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潮風薫るこの地にて  作者: 松田 業平
第二章 日常
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第31話 大会の余韻

高校総体は終わった、陸上部の皆はこの日のために今まで練習を積み重ねてきた。

それぞれの目標を胸に各々自分の出場種目で全力を尽くして戦っていた、でもこういった勝負事では勝ち負けというのがあり勝って笑う者や負けて悔し涙を流す者もいる。

そんな中めまぐるしい成果を上げたのは部長の青方先輩と姉の奈々だった、記録としては次の上位大会でも十分通用するほど。

部長にいたっては全国大会すら手に届くのではないかとささやかれている。

先輩として同じ種目選手として誇りに思う、それに比べて俺はと言うと予選二回戦敗退だった。

別に自分の実力を見誤っていたわけでもなく全力でぶつかっていった、でも中学生の頃とは比べものにならない雰囲気と緊張感で集中できなかった。体調は万全だったはずなのに体が思うように動いた気がしなかった。

タイムは意外にも自己ベストだったのだが二回戦では他校で年上の選手にあと一歩及ばなかったのだ、なんとも言えない不完全燃焼。

結果が伴わなかった事に不満があるというならそれはただの傲慢だ、たかだか一年生がと思ったが決勝戦には俺と同年代の選手もいた。

悔しかった、あのときこうしていればという根拠のない後悔に襲われた。

「お疲れ様、汐見君」

「・・・ああ、黒崎か。今里先輩の方はどうなった?」

「残念ながら決勝で惜しくも負けてしまったわ、でも三位ですって凄いわ」

「そっか、やっぱり年期が違うんだろうな」

他の先輩達もそれなりの結果を残していた、ベスト16や8の先輩も少なくない。

一年なんかで最も規模の大きいこの時期の大会でなら充分誇っていい記録だ。

「汐見君も一回戦突破しているし、二回戦ももうちょっとだったんだしょう?記録を見たけどほんの少しの差だったみたい」

「そうだったのか、教えてくれてありがとうな」

「ええ、今の私はこれくらいしかできないからね」

黒崎は今回の大会ではメンバーには選ばれなかった、ただ黒崎の他の候補が選ばれただけの話。

今年の新人戦では華々しくデビューするだろうと思う、色んな意味で。

「だから次こそは私も頑張りたい、だから汐見君も一緒に頑張らない?」

黒崎は俺の今の心境を察してくれてただそれだけを言いたかったんだろうか、だとしたら的確過ぎてぐうの音も出なかった。

「かなわないな、・・・そうだな次こそは必ず」

「ええ、私達には次がある。」

ああ、そうだ。

俺は結果がどうのとかそういうので落ち込んでいたわけではなかった、ただ誰かに認めて欲しかったんだ。

本当にまだまだ子供だと、感じつつも黒崎の言葉は素直に嬉しかった。

「あー、ここにいたんだ薫ちゃん。あれ?晶も一緒だったんだ」

「あら海さん、どうしたの?」

「そうそうこれから部長とか今里先輩の表彰式があるから見に行こうって思って」

「そう、それは見逃せないわね。汐見君も奈々先輩を見に行かないとでしょう、姉弟なんだから」

「そうだな俺も行く」

「よし、じゃあ早く行こう」

そうして海の誘いで表彰式に向かった。

「あ、あと言い忘れてたけどお疲れ様晶。初戦で勝てたのはよかったんじゃない?タイムも中学生の頃より速くなってるし」

「お、おう。てかなんで知ってるの?」

「それは今はどうでも良いでしょ、晶の組は速い人ばっかりだったけど他の組なら準決までは行けてたよ、まあ運も実力のうちってね。秋の新人戦ならベスト8くらいいけるんじゃない?」

「そっか、流石マネージャーよく調べてんのな」

「ふん、どうせ気弱な晶のことだから落ち込んでるだろうなと思って慰めてやってるんだから感謝してよね」

「そう思うんならその余計な一言いらなかったんだけど」

「うるさいな。ほら、早くしないと表彰式終わっちゃうよ」

「へいへいっと、サンキューな」

「別に」

海なりに俺のこと考えてくれたことに驚いたけど、高校生になってから丸くなったというかなんというか。印象が少し変わった気がする。

体型は中学とは変わらないけど・・・。

「なんか、晶変なこと考えてなかった?」

「考えてねぇよ、なんの根拠で」

「女の勘と腐れ縁の経験から」

「割と説得力あるから止めてくれ、何も考えてない」

「ならいいけど」

海に疑いの視線を向けられつつも移動していき、時間には間に合って無事表彰式を見てきた。

それからは片付けや帰る準備を整えて急いで、会場を後にする。

他校よりもそうやってせわしないのは単純に予約した船の時間があるからだ。

離島の学校の特徴とも言えるかもしれない、長崎県は他にも島の高校がありそのあたりの高校もうちと行動は変わらない。

帰りのバスの中は皆寝ていてとても静かで、眠れない俺は一人窓の外を眺めて黄昏れていた。

入学してから大会まであっという間だった、三年生は上位大会に進む選手を除いてこれで引退となる。

まだ一年の俺には想像できない、三年生の大半は試合が終わった後泣いていた。

男女問わず、俺は残りの期間こんなになるまで頑張る事ができるのか考えていた。

不思議と多分そうなったら俺は泣くかもしれないと思った、中学生の時もそうだったし。

それから船に乗って島に着き港で最後に先生から迎えに来た家族に報告をしてから、全員に話をした。

三年生に長い間の労いの言葉と二年生以下にはこれから先輩のいない環境で頑張っていかなければいけないと言うことを言われた。

終わりに挨拶をして解散となりそれぞれの家に帰って行った。

「姉ちゃん、優勝おめでとう」

「いきなりどうした、びっくりしたよ」

「奈々、すごかじゃん。次の大会はいつになると?」

「七月だって、それまではまだ練習しないとね」

「ふーん、そっか」

今年の大会はこれで終わり、そしてあと少ししたら定期考査。

それが終われば夏休みだ。

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