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潮風薫るこの地にて  作者: 松田 業平
第一章 島の学校
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第3話 二人の出会い

それからは教科書の配布や簡単に学校の時間割などが発表される、明日から授業が始まり朝の8時半には着いておき朝の読書の時間が10分ほどある。

それが終わった後SHRをしてから授業だそうだ。

「最後にクラスの学級委員を決めます。男女一人ずつやね。学級委員っていってもそんな仕事はなかけんな。一年間やってもらいます。はいっ!立候補おるかな?」

先生がクラスのみんなを見るが立候補はいない。

まあ、積極的にやりたいものでもあるまい。

こういう時はじっとしているようにしている、時間が経ったら恐らくジャンケンで決めるようになるだろう。

と思っていたが後ろの席のやつが手を挙げた。

「はい、私やります。」

「おっ!いいね。女子の方は他には誰もおらんか?それやったら黒崎さんにお願いするけど。」

ほかの女子生徒も異論はなく、学級委員の一人は黒崎さんに決定した。

「女子の方は決まったね。それじゃ男子おるか?」

男子の方はというと全員沈黙していた。

残念ながらこのクラスには美少女転校生とお近づきになるために手を挙げるお調子者はいないらしい。

「…いないか、それじゃジャンケンして決めろ?」

なかなか決まらない委員に最終手段としてジャンケンで決めることになってしまった。

正直絶対にしたくない…。

あんな美少女と一緒に会議の時とか隣に座られてしまえば緊張でとても耐えきれるものでは無い。

他の男子生徒も同じなのかジャンケンの手に力が入っている。

その様子をクラスのみんな(女子)が見ているのでどうにも落ち着かない。

こういうのはさっさと終わらせた方がいい。

「えっと、じゃあ最後まで勝ったやつが委員をやるってことでいいか?」

俺の言葉に異論はないようで、

「分かった」

「それで行こう」

と賛同してくれる。

「よし、それじゃいくぞ。じゃーんけん!」

しかし、こういうのは言い出しっぺがよく決まるもので、呆気なく俺が最後まで勝ってしまった。

「それじゃ、今年の学級委員は黒崎さんと汐見くんになります。二人ともがんばってな」

今決まった学級委員の二人に拍手が送られる。先程ジャンケンした男子からはとても暖かい拍手と笑顔が送られた。

嬉しくて涙が出そうだった。


他にも係があったがそちらの方も順調に決まっていき本日のスケジュールはここまで。

時間帯としては昼の中頃と言ったところ。

「これで今年度初めのホームルームは終わります、改めて一年間よろしくお願いします。これからの時間は部活動の見学を自由にしてください。今週中に入部希望届けを提出してもらうからそのつもりで。はい、じゃあ学級委員の黒崎さん号令」

「起立、礼」

「「ありがとうございましたー」」

号令が終わった直ぐに多くの女子生徒が俺の後ろの席、つまり黒崎の席に集まった。

「東京から引っ越してきたってほんとに!?どこに住んでたの?」

「凄い綺麗ー!髪もつやつやだしおっぱい大きいし!」

後ろが騒がしくなってきたため直ぐに帰りの準備をして席を立つ。

それにしてもやはり転校生に対する歓迎はどこに行っても変わらず質問攻めから入るのは当然。

都会からしかも美少女ともなればさらに激しさをますだろう、それに巻き込まれる前にさっさと退散する。

バスの時間までは時間があるためひとまず図書室に行くことにした、この学校の図書室の下見もしておきたい。

ちらっと横目に眺めていたが驚きはしているものの笑顔で話している、何故だか少し彼女のことが気になった。


図書室に行ってみるとさっき居た教室の二倍位の広さで本棚を物色しているとライトノベルのコーナーを発見。

未読だが読んでみたかった本があって少し感動した、昼休みはここに来よう。

キリのいいところで本を閉じるとバスにちょっと余裕があるくらいの時間になっていた。

生徒玄関に向かい自分の靴に履き替えて外に出る。

まだ花の残る桜の木に見下ろされる、その下では陸上部と思しき人達が走っていた。

少し坂を下り棟を挟んだ駐車場を抜けるとグラウンドが広がっている。

この学校は全員部活動制で帰宅部がない、

部活はサッカー、野球、テニス、ハンドボール、陸上、バレー、バスケ、剣道、柔道、が運動部。

文化部は、書華道、写真、語学、放送、など、幅広く活動している。

特に陸上部は毎年1人ぐらい、上位大会や全国大会に出場する選手がいて、校門付近に横断幕が貼られているのを何回か見たことがある。

この陸上部の卒業生にはオリンピックに出場した人もいた。

確か去年は女子のハードルがインターハイで優勝していたはずだ。

俺も中学校の時に高校生と一緒に練習したことがあるが迫力があった。

高校のなかでも1番人数が多いのもあってか練習を始める時の挨拶とかも全員腹から声を出して「お願いします!」というので細かいところまで指導されているという印象だった。

だから俺も陸上部に入ろうと決めていた。

そもそも小学校からやっていたのもあって、陸上は好きだった。

中学校にはいってもそこは変わらず、高校でも陸上がやりたいと思っていた。

グラウンドでは手前でサッカー部、奥の方では野球部が、校門側では陸上部が活動していた。

その風景を眺めつつ山の斜面の対面にある橄欖通りという道を通る、道端に植えられている木が橄欖

世に言うオリーブの木らしい。

それから橄欖通りと名づけられたそうな。

その通りをグラウンドを眺めながら歩いていると一人じっと立っている少女を見つけた。

黒崎 薫だった。

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