【一階層八区画】日本の様相
日本国内、主に政府の政治的なお話です。
日本ダンジョン戦記 【一階層八区画】日本の様相
中学生が夏期講習にいそしむなか、日本政府の首脳陣は頭を抱えていた。
「…解散したい」
現日本国総理である民司党・大友康弘はそう呟いていた。というか、首脳陣全員同じ気持ちだったが、いま解散総選挙してもあまり結果は変わらないというか悪化する可能性があるが愚痴らずにはいられなかった。
「総理、そうはいいましても」
「わかっている。だがな…」
現在の世界情勢で日本は一人勝ち状態なのである。しかも辛勝とかではなく圧倒的すぎる程に圧勝なのである。ただ、それがすべてプラスというわけではない。つまるところ妬みなどを受けている。
もっとも資源が国内で賄えるために結局、愚痴と嫌味を言われる程度ですむのだが、それでも数が多いと心労にはなる。
「しかし、今年のG20のことを考えると頭が痛いな」
現在の世界の移動はなんとか空路のみ可能である。海はという海流や海域が迷宮化しており船での移動はかなりの困難になっており輸出入にも大きな影響がでている。
「国内の人手不足なども問題ですからね」
日本国内ではダンジョン数と探検者として活動してる比率がかなり低い。が海外ではむしろダンジョンが少ないことから起きる問題が多く、そちらが社会問題となっている。その解決策がDPP(ダンジョンパートナーシップ協定)である。内容としては探検者の国家間の移動の手続きなどを簡略化などや人材派遣の要請などを円滑に行う協定であり外務省、経産省、農林水産省、産業省などの省庁の垣根を超えた特殊チームで行っている。
「はぁ、まぁ文科省の柴田さんと迷宮省の東屋さんよりも苦労してますからね。今日は…」
「本年度の選択会議の事前調整会ですね。今年は黄金の世代とマスメディアでも騒いでいまからね」
例年なら一等スキルが100人程度。それを各地域が選択指名するドラフト会議なのだが、今年は、その一等スキル持ちが例年の倍。さらに勇者・賢者・聖女という特大のスキルもちが誕生という報告だけで二人とも倒れそうになった。それに加えて…
「まさか、特級スキルもちが14人とは…東屋さん本当に泣き入ってましたし」
特級スキル、理不尽ででたらめではあるのだが使い勝手が悪いと言われてる。だが、使い方一つで戦況を変えるスキルの評価は非常に高くはあるのだが、なぜか使い手の人間性にもかなり問題が生じることが珍しくないという特性もあるのである。
「ところで、国内のその迷宮教についてですが」
「頭が痛い問題ですね」
迷宮教…新手のカルト宗教というか迷宮は選ばれし信徒である我らのモノだ。と、いう何とも言えない宗教団体であり、さらに様々な極端な思想も取り込み混沌とした団体となっている。しかも野党の革命党の山中幸太議員や共同党の大池昭議員の支持をしているという何とも始末に負えない団体なのである。
「とりあえが公安にテロ準備の可能性での監視対象にしておく程度か」
「そうですね」
首相の胃痛の種は尽きないのであった。
新規探検者選択指名会議準備委員会
会議は紛糾していた。
ただし、賢者を指名する地域をどこにするのかという案件でだが…
勇者は『世界十大迷宮』の出雲迷宮のある島根県へと早々と決まり。聖女も、その対アンデッド能力から青森の恐山迷宮攻略への期待から早々に決定した。問題は賢者を、どこが獲得するか有力候補として富士山ダンジョン、樹海ダンジョンのある静岡。大阪城ダジンョン、梅田駅ダンジョンのある大阪、伏見ダンジョンなどのが多数点在する京都。そして東京。東京は東京タワー、江戸城、新宿駅、浅草寺、お台場と枚挙がつきない世界屈指の迷宮地帯である。むろん、議論に参加するのだけでも落としどころとして一級能力者の指名枠を一つ放棄と各都道府県が一人の指名が終了するまで指名できないという制約があったが、それでも議論に参加した各都府県は現在も丁々発止の話し合いの真っ最中である。
ちなみに、島根県と青森県は今回の勇者及び聖女の指名権獲得により一級スキル保持者の指名権全ての放棄は確定していたがそれでも十二分の成果といえる。
「本年度は本当に実り多いというか多すぎるというか…」
「贅沢な悲鳴ですが…本年度は本当に多いですね。特級スキルなんて年に一人いるかいないかなんですけどね」
報告が上がっているのが《アテンション》《アンチェイン》《アンフェア》《カスタマイズ》《デッドコピー》《チェンジリング》《ドミナント》《ネガティブ》《ブラッド》《ビースト》《ボックス》《ホワイトブック》《マスカレイド》《ライブラ》どのスキルも強力ではあるが即戦力になるのかと言われると頭を悩ませる。そうなると使い勝手のよいレアスキルもちをスカウトしたくなるがとなる。実際≪エクリプス≫の所有者は活躍はしているがチームを組めないなどの欠点もある。
「近年だと、南九州方面の探検者不足が結構深刻でできれば、確保して欲しいですけど…」
「うーん、特殊育成学科のテストケースとして調整してみようか」
「そうですね。知名度もあるのでしょうが、南九州も一級迷宮が多い地域ですし」
こうして、会議は紛糾しながらも着実に夏の終わりに始まる激闘へと時代は動いていった。
主人公以外の特級スキル持ち13名の活躍はしばらく先になります。
日本各地の有名観光地は全て一級ダンジョンが存在します。ご当地ダンジョンでは特産品や伝承にちなんだモンスターなどの存在も確認されております。知名度が高いほどダンジョンの難易度も高くなっています。




