【八階層六区画】チェイス2
予定よりも話が長くなったので章を区切りました。
【八階層六区画】チェイス2
住宅街。本来なら、静まり返っているはずの時間帯であるが、あまりにも似つかわしくない音が響いていた。
「なんなのよこいつら何者よ!?」
「ヒナ、喋ってないで手数増やして」
「フブキ、コードは?」
「もう本名バレてるから気にしない! それよりも…」
仲間と分かれて二人になった日奈子と風吹は、たまり場として使っているいる家に入ろうとした瞬間に、鈍い赤銅色の西洋甲冑二体に襲撃を受け、そのまま近くの空き地で戦うはめになっていた。
「もしかして、私たちみたいにダンジョンから…」
「それ以上は口にしないヒナ!」
「ごめん。この! <ファイアジャベリン>」
炎の槍が一体の甲冑を貫く。
「よし!」
「油断しないで、こいつらマジで、訳がわからない強さあるから」
棍でけん制をしながら、もう一体を相手しており二対一で甲冑との戦いになると思いきや、先ほど倒したはずの甲冑が再び背後から襲い掛かってきた。
「あのーそろそろ無駄な抵抗は辞めたほうがいいと提案いたします」
「「なっ」」
「わたし、渡瀬ぼたんは、探検者協会より通り魔事件調査の為に、確認したいことがありますのでご同行願います。これは任意ではなく、探検者としての強制ですので、素直に同行することを提案しますよ」
二体の甲冑はぼたんを守るように前面に立ち、ゆらりゆらりと歩きながらぼたんは話す。
「あたしたちが、何したっていうのよ!?」
激高しているのはフブキと呼ばれていた女。年は20才前後といったところである。
「最近、起きている通り魔事件の被害者六名の内、被害者の女性二名の関係者であると確認しております。ぜひ、お話を伺えますか?」
ゆるりとにこやかにぼたんは語り掛ける。
「し、知らないわよ」
ヒナと呼ばれた女は動揺したのか声が上ずりながら反論する。
「そうですか? その二人と別の被害者男性方一名と、あなたたちのサークルメンバーが揉めていた事も確認してますし、無差別に見せかけて、襲撃したことは判明しているとしてもですか?」
何もかもお見通しと言わんばかりに意地の悪い人をおちょくるような笑みを浮かべながらぼたんは続ける。
「な、なんで」
「ヒナ!?」
二人の顔には明らかに動揺が見て取れる。
「犯行現場は全て鹿児島大学から半径10㎞圏内、被害者は一見すると共通点が少なくみえるけど、明らかに共通する点があったので身辺調査まで同時並行して浮かび上がったのがあなたたちという事を報告するのですよ。弁明などももちろん聞きますが同行してもらえますよね?」
そういい無防備に姿をさらす
「答えは……お断りよ」
二人はそういうと同時に手を突き出し
「「<ファイアジャベリン>」」
炎の槍を放つ
「残念ですね」
迫る炎の槍を前にぼたんは動じることなく悠然としており、命中する直前
「【瞬閃――
それまでは、少女が立っていた場所から、聞き覚えのない少年の声が響いた。
―― 一式】隼斗・弱」
風が駆け抜けたと同時に鈍い衝撃が二人を貫き、そのまま倒れこみ気を失う事となった。
「流石は錬治くん、お見事です」
少し離れた場所からぼたんが、歩きながら近づいてくる。
「単純な作戦だったけど上手くいったな」
「そうですね。下手に手の込んだ策は必要ありませんし、彼女たちの実力は解析済ですからね当然だといえます」
実は、錬治は近辺に潜んでおり、タイミングをうかがっていたのである。
そう話しながら、ぼたんは電話をかけ始めるのであった。
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台風などの被害は、なかったのですが、対策などに時間をかなり取られてしまいました。




