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【十一階層五区画】調レポート

【十一階層五区画】調レポート


 千賀コーポレーション・調達部部長の森崎は提出されたレポートとサイクロプスの瞳を確認していた。


「どうだったかね? 五十嵐くん」

「率直にいうなら、彼を引き抜くのには反対ですね」

「なぜかね? レポート内容からも優秀だと思うが?」

「優秀過ぎるんですよ。彼なら即戦力で高難易度のダンジョンもいけると思います。が、彼についていける人材がいないです」

「そこまでかね?」

「はい。そうですね。実際の様子を編集した動画データーを見ながらのほうが理解していただけるかと」

「撮影できたのかね?」

「えぇ、許可してくれたので」


 再生された動画を確認を始めた。


 最初に映し出されたのは、3メートルの褐色肌の巨鬼――オーガ――と対峙する一人の少年と二人の少女が映っていた。


「確か、参加メンバーは家からは、君と香川くんと千葉さんだったね」

「はい。万が一に備えてましたが…見てください」


 確認を終えて再生を再開すると奇抜な格好をした少女。小鳥遊充希と紹介された少女がいつの間にか取り出したナイフを投げたと思った瞬間、画面から少年、矢車調が消えていた。そして、次のシーンではいつの間にかオーガの背後から充希が投げたと思われるナイフを片手にオーガの首を切断していた。この間、5秒程度の間の出来事である。


「はっ? これは特撮かなにかかね?」

「いえ、ありのままです。私も見た時は、目を疑いましたよ」

「ちなみに君のベストチームでオーガ一体を倒すのにどれくらいかかる?」

「そうですね。一人ですと早くても30秒はかかるかと、エースチームのメインアタッカーの春間くんで一撃で倒せるとは言ってましたが」

「これほどとは…矢車主任は娘自慢は社内でも有名だが、これほど優秀な息子さんがいたのはな」

「いえ、その…この時にですね。琴吹のお嬢さんが『調さん判断が遅いですよ。錬治さんなら細切れにしてますよ』ということを言われてたんですよ」

「彼がエースアタッカーじゃないのかね?」

「はい、気になったので聞いてみたら、5番手くらいだそうです」

「信じられんな…」

「この後を見ていただければ、解る事なのですが、彼は本気を出していません。というか、彼ら全員が本気をだしていないのです」


 映像を確認していくと、調たちは普通に迷うことなく進んでいく。その間に不意打ちされることもない。道中はオーガの他にも、一見、ゴブリンにも見えるが、近づくと巨大化するスプリガンといった魔物にも苦戦することなく進んでいく。


「誰かナビをしていたのかね?」

「いえ、ナビは用意していたのですが、道程をほぼ暗記したそうです」

「引き抜けない?」

「これ程の人材ならわが社に迎えたいですが…本当に無理ですね。この後のサイクロプスとの戦いをご覧ください」


 サイクロプスとの戦いは、一言でいうと、狩りだった。昆虫のような仮面を調が身に着けると、全身が甲殻に覆われ、背中の一部が剥離して剣を形成した。


「これは…」

「これが彼の特級スキルだそうです。今回見せてくれたのは一つだけでしたが、別の仮面を被ることで、特有のスキルを使用することができるそうです。ちなみに、この時、使用したのはスコーピオンソードというアーツらしいです。効果は斬りつけた時に、毒を相手に送り込むというものだとか」


 映し出される映像は圧巻だった。それも調だけでなく他の二人もサイクロプスと一対一で戦い、圧倒していく。


「彼女たちは遊撃手とヒーラーではなかったか?」

「はい、そのはずなんですが…並みのアタッカーよりも十分に強いですよね…」

「ふぅむ…確かに引き抜けないな。彼らを引き抜く予算があったら二チームにフル装備を提供してもお釣りがくるな」

「えぇ、なので、南九州方面での案件があれば依頼するのがコスト面はいいかと」

「そうだな。報告は以上かね?」

「いえ、最後にこちらを…」


 そこに映し出されたのは双頭の巨人エティン。2つの頭をもつ巨人で盾と棍棒を構えたサンシャインダンジョン15階層のボスモンスターである。


「まさか…」

「はい、そのまさかです」


 棍棒を振り下ろし地面を強く叩きつけようとした時、エティンは体のバランスを崩し態勢を崩すと目玉のあたりで何かが炸裂し片方の頭の片目を破壊。怯んだとおもったら調が振るった刃でアキレス腱は斬られ、のたうち回るも容赦なく追撃され何もできず討伐されていまうのであった。


「この情報が手に入っただけでも僥倖とすべきか…今後ともいい取引ができる事を望もう」

「そうですね」


 一般的な探検者を知る者にとってももはや常識外れの能力ではあるのだが…周りの飛びぬけた仲間によって自分たちの異常性に気づかないず、そのことにイレギュラーズの面々が気づくのは、もう少し先のことであった。

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