【十一階層九区画】剣鬼
新年あけましておめでとうございます。
【十一階層九区画】剣鬼
「全く、情けないのぉ。鍛え方が足りとらんのぉ」
膝をついている錬治達に対して、祖父・尾張哲一は杖で自分の肩をぽんぼんと叩いている。
「くそっ、じじぃが…」
「はぁはぁ…何なのだ、あの御仁は……」
「錬治も滅茶苦茶と思ったッスけど、あの人、化け物っスか? 人の皮被った鬼とかじゃないっスよね?」
「隙がありません…」
錬治、城一、次郎、岬の四人全員が、ボロボロになっており、それを見ていた右近は驚きを隠せなかった。
(あの四人が手も足も出ないなんてマジかよ…あの爺さん、錬治の祖父らしいけど何者だよ)
ことの起こりは、錬治を訪ねてきた哲一が、出合い頭にいきなり試合を始めたのを止めに全員で入ったまではよかった。が、その流れのままに場所を移して全員と戦うと言い出した哲一と試合をする事になったのだが、結果は全員掛かりで惨敗していた。
「ホレホレどうした」
「錬治…一つ聞きたい…戦績はいままでどうなのだ?」
「3勝1785敗…」
「ちなみに、その3勝はどうやったんスか?」
「将棋で1回と二日酔いでダウンしたのと老人会の慰安旅行ででかけての不戦勝が2回…」
「それ勝ちと言えるんでしょうか?」
「ふん、どんな条件でも、とりあえず儂が戦えんかったからの負けじゃよ。さて、どうする続けるかの?」
全員が構えをとる。
「うむ、その意気は良し。かかってくるがよい」
「行くぞ次郎! 【武創展開】」
「了解っス! 【シャドーコピー】っス」
城一は様々な槍・剣・斧を作り出し、次郎の分身が武器を構える。
「壮観ではあるが、甘いのぉ【轟閃・二式】鎖乱」
荒れ狂う風の刃が分身を消し飛ばす。
「きゃぁぁ」
「岬!?」
城一が派手に展開していた隙に《アテンション》で意識を逸らし隙を伺って身を潜めていたのにも関わらず、的確に岬が殴打されていた。
「どうなっているのだ…錬治も常識外れだと思っていたが…その祖父も常識がないのか?」
「そうっスね。あと岬さんに反応してたというよりは、反射で動いてような気がするッスよ」
「ホッホッホッあのお嬢ちゃんの能力は面白くはあるが、意識の外からの攻撃なんぞ初歩の初歩じゃよ。対処法をもっておれば、どうとでもなるわい」
「とんでもねぇ事さらっと言ったッスよ。この爺さん」
「ほーれいくぞ」
鋭い打撃が襲い掛かる。
「【瞬閃・一式】隼斗」
二人に迫る祖父めがけて、躊躇なく木刀を振り下ろすも
「【轟閃・一式】勇太刀」
木刀と杖がぶつかり合うが、錬治が吹き飛ばされる。
「ちっ、くそ爺が! 【瞬閃・二式】隼斗十文字斬り」
「【轟閃・二式】鎖乱。ほれほれ、どうした。どうした」
技と技の応酬が続く。
「【瞬閃・三式】閃隼」
「【轟閃・三式】鈴華是」
錬治の突きに合わせて、突き返し木刀を弾き体勢が崩れた胴に蹴り飛ばされる。
「ゲホッ…くそっ」
「ほう、剣を離さなかったのは、誉めてやろうかの」
「ぐっ、この…くたばれぇぇぇ!!!! くそ爺【瞬閃・四式】天斬」
「【轟閃・四式】死紅蓮ほれ、行くぞ」
剛と剛のぶつかり合うも、錬治が押し負け、木刀が砕け散る。
「悪くはなかったが、まだまだじゃのう。どれ、最後にこいつを見せてやるかの【轟閃・五式】獅羅露」
次の瞬間、錬治の意識が霞、そして途絶えるであった。
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