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潮風薫るこの地にて  作者: 松田 業平
第一章 島の学校
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第8話 再びバス停にて

決めた事を伝えるために放課後バス停で黒崎を待つことにした、学校にいる時間はほかの女子が周りにいるため話しかけずらいのもあるが、黒崎の男性恐怖症の話は広めない方がいい。

二人っきりで話せる状況を考えると部活動見学で他の生徒がいないこの時間帯くらいだろう。

黒崎はバス通だ、しかし親の送り迎えの可能性のありうるから五分五分と言ったところ。

情けない話だが偶然にでも会える事を願うしかない、今日がダメなら明日の朝早くにでも登校して来るしかない。

そちらの方が確実かもしれないが、黒崎の状況を考えると早めに手を打っておきたい、

バス停に着いてからすぐに来たバスを見送った、次のバスまでは結構時間がある。

HRが終わってからすぐに来たためまだ来るのにもしばらくかかるかもしれない、我ながら無策にも程があった。

でも自分で決めたことだ、考えるよりも行動したい。

以前にも変わろうと考えたことは何度かあった。

でも考えれば考える程に後ろ向きになっていき、問題から目を背けてきた。

黒崎以外の生徒が来た場合はその後のバスで帰る、黒崎が来たら単刀直入に率直に話すことにしていた。

あまり時間をかけすぎるとバスが来てしまうし、人が来ても話を聞かれてしまう。

遠目に校門を見ると部活で郊外を走ってる生徒に紛れて黒崎が歩いてくるのが見えた。

ひとまずこれで話が出来る、あとは黒崎が納得してくれるか。

一度断っておいて今更協力することに疑問を抱くかもしれない、そこはどうにもならない。

ひとまず協力を確約してからでも遅くはないと考えていた。

黒崎がバス停に入ってきて、中にいる俺に気づいた。

「こんにちは」

「おう」

朝からずっとこの調子で相当落ち込んでいる様子。

そんなところを見ていたら話を切り出すための気持ちの準備をしなくても口を開くことができた。

「昨日はすまん、相談の事断って」

「…いいえ、無理を言ったのはこっちなのだから謝られる道理はないわよ」

「それで昨日の今日であれなんだが、黒崎のトラウマの解決。俺に協力させてくれないか?」

「え?」

急に言われたからか目を丸くしていた、予想していた通りの反応だ。

「男子の先輩に話しかけられて倒れたんだろ?それぐらい深刻な問題なら早く解決した方がいい。俺なら平気なんだろ?黒崎が話した通り学級委員の仕事で一緒になるからその時にでも時間を作れるし」

協力に積極的な姿勢を見せることで多少なりとも調子を戻すと思ったが、黒崎は一層暗い顔を見せた。

「そう、貴方も私に同情してくれるのね」

「それはどういう意味だ?」

「同情なんて、無意味よ。中学の時もそういう人はいたわ。でも結局なにも変わらなかった変えられなかった」

少しずつ黒崎の声が大きくなっていく。

「私の事を心配してくれたけど、腫れ物に触るみたいに恐る恐るで。赤の他人の家庭の事情なんてどうにもならないと分かってはいたけど、それでもあんな目で見られるのはもう嫌…」

それは痛いほどに分かる、自分がとても悲しかったり寂しかったりした時に他人からはどうしていいか分からないもので、心配をしてやれるくらいしか出来ないことが多い。

その時の視線はまるで鏡のように自分の弱々しい姿を写すものだ、ましてや歳の変わらない友達だったら尚更酷い。

頼っても解決出来るはずはない、でも頼りたい。

そのジレンマが自分をも縛り付け何も出来なくなってしまうのだ。

「…黒崎、俺は別にお前に同情してるわけじゃない。あんなものは好奇心とか興味本位の延長線でしかない。そんな半端な感情で動くほど俺は考えなしじゃないぞ?」

「どういうこと?」

「俺だって昔嫌なことがあって、他人が信じられなくなった。学校なんて強制的に集団生活をさせられる所なんて地獄だなんて思ったことが何度もある。これからの高校生活もどうやって平和に過ごすか考えてたくらいだ」

これは本心だ、正直な気持ちを素直に言った方が伝わるだろう。

「黒崎を見て思ったのは単純に凄いってことだ、自分の弱さを何としてもどうにかしようとしててさ。純粋に真っ直ぐに進もうとしてる気概を見たから、俺も変わりたいって思った」

黒崎も驚きながらもちゃんと俺の話を聞いてくれている。

「俺はそんな黒崎を応援する、そうしてる黒崎を見てたら俺も変われる気がするから。だからこれは同情なんかじゃない」

気持ちが先行して言葉が溢れてくる、もう止まらなかった。

「それとさっきの話はちょっと訂正だ、協力してやるって言ったけどそうじゃない。一緒に頑張っていこう。俺も黒崎も自分の弱点を克服するんだ」

協力ではなく、共同。

片方が頼るのではなく支え合う事、お互いに成長すれば伸び代は増えていく。

それがいいと今思いついた。

「だからこれから宜しくな黒崎」

「…ええ、宜しくお願いします。汐見君」

晶が出した手をしっかりと握りしめる黒崎の手には力がちゃんとこもっており、初めてみた凛とした態度に戻っていた。

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