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潮風薫るこの地にて  作者: 松田 業平
第二章 日常
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第23話 恋バナ

今日も同じく一日掛けて練習を行ったのだが、二日目の練習よりも厳しくきついメニューになっていて休憩の時には皆して倒れ込むようになった。休憩が終わってもだらだらしていると先生から声を張り上げられし、途中で何人か体調不良者が出ていた。

幸い軽いものばかりで長く休憩を取った後に復帰するものや明日には元気に練習できる位だったらしい。

なんとかそんな今日の練習を乗り越えて、宿に帰ってきた。

今夜は話し合いもないし、ゆっくりと練習の疲れを癒やそうと早めに風呂に入って部屋でごろごろすることにした。

少し長めに風呂に入ってから部屋に戻ってきたのだが、なんだか先輩達ももうすでに寝る準備を済ませて布団を敷いていた。

時間はまだ七時にもならないくらいなのに、まあ今日の練習でみんな疲れてるんだろうと思って静かに自分のスペースで本を読むことにした。

しばらくして見た感じ全員が部屋に集まったのを見て部長が立ち上がった。

「皆、ちょっと聞いてくれ」

部長の言葉で場の空気が静かになりみんなして話を聞く体制になった、一年の部員は何事かと少し身構えているが先輩方はなぜかにやにやしている。

「今年も多くの部員恵まれてこれだけの人数集まってこうして一つ屋根の下で遠征できている。このメンバーでこうして時間を過ごすことはもうないだろう、だからこそこんなせっかくの機会に・・・」

後輩達が固唾をのんで見ているなか部長の次の言葉を待っていると。

「みんなでガチ恋バナをしようと思う」

「よっしゃー!」

「待ってたぜ!」

「そーら、一年。丸くまれ丸く!」

年代関係なく無差別に丸くなった俺たちはまるで円卓会議のように隙間なく並んでいく、しかしなぜ俺の隣には屈強な投擲の先輩がしかも両隣にいるかがよくわからない。

「うっしそれじゃまずは、今陸上部の女子の中で好きなやつを一人ずついってみようか。俺の隣から時計回りな」

とうとう始まってしまった、やばいこういうのは昔から苦手で良い思い出がない。

「一番最初は、俺か。うーん悩むところだが二年の汐見!」

「おおー!」

「てかお前は去年と同じじゃねぇかよ」

「というか今年は弟が来てるのに良く恥ずかしげもなく言えたもんだな」

自分の身内のそういう話を聞くとこっちまで恥ずかしくなるのでほんとうにやめてほしい。

それからテンポ良く好きな人の名前が出てくる、その中には俺の知らない先輩や同級生の名前とかも聞こえてくるが。

「俺は、転校生の黒崎さん!」

「次は俺か、うーん一年の元浜ちゃんとか結構かわいいと思う」

など、俺の知ってる名前が次々と出てくる。

だがしかし陸上部のなかで美人と言えば、やはり今里先輩だと思うんだが。

みんななんとなく部長の方を見て遠慮してるあたり、暗黙の了解と言うやつなんだろう。

それに他人の事を気にしている暇はなくそろそろ自分の番が回ってきた。

「さあ次は汐見弟の番なんだけど・・・、」

なんだろう今の間は、凄く嫌な予感がする。

「なんだか最近お前黒崎ちゃんと元浜ちゃんと仲良いみたいだよな?」

「昨日も楽しく二人と休憩中にお話しててみたいだけどなぁ」

なるほど、こうして普通に恋バナして親睦を深めようと言うのもあるんだろうが。

こうして新しく入ってきた新入生いじりも目的に入ってるのか。

「さてさて、そんな青春期真っ盛りの汐見弟の好きな人って誰なんだろうな?」

やられた、しかしこの空気からはもう逃げる事はできないだろう。

おそらくこの屈強な二人が俺の両隣に配置されているのもそのためだろう。

ため息をついてもうあきらめる、こうなればもう腹を括るしかない。

「俺の好きな人は・・・・・・です。」

俺の台詞にけたましい歓声が起きるのよそに、女子部屋の方でも同じようなことをしていた。


「ねえねえ、春香。最近は充君とどこまで行ったの?」

「えー?いやどこまでって、清く正しい交際をしていますがなにか?」

「本当?」

「というか、島ではつきあってても何もすることないじゃんデートしたいけど行くとこはもう全部行ったし」

「そうなんだよね夏になれば一緒に海とか行くのに」

「それが田舎のつらいところだよねー」

こちらの方は、男子とは違って年齢関係なく楽しくお菓子をつまみつつ恋バナを楽しんでいた。

「黒崎ちゃんもこっちきてから大変じゃない?島にはコンビニあるけど二件しかないし」

「まあそうなんですけど、東京にいたときはまだ中学生で遊びに行ったり買い物したりとかはしていなかったので」

それからは話の標的は黒崎に移り、内容もどんどん広がっていく。

「正直花のjkが高校生活するには寂しすぎると思わない?」

「そうですか?島だと夜でも静かで明るくないから寝るのにストレスを感じませんし、今時は買い物もネットでできますしね。」

「そうなんだけどね、彼氏作っても遊ぶところがもう公園くらいしかないんだよね」

これが田舎のひがみネタの鉄板である、島にはゲームセンターはあるが、もはやプリクラとしょぼいクレーンゲームしかない。

「彼氏と言えば、今年の一年生は結構粒揃いよね」

「確かに、去年はなんかぱっとしない男子ばっかりだったけど」

「今年の有望株は汐見の弟君じゃない?姉弟揃って整った顔しよってけしからん」

「ねえ、お姉様弟君ちょうだい?」

本人が聞いたら震え上がるような台詞にも、奈々は動じていない。

「え?冗談でしょ。あいつ根暗だし結構なオタクだよ」

「えーでも、顔良いし、足も速いし、体格も平均的で確か一組だったよね。てことは頭も良いって事じゃん。うわあ流石奈々の弟」

確かにはたから見ればスペックの高い男子に見えなくもない。

「でも私小学生の時から一緒でしたけどなんかもう昔から話すのが苦手で中学生の時もなんかエッチな小説とか読んで女子からは全然人気なかったですよ」

本人のいないところで凄い話が繰り広げられているが、話はどんどんヒートアップしていきもう誰も止める事はできない。

「そうなの?私は中学の時しかしらないけどでも彼イベントごとでは結構盛り上がるタイプだったよね。男子の応援団でも中心にいたし、三年の頃は体育祭の時の徒競走で全校生徒の前で一位予告してほんとに一位取っちゃったし、あれは面白かったし凄かったよ」

「私も同中だったけどそのほかにもリレーで逆転してクラス優勝したこともあったっけ」

「それで県大会にも行ってたしね晶のやつ」

「汐見君って前から凄い経歴を持ってるのね」

晶の知らないところで色々な話を聞く黒崎も興味津々であった。

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