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潮風薫るこの地にて  作者: 松田 業平
第二章 日常
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第17話 作戦会議

こうして色々あったものの今朝の会議は開かれる事になったのだが。

「凄い、内容のメモをとるなんて本格的だね」

「会議というからにはこういうのも大事かと思ってね」

前回までは黒崎と二人っきりでどぎまぎしていたというのに、女子が一人加わったことでさらに緊張感と居心地の悪さが増した。

「でもさ思ったんだけど今時そんなアナログなことしなくても家に帰ってから電話なりSNSなりですればよくない?」

「俺は自分用の携帯持ってないから無理」

「今時じゃないね、みんな持ってるのに」

「それは仕方ないだろ、家庭の事情ってやつだ」

昔からうちはそこまで裕福ではないが貧乏でもないというか、贅沢をあまりしない家庭だった。

少しほど前はみんな携帯ゲームを親から買ってもらい、友達の家に集まって通信で協力だの対戦だのしていた。

俺もその波に乗ろうとして、親にねだりもしたが。

「なんでそんなもんがいるんだ?あんな高いもんうちじゃ買えん」

と、説得の余地なし。

そのブームに乗れず、俺はうちにある古い据え置き型のクリア済みゲームを一人でぽちぽちやってよく休日を過ごしていた。

なんか言ってて悲しくなってきたなー。

「だから、この時間に集まって話すしか今のところ機会がないの。ここまではいいかしら、元浜さん?」

「そっか、こんな朝早くから大変だね」

「お前も協力するんだから人ごとじゃないと思うんだけどな」

「うっ、確かにそうだ」

「それじゃ、今回の本題に入りましょう。この前のことでまた協力してくれる人が増えたわけだけれど」

「また一人増えたけどな」

「ええ、でもまだ具体的な行動目標が決まってないからこれ以上はもう必要ないと思うの」

「まあそれが妥当か、それで今日はその目標を決めるって話か?」

「そういうこと、なにか意見はあるかしら」

「うーん、結構難しい問題だよね。男の人が怖いって事だよね。・・・だめだ思いつかないよ」

みんな考えるものの、そうそう名案が出るものでもない。

それはそうだ、三人とも普通の学生。

このような専門的なことについては知識がない。

「よし、こういうときこそネットで検索しよう」

海は早速ポケットからスマホを取り出し調べだした、こういうところでは海の加入にも意味はあった。

「そういえば、黒崎は持ってないのか携帯」

「私も今は持ってないけれど、お母さんがもう少ししたら買ってくれるって」

「そうか・・・」

だとしたらそうなると、このなかで持ってない俺は本当に必要ない存在になってしまう。

「あ、あったあったこれだね。えーとなになに、ふむふむほうほう。」

無駄に口に出してちょっといらっとくるが、検索に引っかかったらしい。

「元浜さんなんて書いてあるの?」

黒崎も興味津々でノートに書く準備をしている。

「それがね、具体的に言うと病院に通ってカウンセリングを受けたり最近ではお薬を服用したりする方法があるらしいよ」

普通に考えたえらそのような治療方法がやはり最適なんだろう。

「そう、やはりそういうことなのね」

黒崎だってこういうことを調べなかったわけじゃないだろう、同じ結果と言うことに少なからずがっかりしているはずだ。

「なにか、病院に行きたくない理由でもあるのか?」

「それはその・・・」

「ちょっと晶、そこまで踏み込んで聞く?」

「いえ、元浜さん。こういうことはちゃんと言った方が良い」

「いや、俺も悪かった無理に聞き出すもんじゃなかった。」

理由がどうであれ病院に通うというのはこういう問題となると勇気がいるのだろう。

だからこそ俺や身近な人を頼っているのだ、それくらいは察していてもおかしくなかったのに。

俺もまだ考えが甘い。

「ありがとう、気遣ってくれて」

「おう、それで海。なんか民間療法みたいな記事はないのか?」

「ちょっと待って、あった。なんかそういうのって昔のトラウマっぽいのを治すのが良いらしいよ」

「トラウマか、黒崎の場合だと父親からのdvになるんだろうな」

「えっ、黒崎さんそんなことがあったの!?」

「ええ、中学生の時からひどくなって、それで離婚してお母さんの実家があるこの島に引っ越してきたの」

ある程度事情を話したのだが、それを聞いた海はというと涙を零していた。

「え?どうしたお前」

「元浜さん大丈夫?」

「うっ、うっ、ぐすっ。だってそんなかわいそうな事ってないよ。実の家族からひどいことされて、それが原因で黒崎さんは今でもこんなに苦しい思いをしてるなんて・・・あんまりだよ」

本当にこいつは、人が良いと言うか純粋というか。こんなことで泣いてしまうのはどうかと思ったが別に悪いことでない。

「元浜さん、ありがとう。私の事を知って本気泣いてくれたのはお母さんを含めて貴方で二人目よ」

黒崎にとってはとてもうれしい事でもあるだろう、ここまでくれば海のことも信頼できると感じたはずだ。

「決めた!今日から黒崎さんのこと薫ちゃんって呼んでいい?海のことも海でいいから」

「ちゃん付けは恥ずかしいけれど良いわよ、これからよろしくね海さん」

「もう、さんはいらないって。島人の間では年なんて関係なく敬語とか使わないよ?」

「海、そんなことないぞ。島の偏見を植え付けるもんじゃない」

「でも、二人は普通に仲良く呼び捨てにしているけれど?」

「「仲良くはない?!」」

「そうなの?」

そうしているうちにそろそろ他の生徒が登校する時間になり会議はあまり進展しないままお開きとなった。






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