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潮風薫るこの地にて  作者: 松田 業平
第一章 島の学校
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第1話 入学式

4月、晴れていて日差しが心地よく桜が舞い散るこの季節。

今年から高校へと入学する汐見 晶は学校行きのバスを待ちながら本を読んでいた。

「………ふっ」

中学生の頃からハマったライトノベルの小説を読んでいが、

これがなかなかに面白い。

格好いい主人公に、美少女や美女のヒロイン。

数々の困難を乗り越えて結ばれる二人。

物語のキャラクターに感情移入し自分が主人公になった気分になるのがたまらなかった。

そうしていくうちに現実の生活はつまらなくなっていき休日などはほぼ二次元に時間を費やしている。

「高校か…ダルい」

生まれも育ちも離島で、幼稚園からいままでここで暮らしてきた。

島という環境は変化というものが乏しく、物心ついてからというもの周りの景色は身長が高くなっていきつつも見慣れたものばかり。

人間関係もそうだ、これから通う高校では小学校や中学校から一緒に上がってきた生徒ばかりで新しい出会いなどこの狭い島の高校でこれっぽっちもない。

学校なんてものはそう多くなく学年のクラスも二つあったら多い方。

そして小学校で見知ったやつは大抵中学校、高校と同じ所に行く。

そんななか俺は小学校の頃いじめにあっていた。

原因は好きな子に告白しその時に酷い振られ方をした事。

女子からはキモがられ、男子は味方にはなってくれなかった。

ろくな解決もないまま中学校に入ったためいじめはないが仲良くなれるはずもなかった。

初めて会う他の中学生とは喋ったりしたが友達と呼べるほどの関係だったかは定かではないのでカウントできない。

人数が増えただけでは友達は出来ない。

島外への進学も考えたのだか、家はそこまでしてやれる余裕がないと言われ泣く泣く残ることにした。

そんなこんなで小中ぼっちを貫いた俺に高校生デビューなどあるはずもない。

その時から俺は二次元にハマりこみクラスの連中からは離れて孤独に過ごしてきた。

これから通うことになる高校も同じ中学のやつがほぼ全員進学することになる。

高校生デビューなんてものはない。

高校生活では今まで以上に集団としての意義を問われることになる、コミュニケーションが最近の社会人の重要なスキルとなっている現代。

何人かの班を作っての活動なんて中学生時代は俺だけ話に入れないで大変苦労した、もうあんな思いはしたくない。

まあ、実際のところ嫌われていた時期は終わりただ単に友達がいないやつとかあんまり喋んないやつって印象を持たれているからそれで構わないと思う。

これからの高校生活も静かに平凡に過ごしていくんだろうと考えていた。


入学式は10時から開始で、新入生はその時間当たりに集合となっている。

集合場所は先日の入学オリエンテーションで通達されていた剣道場、一度行ったことがあるため迷わずに着いた。

上五島高校、五島列島の名に関したこの学校は島に二つしかないうち生徒数が多い方の学校で、普通科4クラス、電気情報科1クラスといったところ。

1から4にかけて数字が小さいほどアッパークラスという風になっているらしい、聞いた話によれば。

因みに晶の所属クラスは一組、自慢ではないが中学生の頃からクラスでもトップクラスの成績で、入試の問題も自己採点では八割方取れていた。

それと電気情報科だがそのクラスに行ったやつに聞くところには、

「俺、空欄適当に埋めたけど受かったわw」

と、頭が良くない生徒が目立つ。

と言ってもこの高校は定員割れをしているため地元では落ちたヤツは聞いたことがない。

剣道場に入るともうほとんどの生徒が集合しており近くの者と早速親交を深めていた。

見たところ右の方から一組の順番らしい、列が並んでいるところに入り込む。

そこでじっと待機、周りは周りで喋っているため話しかけてくることはなかった。

しばらくして時間になり入学式の簡単な説明の後、会場の体育館に入場。

流れとしては一人一人が名前を呼ばれてそれに返事をしていくというもの、新入生は百人いるかいないかという程のためそこまで時間はかからなかった。

校長挨拶などの祝辞が終わり、新入生代表の挨拶の場面になる。

この学校では、新入生の中で一番成績が良い人が指名されるらしい。

姉、汐見 奈々も去年任されたらしい。

「新入生代表、黒崎 薫。」

「はいっ!」

透き通るような返事が響いた後、華麗な佇まいと緊張もなく堂々と歩くその姿に一堂の注目を集めた。

首まで伸びた艶やかな黒髪が眩しく、整った顔は凛としていて式の空気に相応しい。

「潮風薫るこの地にて…」

その言葉一つ一つに会場の全員が聞き入り、終わりには大きな拍手が送られた。

晶も終始目が離せなかった。

それからは自分のクラスの担任や学年の科目の先生の説明などもあり、これからお世話になる先生の顔ををしっかり覚えるように努めた。

まだ覚えていない校歌に四苦八苦しながら入学式は終了、その後は各クラスに別れ初めてのHRだ。


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