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【九階層二区画】決着! たこ焼きフェス

【九階層二区画】決着! たこ焼きフェス


『それでは、審査開始です! 審査員は、こちらのお三方!』


 右端に座っていたが中年紳士が帽子をとり大きくお辞儀をする


「うっう~むん。我輩は、グルメである。名前は真田権左衛門んっである」


 真ん中にすわっているのは、背中が大きくあいたドレスをグラマラスな女性が座ったまま胡乱気な雰囲気を漂わせている。


「はぁ…わたくしは、飢えているの…故に早くサーブなさい」


『えっと、グルメジャーナリストの笠原ナツメさんでした』


 左端に座っているのは頭頂部が寂しい小柄な老人が座っていた


「儂は食品株式会社『ダンジョンフーズ』の相談役の岩屋友蔵じゃ。どのような品がでるか楽しみじゃ」


『審査員の方も出そろいました。それでは、Aブロック代表アンジェリカ選手の品です」


「オッホッホッ~」


 クロッシュ(ドーム型の蓋)をかぶされた皿がサーブされる。


「最高の皿が一番最初なのは悪いけど。それは仕方がないわ。さぁ、どうぞこれが私の品よ」


 その品は、クロカンブッシュのように積み上げられ金粉とキャビアがまぶされたたこ焼き風のパイだった。


「フォアグラのパイ包みたこ焼き風 血のソースかけ ポムスフレを添えてよ」


 フランス料理のコースの一皿として出されても遜色ないレベルの盛り付けに関心しながら審査員は頬張る。


「ん、うっん。トレビアーン。これは素晴らしい!? 中にはフォアグラっと…」

「オッホッホッ、それは鴨のダブルコンソメよ。それをゼラチンで固めた物を一緒にいれたの。たこ焼きは、中の熱々が醍醐味~その演出よぉ」

「わたくしは…感動しております。付け合わせのポムスフレ…これも素晴らしいですね。ソースと搦めると美味しいですね。さっくりとした歯ごたえと、濃厚な味わいのソースとの相性も良き」

「パイ生地に混ぜられたトリュフの香りが高級感を高めておるの」


『これは好評だ。次は炎東慈アツモ選手の品です』


「僕の傑作を味わってよね♪」


 サーブされたのはゴルフボールサイズの黒いたこ焼きにトマトソースに白いソースがかけられた物であった。


「なるほど、こいつぁ、うん。上にかかっているのは青のりかとおもったらイタリアンパセリ、それにチーズソースは、あれをいれたな」

「えぇ♪ イカのワタと細かく刻んで裏ごししたものを加えてありますよ♪」

「なっるほっどー。これは、生地にイカスミがまぜて~あるの↑」

「これは…カルトッチョだわ。それにトマトソースには、アメリケーヌソースも混ぜて旨味を追加しているのね」

「そのとおり、たこ焼きのようで、たこ焼きにあらず、たこ焼きとイタリアンの融合…カリブ焼きでもいいかもね」


『これまた高評価だぞ。さぁ審査員の方まだまだ次がありますよ』


「我傑作召上」


 運ばれてきたのは、石の丼にたこ焼きが入っており、その横には中華アンが添えられていた。


『アンを注いで食べて欲しいとのことです』


「熱々注意」


 バチバチバチチチチチ


 激しい音が鳴り響く。


「春雷…これは…もぐ…やはり、鍋肥(中華おこげ)。生地は米粉ともち粉が混ぜてある…」

「フカヒレ、アワビ、伊勢海老、ナマコ。どれもしっかりと下処理されていて旨い」

「このアンのスープは、干貨(乾物)からとった海鮮系中華スープじゃな。うむ生地に染みたも上手いの」

「多謝」


『さぁ、素晴らしい三品が続いてから、高校生コンビの品はいかほどの物か!』


 出されたのはテニスボールサイズの大玉のたこ焼きがレンゲに載ってサーブされた。


「ソースも何もかかってないわねぇ。このままかぶりつくのはちょっと困るわね…」

「大きいだけのたこやっき↓ 締まらないぃぃの」

「若人の品ではあるが…ふむ」


 難色を示す審査員に対し


「すまないッすけど、食べるときは箸で突き刺して欲しいッスそのままかぶりつくと、間違いなく火傷するッス」


 そう言われて、各々箸を突き刺すとそこから一気に汁があふれ出してくる。


「これはぁ↑」

「小籠包か!?……そして、この汁は…」

「カッカッカッ! なるほど、小僧。こいつはアレを使った出汁であろう」

「はぁ、これですよね?」


 調が周りに見せたのはエイリアンの干物ではなく蛸の干物である。


「それに焼き海老も出汁に使ってるッス」

「…どうやってこんなに出汁を」

「いや、普通に注射器で仕上げに熱々の出汁を注入したけど?」

「はい?」

「シンプルであるが…なるほど、その出汁で中まで熱を通したのか」

「そうスッね。仮でつけるなら小籠包風たこ焼きっスかね」


 さらに本体を一口するとプチッという食感と共に蛸の旨味が口に広がる。


「この食感わ↑ 米? ノン、これはぁ↑ イイダコのたまぁごですね」


 イイダコは、小ぶりな蛸ではあるが、頭の部分に米粒大の卵を抱える蛸である。


『さぁ、それでは最後の品も出たところで審査をお願いいたします』


 審査は、喧々諤々と行われたが、その議論が一瞬とまり沈痛な面持ちになる。


「儂が発表しよう。結論から言うと、高校生コンビの小籠包たこ焼きが優勝じゃ」


 その発表に裏暗黒美食グループの面々が抗議を開始する。


「ちょっとちょっと! あたしたちがなんで負けているのよ!」

「そうだぜおじいちゃん♪ 納得いかないなぁ」

「理解不能」

「……そうね。美味しかったわ……でもねタコ入ってないじゃない…タコ焼きなのに…」


 しーん


「「「あっ」」」


「そうっスよね」

「だよな。たこ焼きなのに…どうするんだろうと思ってたけど……」


 こうして、大会はあっけなく終了するのであった。

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