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【九階層五区画】川内大綱引きダンジョン 選考会

【九階層五区画】川内大綱引きダンジョン 選考会


 イレギュラーズの男性陣と岬、ぼたんは市街地の外れにある、探検者屋外訓練所に来ていた。もっとも、元は採石場を再利用して簡単な柵とフード系の自販機と簡易工房を併設させた事務所と低コストで作成された訓練所ではあるが、需要はかなり高く、その証拠に真新しい飲食店が周囲に立ち並んでいた。地方都市では手に余していた場所を訓練所として開放し、それが地方の経済活性につながるという好循環が生まれると実にいい事尽くめである。


「よく来てくれた。今年の一番オシの山田佑馬だ」


 腕組みをした、180cmの筋骨隆々の40代の男性がまっていた。


「えっと、崇高、一番オシて何?」

「先陣を切る押し役の人達です」

「くっ、それは羨ましいな」

「ガチですね。これは」


 本気で悔しがる錬治をみながらぼたんは少し呆れた。


「ところで、なんか世紀末な人が多くないか?」

「ヒャーハッーとかいいそうっスね。心友」


 軽い自己紹介を終えると、案内された先には大型トラックに止まっておりその左右に杭が打ち込まれており、そこから伸びた太い鎖で繋がれていた。


「どりゃぁぁぁぁぁあ」


 そのトラックに向けて順番にタックルをしており、どれだけ移動したのかを計測していた。


「引きに入ってもらおうとは思うが、一応、実力があればオシ隊にも本人が望むなら入ってもらおうとおもってな。毎年のテストとして、このトラックに一撃重いのを入れてどれだけ移動するのかで測定している」


 このトラック押しは、見た目もわかりやすいのもだが、低コストで分かりやすい測定法として活用されていることが多い。


「じゃーオレッちからいくっす」


 そういってトラックの1mほど手前で構える。


「あぁ、注意事項として身体強化系のスキルの使用は構わないが、装備系や遠距離攻撃系のスキルは使用しないでくれ。本番では使えないからな」

「了解っす」


 そう返事をすると改めて構える。


「とりゃぁぁっス」


 ドンという鈍い音と共にトラックが10mほど移動する。


「ほう、凄いな。彼がエースなのか?」

「いえ、違いますよ」

「あれほどでもかね?」

「まぁ、見てもらえれば…」


 右近は少し硬い表情で話す。


「はぁ…オレ、スキルなしだと、大したことないんだけどなぁ」


 《マスカレイド》は装備系スキルであるために使用できない。その状態での調が出した結果は


「計測結果は12mです」


 計測係から告げられた数値に周りも少しざわつく


「まぁ、そんなもんだよな」


 そう口にしながら全員のところに戻ってくる。


「いやいや、12mなら十分な数値だ。なにせ15mを一撃で動かせればかなりなモノだよ。さっきの子といい、凄いぞ」


 佑馬は少し興奮気味に語る。


「そういって貰えると嬉しいですけど…」

「《アテンション》皆様、ご注目ください。城一さんの番です」


 調が会話をしている途中で、岬がスキルを発動させ城一に全員の意識を向ける。


「ふっ《ドミニオン》」


 《ドミニオン》は応用範囲が極めて広いスキルである。普段は刀剣類を作成し操作するが、それは、あくまでも力の一端である。他者に行動の支配。そして、自身の身体能力を支配しその力の流れを制御した結果は


「に、21mです!!!」


 計測係も興奮気味に伝える。


「ふむ、我としては、まぁまぁであるな」


 余裕の表情で戻ってくる。


「ケケケ、なんか空気がワイの数値が、どれだけでも、大したことないみたいな空気だけどよぉ…期待をしないのは、アンフェアだよな」


 場の空気は城一以上はという、期待薄な微妙な空気のなかで光太郎が出した結果は


「20mです!」

「チッ、負けちまったか」


 確かに負けはしたが20mもかなりの記録であるのは間違いなく、負けたとは言いつつも楽しそうな笑みを浮かべながら城一の隣に座った。


「なかなか、良かったぞ」

「ケッ…次は負けねぇよ」

「さてと、崇高だが」


 視線をトラックへと向けると


「行くでありますよ」


 まさかまた、という空気の中で出した結果は…


「11mでありますか…」

「仕方ねぇよ。あいつらがおかしいだけだし…」

「そうっスよ。技巧派のうちらと、パワー型の人たちと比べるのは間違いっすよ」


 結果としては10m超えれば普通に凄いのだが、大きい記録が続いた後だけにどうしても微妙な空気になる。


 次の源治であるが、一番ガタイのいいだけに期待が高まる。


「……フンッ!!」


 力強く押されたトラックは、勢いよく滑り結果は


「に、25m今年の最高記録です!」


 その結果には騒然となり、大きなざわめきが起きる。


「す、凄いな。彼には是非に…」

「待ってください。あと一人いますから」

「そ、そうでしたね。いや、すみませんな」


 一刻も早く、勧誘したい気持ちを抑えながら、最後の一人の少年に目を向ける。鍛えてはいるであろうことは解るが先ほどの源治と比べるてしまえば貧相に見えてしまい期待はせずに早く終わる事だけを考えて視線は既に源治へと向いていた。


「源治のやつ、また力付けたのか…後で手合わせだな。しかし、なんで全員で俺だけ最後てしたんだか…まぁトリだし、派手にやってもいいか」


 先ほどの結果をみた錬治のやる気は十二分に高まっていたし、なにより順番決めで錬治を除く全員一致で最後にされた事にはちょっと複雑な気分である。


「それじゃーいくか」


 周りも見てはいるが先ほどの記録に心奪われており、そこまで注目していなかったが次の瞬間…


 バンッとまるで近くで雷が落ちたかのような轟音と共にトラックは文字通りに吹き飛び周りは目を見開き言葉を失った。


「こんなものかな」


 錬治の攻撃評価はS、そして速度もSである。あまり重視されない能力値。だが、それはあくまでも能力値の差が少ないために重要視されていないが、評価がたかくなればなるほど、レベルが高くなればなるほどに顕著に能力値が反映される。そして、錬治は最高レベルの速度で地面を蹴り正しい技術で十全に発揮した結果。


「き、記録…74mです」


 見間違うはずのない大記録に会場は大いに沸くのであった。

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