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潮風薫るこの地にて  作者: 松田 業平
第二章 日常
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第19話 夏季遠征

窓から見えるどこまでも続く水平線は、この天気の良い日差しを反射して宝石のように光り輝いている。

今は五月の大型連休を利用しての陸上部の遠征のために、船に乗って本島に向かっているところ。

今回の遠征は同じ長崎県内の佐世保市で行うということだ、今年は祝日がうまく繋がったのもあり九連休という長い期間あるが流石にフルで練習させるほどうちの顧問も鬼ではなかった。

今日は午前から練習用の道具などを一年生が分担して運び船で目的地まで移動して後はそれで本日の活動は終了、それからは限られた時間と範囲内であるが夜食や飲み物などの買い物をしたり各々の部屋で自由にして良いオフの時間となり本格的な練習は明日からとなる。

それから連休の最後の二日を残した六日間はかなりハードな練習メニューが組まれているらしい。

離島とは違い、グラウンドの面積も広く設備面でも充実しているためよりよい練習を多くしておきたいためなんだろう。

「ご乗船中のお客様にご案内します、この船はまもなく目的地の佐世保に到着いたします。お降りの際は着岸するまでは危険ですのでお席からお立ちになりませんようお願いいたします。長い航海大変お疲れ様でした、またのご利用お待ちしております」

これまで何回もこのアナウンスを聞いているが、島から離れて本島に向かうのは少し興奮するもので船旅というのも天気の良い日は適度に揺れるととても気持ちよく眠れるものだ。

港に着いてからはこの大人数で町を歩くわけにもいかないため大型のバスを借りて目的地まで向かう、市内とはいえバスでそうかからない。

今日の行くところは宿泊場所の旅館だ。

これから練習場所へはまたもやバスで行くらしい。この遠征でも個人で費用を出すのだが一万近くとられていた、もちろん親が出してくれるのだが流石に二人分二万円ともなると相当に渋られた。

「ほら新町起きろ、着いたぞ」

「おう、よく寝たわ」

「薫ちゃん大丈夫?」

「ええ、一応酔い止めは飲んできたから。やっぱり皆は平気なのね」

「まあ修学旅行とか家族で旅行に行くときとかで何回も乗るからね、もう慣れちゃった」

「これが島人というものなのね」

アナウンスの数分後船が着岸し、全員降りる準備を始める、降りたら港のターミナルで人数確認とトイレ休憩を取りバスに乗り込んで宿泊場に向かう。

バスの中で部屋割りと向こうでの注意事項などが知らされた。

食事は六時から、それから門限は八時半就寝時間は十一時だそうだ。

部屋割りはもうざっくりと男女別とのこと、学年関係なく親睦を深めるのもこの遠征の目的なんだそうだ。

現在の時刻は午後の五時前、宿泊所に着いて荷物の整理やら明日の準備やらをしていたらちょうどご飯の時間になりそうだ。

男子陸上部員総勢二十五名ほどその人数が入りきるとなれば大部屋しかない、この遠征中健康的な男子高校生である自分たちが静かに宿泊するだけなんてまずないだろう。

少し心配になってきた。

荷物の整理も一段落し続々と夕食会場に部員が集まってくる、そこには普段では食べないような料理が並んでおりみんなかなり興奮気味で最近のおしゃれ女子らしく写真まで撮っている。

まあこれも遠征の醍醐味と言うやつだろう、全員が揃ったところで小浜先生から一言。

「んじゃ全員揃ったな、みんな船での移動で疲れたやろうしまた明日からはきついメニューを組んでるから腹一杯飯食って備えておくように。はいじゃあ部長」

「はい、わかりました。合掌、いただきます」

「「いただきます」」

目の前のごちそうをおいしそうに食べていく、これが都会の味というやつなんだろう特別な味がする気がする、田舎者だからだろうか。

「それと言い忘れてたがここはご飯味噌汁おかわり自由やけんなー」

おかわり自由だと・・・。

その言葉を聞いた瞬間多くの先輩達の目の色が変わった。

遠征、合宿、おかわり自由。

そんな単語を聞いてしまったからには健全な男子高校生としては、やるしかあるまい。

ライバルは多いはしかし、中学の頃はこれでもダントツで食べる方だ。

小学生の時は食べ過ぎて怒られたこともある。

先輩方も遠慮なく続々とご飯と味噌汁のおかわり

にいっている、俺も負けじと食らいついた。

結局、投擲の先輩が十杯を余裕で完食次いではなんと部長が九杯も食べていた。

俺はなんとか六杯まではいったがこれ以上はリバースしそうなので止めた。

食事を終えて部屋に戻ってからこれからどうしようかと考えていると、

「おーい、汐見。風呂行こうぜここ露天風呂もあるらしいぞ」

「おっまじか、行く行く」

美味しい食事の後は気持ちいい露天風呂とは、これも醍醐味と言うやつだろう。

新町に誘われるままに行くことにした。

「そういや、どれくらい飯食べた?」

「六杯はいったぞ」

「なんだお前もか、頑張ってもそれくらいだよな」

「なあ、うちの先輩達化けもんだよな」

「あれくらいしないと駄目なのかね」

「かもな」

露天風呂に浸かりつつぼんやりと夜は更けていった。

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