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潮風薫るこの地にて  作者: 松田 業平
第二章 日常
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第22話 方針

「・・・ごほん、では色々ありましたが早速話し合いをしましょう」

「それで、やっぱり先輩も参加するんですね」

「もちろんだよ、困った後輩を助けるのが先輩ってもんでしょ?」

さっきめっちゃ困った事されたけどな、とは言わないでおこう。

「それで、黒崎ちゃんと弟君の問題を解決したいと」

「はい、そうなんです」

やっと、真面目に話す雰囲気になってひとまず安心した。

「まあ、俺の方よりも黒崎の方が優先度は高く考えた方が良いと思いますよ。実際に生活に影響してますし」

「確かに、充の時の件があるからね」

「え?部長もこの話知ってたの!」

いかん、この感じだとまた無駄な時間を使いそうな気がする。

早めに本題に入った方が良いだろう。

「それで、黒崎のトラウマについてなにか解決する方法を探してるんですけど。先輩なにかアイデアとかありますか?」

「そうだね、実は私も黒崎さんの事情を聞いてから少し考えてはいたんだけど。やっぱり少しずつ男性に慣れていくのが良いと思うかな」

それは俺も考えてはいたんだが、今の黒崎にはまだ段階的に早いと感じる。

未だに日常生活を見てると普通の男子生徒と関わる事もあるが、どうしても挙動不審になってしまっている。

今はなんとか来たばかりとか元々女子校で男子に慣れていないとかで、男性恐怖症とまでは思われてはいないだろうがそれも時間の問題だろう。

それを考えるとちょっとでも荒療治である程度の耐性を付けさせておくべきか。

「その方法だったら男子を練習相手として探さないといけないですね、まあ生徒ならいくらでもいますけど」

「何言ってるの?元浜ちゃん、そこにうってつけの男子がいるじゃない」

勢いよく指さされたのはこの場に一人しかいない男子である俺だった。

「黒崎ちゃんの事情を知ってるし、お互いに全然知らない仲でもない。黒崎ちゃん自身弟君になら多少は接する事ができる。もう完璧じゃない?」

「俺に練習台になれって事ですね」

「そう、これが私の考え。他に意見がないならこれしかないよね」

今里先輩の意見は至極まっとうだと言える、今俺たちにできることと言えばそれくらいしかない。

理論的には文句はない、ただそれを本人が認められるかどうか。

「私は!」

黒崎の言葉を皆が見守る、これは黒崎の問題。

彼女がどう受け止めるかそれしかない。

「私は・・・、やります。その方法で少しでも苦手が克服できるのであれば。でも」

続く言葉の前に俺の方に視線が向いた、それはとても自信がなく不安そうで。

「これは私の問題だけど、汐見君の協力なしでは話にならない。だから・・・」

しかしさきほどとは違い今度は覚悟と決意を持った瞳で俺を見た。

「汐見君、どうか私に協力してください。お願いします」

思わず口調が変わったのを見て一瞬バス停でも黒崎と重なって気がした。

そしてその頃と俺の気持ちは変わらない。

「わかった、全力で俺も頑張る」

「ありがとう、心強いわ」

「まあ今でも力貸してんのに、改めて言われるのもな」

「それはそれ、これはこれよ」

「ではこれである程度の方針は固まったね、それじゃそれにそっていくつか目標を決めていこう」

「目標ですか?たとえばどんな」

「まあそうだね、たとえば手をつないでみるとか」

その提案に対して、黒崎は想像してしまったのか耳まで真っ赤になっている。

俺もそんな姿を見てしまいかなり心臓の鼓動が早まる。

「んんっ、そこらへんのさじ加減は黒崎に任せた方が良いんじゃないですかね?」

「うんうんそうだよね、薫ちゃんのことは海達にはわからないし自分のペースで頑張った方が良いと思うし」

海と俺の意見を聞いた今里先輩も納得したのか「しょうがないか」と納得してくれた。

こんなもんかと思い時間を見てみるともう八時半を過ぎていてちょうど一時間くらい経っていたらしい、そろそろ部屋に戻ってゆっくりしたい。

「それじゃ今日のところはこれまでだね、それじゃ解散というわけで薫ちゃん、今里先輩早く部屋戻ってお菓子食べましょう!」

「そうだね、そうしよっか」

「ええ、それではお先にね汐見君お休みなさい」

「おう、お疲れさん」

海の妙に高いテンションに乗せられて二人はそうそうに自分たちの部屋に戻っていった。

でも、さっきから海の様子がおかしいと思ったのは気のせいだったのか。

元気に振る舞っているが、なんというか無理をしているように感じた。

まあ海は昔なじみとはいえ彼女のことはよくわからない事ばかりで考えても無駄だ。

それよりも黒崎の男性恐怖症の克服のための練習相手になるって事の方が重要だ。

そのことがなかなか頭を離れず今晩はなかなか熟睡することができなくなった。


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