【八階層四区画】人形劇
あの人が、珍しく戦います。
【八階層十二区画】人形劇
20階建てのビル最上階。立ち入り禁止と書かれた看板がある屋上で男女合わせて8人が交差点を眺めていると一人の男が
「いでぇぇぇぇぇえ、腕がうでがぁぁぁぁぁぁぁ」
「オイしっかりしろ!」
突如として、腕が黒ずみのたうち回る仲間に、周りはどうしていいのか分からずオロオロするばかりである。
「はい、お前たち動くなよ~」
痛みに悶える男を除いた七人全員が驚愕した。ここの屋上の扉は錆びているし何より鍵も自分たちが閉めたことを何度も確認した。にも拘わらず、その人物はふらりと立ち寄ったような軽い感じで自分たちへと声をかけてきていた。
全員が観察する。年のころは30後半。暑いこの時期なのに仕立ての良い白のスーツ。気だるそうにしながらも、顔立ちは端正で彫は深い。正直こんな場所ではなくホストクラブにいてもおかしくないと感じた。
「はぁ~しかし、本当にいるとは…マジでなんでオレ、あいつらの担任なんて引き受けたんだろ……はぁ~ため息しかでねぇ」
伊達男といったスーツ姿に身を包んだ大島右近は、何度目になるかもわからなくなった、ため息をついてしまう。
「とりあえずアレだ。えっと、ちょっと君たちに辻斬り事件についての聞きたいことがあるんだよ。大人しく同行してくれると楽なんだけど…」
「うるせぇぇぇ」
「やんぞ!」
男二人が殴り掛かるが、右近は慌てることなく。務めて冷静に
「おいおい、話聞きたいだけなんだが…おっと」
「こいつ、ぶちのめしたら合流するからお前らは逃げな」
「俺とシイでエイは担いでいくからヨ」
後ろの仲間に、右近に殴りかかりながら逃げるように促す。
「了、ほら、ビイ逃げるからトロトロしない」
「う、うんエフちゃん」
一人毛色の違う地味な女の子をつれてビルから全員飛び降りる。
「おいおい!?」
右近が慌てて駆け寄り下をのぞくと、落下中にビル壁を蹴り隣のビルへと飛び移る姿がみえた。
「パルクールかよ…まぁいいか。とりあえずお前らチェックメイトな」
「はぁ? 舐めてんのか?」
「ディ落ち着け。このおっさんじゃ俺らを止めれるわけねぇだろ。おっさんオレ達のレベルは25はあるんだぜ? あんたみたいなおっさんじゃ良くても30越えてるかどうかだろ? 30越えでも二対一じゃ勝ち目はねぇよな?」
少しずつ近づく二人組に対して
「それじゃ、君たちから話を聞くかな…ちょっと痛い目にあうことになるとは思うけど、自業自得てことで諦めてくれよ」
「「はぁ?」」
間抜け面で凄む二人に、だらりと腕を下ろした状態から一瞬で反対側の端の柵の上に立つと
「【即席演目・仕置き三昧】」
「なに…えっ!?」
「体が…動かない?」
「うん、そうだよな。普通なら何された分からないよな…そうだよな! そのリアクションが普通なのによ。うちの教え子たち半数は初見で見切るとかおかしいんだよ」
実技の授業で披露した技に対して、初見でほぼその正体を見切る、教え子たちのことを思い出すだけで、胃に痛みを感じる事が最近増えてきたと右近は再び小さなため息を漏らす。
「普通のレベル25くらいなら、それで、十分だろ。さてと、大人しく話す気はある? 今なら無傷ですむけど?」
「ふざけんな!」
「シイ、なんか動けそうだぞ」
「よし、おらぁぁぁ」
再び殴りかかろうとした二人の拳は、互いの顔面に叩き込んでいた。
「ぐはっ」
「げはっ、な、なんだ、おっさん何しやがった!!」
互いに殴り合いをしながら右近をみるが
「これ人には見せられないから、オレ、ソロで活動してたんだよな。とりあえず、喋る気になったら止めてやるから早く話せよ」
お気軽に声をかけられた二人は顔を青ざめながら殴り合いを続けるのであった。
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