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潮風薫るこの地にて  作者: 松田 業平
第一章 島の学校
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第13話 入部前日

短距離走の計測が終わり、男子だけ一足先に教室に戻ってきた。

早く弁当を食べておきたい、午後からも万全を期すために栄養補給と休息が必要だ。

母親お手製の弁当を食べつつ自分の得点を計算していると近くの男子が騒いでるのが聞こえてきた。

「黒崎さん、めっちゃ足速かったな」

「あれって男子よりも速いんじゃ?」

「なあ、うちの女子の中じゃ断トツだろうな」

黒崎の走りについて盛り上がっているようだった。

しかし

「そう言えば、汐見。お前も結構速くなかった?」

「記録いくらだった?」

「えっ?俺は…」

急に話を振られてびっくりした、黒崎の話をしていたので油断していたのもある。

「6秒6」

「うわ、めっちゃ速いじゃん」

「そう言えば汐見って中学の陸上大会出てたよな、100メートル走でさ」

「おう、よく知ってるな」

「俺も一応補欠でさ、短距離選手ならお前のこと知らないやつは少なくないだろ去年一位だったし」

「まじか。」

「まあな、県体ではベスト8止まりだったけど」

「すげえな、今年の体育祭は期待できそうじゃん」

クラスの男子の名前はまだ覚えられていないから誰か知らないが、一方的に名前を知られているというのはなんだか不思議なん感じだ。

そんな話をしていると、遅れてきた女子が教室に戻ってきた。

またさっきとは一段と教室が騒がしくなる。

話のネタもあり、男子女子関係なく喋っていた。

それを眺めていたら後ろからまた話しかけられた。

「汐見君、お疲れ様」

「おう、黒崎かおつかれさん」

「やっぱり汐見君速いわね、流石だわ」

「黒崎も陸上やってたのか?」

「いいえ、体育の授業で走ったくらい。汐見君本当に陸上選手みたいな走りだった」

「まあ一応選手だったからな」

こうして話すと普通の女子にしか見えない、実の所は男性恐怖症なのだが本当になぜ俺とは話せるのかいまだにわからない。

それと、さっきから男子からのトゲトゲした視線を感じる。

「ちょっと、トイレいくわ」

「ん?ええ、行ってらっしゃい」

少し居心地が悪くなり、トイレへと逃げた。

午後からは、屋内での種目ばかりできつかったのは腹筋と反復横跳びくらい。

どっちともひとまず満点評価で文句なし、一日終了する頃には長距離以外でA判定にあとちょっとのところ。

これならば余裕で記録更新出来そうだ、心地よい疲労感を感じつつ制服に着替えてホームルームまで待機していた。

いよいよ明日は金曜日、部活動の開始する日だ。

今日も同じように早々にバス停へ向かって家に帰る、部活が始まったらこんな時間に帰ることはあまりなくなる、部活終わりのバスの時間を確認しつつ来たバスに乗った。


「晶、明日から陸上部に入るんだよね?」

「うん、そうだよ。でもその前にオリエンテーションみたいなやつがあるんやろ?」

「そうそう、部のみんなと顔合わせがあるよ」

「ふーん、なるほど」

先輩達との顔合わせ、それとどの競技をしたいか選択できるそうだ。

本格的に練習するのはどうやら土曜日かららしい、そんなことを考えているとふと思ったことがあった。

「姉ちゃん、俺の隣にいた女子のことでなにか陸上部で話題とかなかった?」

「ん?そう言えば三年の先輩が勧誘しようとして怖がらせたとかなんとか言ってたような」

「それって具体的に誰か分かる?」

「それは分かるけど、どうしたの?」

「んー、どこから話していいものやら。姉ちゃんここだけの話にしてほしいんだけど」

事情を説明するために黒崎の男性恐怖症のことを話すことにした。

まあうちの姉は本当に優等生なので、真面目な話他言無用のことについてはまず信頼出来る。

さすがに何も話さずに他人の情報を聞き出すことは出来ない、これくらいは必要なことだ。

「なるほどね、だけどそれを知ってどうするの?」

「いい機会だと思ってさ、これもあいつにとって大事なことだと思うし」

「…、まあいいけどさどうせ明日顔を見ると思うし。陸部の部長だからね」

「あー、そういうことね」

黒崎にとっては少しハードルの高い事だがこれもチャンスだと思う。陸上部だけに…、んんっ!

このとこは明日の朝に黒崎に伝えておこう、男性恐怖症を治すための小さいけども最初の大事な一歩目となるはずだ。






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