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潮風薫るこの地にて  作者: 松田 業平
第二章 日常
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第28話 オフ日

今日は遠征の半ば、練習内容もオフ日ということできついメニューじゃなくストレッチや遊びとして鬼ごっことかもするらしい。

毎年のことで先輩方は驚きはしなかったが楽しみにはしていたようだが、一年生ははしゃいでいる。マネージャーも参加でかなりの規模の鬼ごっこになりそうで俺も楽しみにしてる。

「お前本当に体柔らかいな、痛くねえの?」

「うーん、まあ痛気持ちいいというか。体ほぐすのは好きだしな」

「いやそれはきもいぞお前」

「きもいとかいうなよ、ほら変われ」

午前中は二人一組でストレッチ、新町と一緒に組んでしてるがずっとこんな調子だ。

「それに比べてお前固いな」

「痛たい痛い、そんな押すなって」

「体硬いと怪我しやすいぞ?それに可動域が広がってストライドが広くなるし」

「余計なお世話だっつうの、痛ぇって!」

昨日のこと、思い出すとなかなか恥ずかしい。

男女二人で夜道を歩いたというのは今までの人生で経験がなったし、それに自分の黒歴史を知られてしまった。

いつかはばれると思っていたがこんなにも早いとは、まだ出会って一月くらいしか経っていないのに。

原因はわかっている、こんなことを知っているやつなんて海しかいない。

まあいまさらどうこういうわけでもないか、海にとってもあの時の話をしたということはそれほど黒崎のことを信頼できると思ってきた証拠だ。

それならよしとしておこう。

「だから痛いって、汐見!おい話聞けって」

「おお、わりぃ考えごとしてた」

「ほらさっさと変われお返しだこの野郎」

「おう、しっかりと伸ばしてくれよ」

終わった後は、軽く流しをしてから広いグラウンドを使った陸上部全員による鬼ごっこが始まった、形式は増え鬼で最初の鬼は部長の青方先輩と副部長の今里先輩になった。

どちらも県大会上位レベルの実力、はじめから全力で追い回した結果すぐに最初の一人目が捕まりそれから徐々に鬼の数は増えていく。

人数が多いとはいえ広いこの敷地なら全力で走っても周りにぶつからないからまだ生き残っている、しかし鬼もそろそろ半分になってきており逃げるのにも苦労し始めてきた。

「おっ、晶まだ生き残ってたんだ」

俺を見かけて近寄ってくる海、だがしかし。

「っと、そう簡単にだまされるかっての」

「ちっ、お見通しか」

距離を詰められ手を伸ばされるもそれを回避して距離を取る。

「いやお前が捕まったの見えたし」

「なんだ、つまんないの」

「不意打ちが不発に終わったのは残念だったな。あきらめて他探してこい」

「まああんたには勝てないからしょうがないか」

負けず嫌いの海にしてはおかしいと思ったその瞬間、嫌な予感がして背後からの敵に気づいた。

「取った!」

「なんの!」

とっさに姿勢を低くして反復横跳びの要領で跳躍、すんでのところで避けられたが、それは思わぬ人物だった。

「黒崎?お前だったのか」

「あら残念、あともう少しだったのに」

「惜しい、てかなんで晶後ろに薫ちゃんがいるってわかったの、エスパーなの?」

不意打ちをしてきたとはいえ、海が一人でこんな無鉄砲に俺を狙うなんて勝算もない上に疲れるようなことをしないと思ったからなんとなく違和感を感じていたが、それにしたってあんな余裕そうな態度からして何かあるなと長年の経験と直感がそうささやいていたのが当たったらしい。

「でも、黒崎の方は大丈夫なのかこんなことして」

「追いかけられるのは怖いけど、追いかけてタッチするくらいならなんとか。さっきも海さんと協力してなんとか男子を捕まえる事ができたわ」

「なるほどなっ!」

会話している最中でも油断ならない、二対一。

相手が海と黒崎なら少し分が悪い、黒崎はもちろん海も中学の時は俺と同じく陸上の学校選抜に選ばれるほどの足を持っている。

なるほどこれは手強い、だがしかしここで負けるわけにはいかない。

この包囲網を突破して少しでも長く生き延びて最後の一人になるまで俺は逃げ続ける、遊びとはいえこれも部活の練習だ。

それに全力でやらないと面白くない、正直俺自身こういう体を動かして遊ぶのは昔からの大好物でやる気はまんまんだ。

「さあ、薫ちゃんはさみうちで行くよ!」

「了解、汐見君逃がさないわよ!」

「んじゃ、やりますか?」

女子二人から全力で追いかけられると言う、幸せを感じつつも俺は全力で逃げ回った。


「ふう、きっつい」

「晶マジですばしっこいんだから、もう疲れた」

「本当に、まっすぐに走ったかと思えば私と海さんがいない方向に転換して挟もうにもうまくいかなかったわ」

「ふっ、鬼ごっこっていうのは単純に足が速いだけじゃ勝てない戦略も大事なんだよ」

結局のところ俺は二人の包囲網を振り切り、その後も大立ち回りを続け、最後の一人になるまで逃げ切った。

今はその休憩中でそれが過ぎたら今度は二回戦が行われるらしい、しかし次は最後まで生き残った俺が最初の鬼だ。

まあ追いかけるのもそれはそれで楽しめるから全然構わない。

「それにしても、黒崎も楽しめてそうで良かったな。よく考えれば結構危ない感じだけど」

「私も最初はどうなる事かと思ったけど、青方先輩と今里先輩が気を回してくれて。早めに今里先輩に捕まえてもらっていたの」

「なるほど、そういうことだったのか。なら今回もそういう風にした方が良さそうだな、奇跡的に最初の鬼は俺だし。」

「まあそうした方が良いけど、でもどうするの?最初から晶が薫ちゃんを捕まえるのは駄目でしょ?」

「まあそれだけはやめとかないといけないよな」

そんなことをしてしまったら目立つし周りからの印象が悪くなってしまうことだろう俺が、最悪男子からは間違いなく血祭りに上げられるし女子からもくずとしか見られないはず。

「じゃあどうするの、汐見君?」

「考えはある、まあ任しとけ」



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