭を作り出し、子どもに向けて放つがその杭は一つ残らず喰らいつくされた。
「【血喰ライノ山狗】……やらせない……」
いつの間に美穂の隣には赤黒い大きな目のない犬が現れていた。
「その化け物を使うのが、あなたのスキルですか…フフフ、どうやらあなたは選ばれるべき側ですね。私のスキルのように素晴らしいスキルではないですか」
「ちんけなあなたのスキル……一緒にしないで……」
「ちんけ? 私の素晴らしいスキル《パイル》がチンケだと!? ふざけるな!!! 串刺しにしてやるぞビッチ!!」
スキル《パイル》は一級スキルであり、能力としては杭を作り出し操る能力とシンプルな効果は強力といえないくはない。
だが、その杭も美穂に届く前に山狗が全て喰らいつくしてしまう。
「お前の能力なんなのだそれはぁぁぁぁ、さきから私の私の杭がぁぁぁぁあ」
「……うるさい…………お前は……許さないと決めた。だからぁぁぁ覚悟をきめなぁぁあ」
美穂が取り出したのは短い杖を片手に駆け出し距離を詰める。本来なら、当たるはずのない距離で美穂が杖を振るうが、手にしているはかつてダンジョンで手に入れた『神珍杖』その能力は……
「うわぁぁぁ」
伸縮自在。伸びた杖に慌ててしゃがんだ征杭の頭上を通り過ぎる。
「なっ…お前の能力は山狗を操る能力なのでは…」
「誰がそんなこといったぁぁぁあ」
「がふぅぅぅ」
美穂が征杭の顔面を殴り飛ばすと、一回、二回、三回ほどバウンドをして10mほど吹き飛び鼻血が噴き出しながら嗚咽をもらした。
「こんなものじゃ済まさない! あんたはあちきを怒らせた」
スキル《ブラッド》その能力は血を操る能力であり、血で武器や防具を作り出す能力ではない。人体の大半を構成する血を支配する能力の真骨頂は、血の操作による身体強化。純粋な身体能力の強化としてならイレギュラーズで間違いなく最強クラスの身体能力を発揮する。
「ふざけるなよ!!!」
杭を再び飛ばす、しかし、美穂の目には、飛んでくる杭は止まっているも同然でありあっさりと砕くと、今度は征杭の右肘を神珍杖で砕く。
「ぐぎゅぅぅ」
「【血纏イノ拘束服】」
殺され選真教の信者の血を操り征杭を絡めとるミシミシという鈍い音が響き幾つかの骨が砕けていく。
「お前の犠牲者に詫びながら悔い改めておきなぁぁ【判決ノ烙印】」
制杭を拘束した血がうごめき、まるで一本の巨大な杭のようになると美穂は肩が埋まるまで深く地面に埋め込み、征杭は激痛により気絶するのであった。
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ヤバイ、多分、このシリーズは過去最長の文章量になる……




